接客現場の今 ~時代に左右されない販売のポイントとは~
■ 第1章:全国接客調査に見るセールスの課題
今、営業現場では何が起こっているのでしょうか?
弊社では、全国の販売現場において接客覆面調査(ミステリー・ショッピング・リサーチ※注)を行っており、「お客様の生の声」を集めながら、「どのような販売方法がお客様の心に響くのか」を現場にフィードバックしています。
本コラムでは、「売れている販売現場においてどのようなアプローチがされているのか」、「どのようなセールスがお客様を契約へと導いているのか」についてお客様の心理を解きほぐしながら考察していきたいと思います。
① 「セールス力」(お客様を契約へと導く力)
② 「ホスピタリティ」(お客様に誠実に対応する力、おもてなし・気配りの力)
・・・これら二つの視点に基づいて調査しているもので、一般消費者モニターが200点満点で採点しています。
最近の接客調査からおおよそ三つの傾向に分類されることが分かってきました。
典型的な事例として
●93点(競合負けレベル)
●144点(平均点レベル)
●186点(競合勝ちレベル)
のそれぞれをご紹介したいと思います。
一体、お客様の感じ方がこれほど違ってしまう理由はどこにあるのでしょうか。
※ミステリー・ショッピング・リサーチ(MSR)とは、日本全国で45万人の会員を持つ、営業現場の覆面調査サービスです。
会員は20〜30代女性を中心とした一般消費者で構成されており、「顧客の声」を知るためのツールとして業界でも数多くの導入実績があります。
■ 第2章:「競合負け接客」、「平均点接客」、「競合勝ち接客」を分けるものとは
一つ目の接客(94点)は、お客様の気持ちを無視して自社商品の強み・特徴を一方的に話し続けるセールスであり「単なるプッシュ型セールス」です。お客様に「押し売り」と受け止められてしまった結果、「嫌われる接客」になっています。
当然、契約には結び付きません。次回アポも取れません。
ここでのポイントは、自社商品のことを一生懸命伝えようとすればするほど、知らず知らずのうちにお客様に「何だか私の聞きたい話とずれている」と思われてしまっていることです。当然ですが、嫌われようと思っている営業担当者はいないでしょう。
にもかかわらず、今のお客様のニーズを把握できていないこと(あるいは、そもそもスキルが不足している)から、競合負け接客になってしまっているのです。
お客様の世代と価値観は変わりつつあります。そこに対応できない組織/セールスは知らず知らず「ずれ」ていくかもしれません。
二つ目の接客(144点)は、控え目だけれど印象に残らない「単なるプル型セールス」です。お客様のコメントを見ると、営業に対して悪い印象は持っていません。
ただし、好かれてもいません。結果、印象に残らない接客になってしまっています。
従って、競合優位に立つことはなく、このケースも契約に結び付くことは稀です。
実は、最近の全国接客調査において、この「二つ目の接客」(=単なるプル型セールス)が非常に多くなってきていることが知っています。
今や「賢い消費者」「情報収集をすでに終えてから来場しているお客様」が増えています。
営業担当はそれを感覚的に知っているので、妙に腰が引け、「どうぞどうぞ、お好きに見ていってください(私はそんなに邪魔はしませんから・・・)」という姿勢になってしまっているのです。このことが不満点となって挙がってきています。
理想的なのは三つ目の接客です。お客様にしっかりと情報提供することで、住まい選びのパートナーとなっています。そして、その上で自社の強みに誘導しようとしています。これを「ナビゲーションセールス」と呼んでいます。
今、接客現場では「賢い消費者」に対して、プロとしての見識を示す(だけの情報を持っている)ことで、お客様をあるべき姿へ導いていく力を持った営業担当(会社)が最終的に選ばれているのです。お客様は潜在的に「私の事情を踏まえた最適な提案をしてほしい」という欲求を持っています。
お客様の状況を詳細に理解しながらも、自社/商品の「主張」や「こだわり」が力強く伝わってくる・・・(結果、自社/商品の強みに誘導できる)セールスこそ、本当にお客様に「好かれる接客」です。
「ウチは大丈夫」「そんなこと分かっているよ」と思われるかもしれません。しかし、毎月上がってくる覆面調査レポートから見えてくる実態は、「お客様の変化」に対応できていない業界の現状です。
「8%への駆け込み需要」を経験し、また「需要後の反動」が一段落してきた現在、「今買う理由」をナビゲートしていくこと、「他社でなく自社で買う理由」をナビゲートできるかどうか、御社の営業担当は「今」のお客様と"ずれ"ていないでしょうか?
では「ナビゲーションセールス」を実現するためにはどうすればよいのでしょうか。
そのポイントは「お客様の心理に沿った接客」であり、「心頼形成」と「アンカリング」という二つが鍵を握っています。詳しく見ていきましょう。
■第3章:お客様が「買いたい!」と思うまでの心理をステップ化する
多くの会社では、契約までのステップを「販売側が何をするか」という視点で整理をし、その流れをマニュアル化しています。
接客の流れを標準化することは一定の効果はありますが、それだけではお客様の心理を無視して話を進めてしまう危険性もあります。
一方、お客様の心をつかむのが上手な営業担当は「お客様の心理が今、どの段階にあり、それをどうやって前に進めていくか」を常に意識して、お客様とのコミュニケーションを前に進めようとします。
このお客様が最終的に「ぜひこの会社で/この営業から買いたい!」という気持ちに至る(=契約)までのステップを細分化して見ていきましょう。
お客様が「この人なら信頼できる」と認め、「この人に心から相談したい」と思っている状態を「心頼形成」と呼びます。
これが「購買心理ステップ」において売れる方とそうでない方を分ける重要なポイントです。
確かにお客様はたくさん情報収集を行い、賢くなったとはいえ、ほとんどのお客様は「一次取得者層」であり住宅購入が「初めて」です。
どんなに情報を集めたとしても「初めての買い物である」という事実に変わりはないのです。
従って、「信頼できるパートナー」としての地位を確立できるかどうかは非常に重要です。