Question.
海外赴任者の給与は、どのように決定すべきですか?
Answer.
1) 海外給与決定方式には、「別建方式」「購買力補償方式」「併用方式」の3種類が存在します。
2)まず「手取額」を決めて、その後税金・社会保険料等の控除を考慮して「総支給額」を算出します(グロスアップ計算)。
3)一定の「日本における支払額」を設計し、日本での社会保険加入等を維持するのが一般的です。
1. 3種類の海外給与決定方式
海外赴任にともない、さけて通れないのが、赴任者の「海外給与の決定」です。
給与は、赴任者の「やる気」に直結します。
ひとりひとり、場あたり的に決めていると、赴任者間の不公平感が生まれるなど、企業の海外ビジネスの足を引っぱるマイナス要素となりかねません。
また、海外赴任における税務・労務に対する当局の目は、日々厳しくなっています。
「とりあえず個別対応で適当に決めて赴任させる」というスタンスは、企業にとっても赴任者にとっても危険です。
海外給与決定においては、まず「手取額(=海外基本給)」を決めて、そこから「総支給額」を決定するというプロセスが一般的です。手取額(海外基本給)の方法としては、以下の3つが挙げられます。
それぞれの方式の概要をまとめると、以下のとおりとなります。
2. 制度採用の実態
ワールドワイドに、多数の国に展開している大企業においては、「合理的な給与決定・説明」という観点を重視して、購買力補償方式を採用している会社が多く見受けられます。
一方、これから海外に出る企業や中小中堅企業においては、制度の明快さを理由として、併用方式を選ぶ企業が多いのが実態です。
3. グロスアップ計算
手取額(海外基本給)決定システムの検討が終わると、次に、実際に赴任者に支払う「給与総支給額」決定のシミュレーションが必要となります。
国により、税率・社会保険料率はことなります。
現地に派遣される社員には所得税や社会保険料を負担した後の「手取額」を保証することが必要となります。
そして、手取額保証のために補てん金額を上乗せすると、その額が給与と認識され、また税金・社会保険料が増える…という循環計算となります。
これを加味した計算の結果、最終的な総支給額を決めるのが、「グロスアップ計算」です。
この計算は、現地での税率や社会保険料率等を加味した循環計算となるため、非常に複雑となります。
そのため、海外に拠点をもつ会計事務所やコンサルティング会社等に依頼するのが、一般的です。
4. 日本国内での支給額を残す必要性
海外現地法人に赴任する場合、赴任者の給与を現地法人から全額支給することは可能です。
ただし、この場合、日本国内での支給額がゼロとなることから、日本国内での健康保険・厚生年金保険は「喪失」することがやむをえなくなります。
海外赴任者にとって、これは大きなデメリットとなります。
そのため、給与設計時に、「合理的な金額」と根拠づけられる日本での支給額を残し、社会保険などを維持することが実務上は望まれます。
日本での支給内容としては、「標準的な貯蓄額」、「日本と海外の格差補填金」、「日本での留守宅手当」などが挙げられます。
5. 併用方式での設計例(イメージ)
注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。
※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです
【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、
ASEANにジャパンデスク9拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる
「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を
経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、
企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で
多数の支援実績がある。
国際ビジネス支援サービス紹介(みらいコンサルティンググループWEBサイト)
第○条 (定義《例》) この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。 |