■ 採用活動のポイント ~ブランディング編~
ブランディングの重要性
「優秀な人財は大手に行ってしまうので、地方の中小企業が優秀な人財を採用するのは難しいのでは?」
多くの中小企業の経営者様がこのようなお考えをお持ちのようです。採用について、確かに「不況期ほど求職者の大手志向が強まる」というのが採用市場の常識でした。しかしながら、時代の移り変わりにより、現在の若者層の企業選びの基準は変化しています。
下図は、学生をターゲットに「最も重視する企業選びの基準は何ですか?」というアンケートをした結果です。上位には、「自分のやりたいことができるか」「雰囲気、社風」「成長できるか」が入り、「会社の知名度」「会社の規模」は10位以下という結果になっています。
「そんなこと言っても、実際に内定を出すと大手に内定負けしてしまうんだよね」
というお声も良く頂戴します。ですが、このアンケートをきちんと理解すれば、「自社が中小企業だから」大手に内定負けをしているのではなく、「社員にとってやりたいことができる」「自社の雰囲気、社風が良い」「成長できる」ということが伝わっていないから大手に内定負けをしていることは明らかです。
大手企業であれば、
「社員数も多いから、やりたい仕事を選べそうだな」
「上場してればブラック企業の可能性も少ないよな」
「同期も多く、ポジションもたくさんあるから切磋琢磨して成長できそうだな」
と、大手企業ということが良いブランディングにつながっていますが、中小企業はそうはいきません。中小企業は、求職者に対して積極的に自社のイメージを植え付ける=ブランディングをしていく必要があります。
その際には、
「役職・ポジションが固定化されていない分、若手のうちから多くのチャンスがある」
「会社が未成熟である分、柔軟性があり、自分自身の成長が会社の成長につながる」
「仕事の枠組みにとらわれず、自由にシゴトを楽しめる」
など、大手企業にはつくれない、中小企業である自社だからこそつくれる『自社らしさ』をブランディングしていくことが重要です。
「採用専用ホームページ」で優秀人財にアピール
新卒採用において、最も効果的なブランディング施策は「採用専用ホームページ」の制作です。
現在就職活動をしている学生は、ウェブを中心に情報収集をしています。リクナビ・マイナビなどの「採用ポータル」で情報収集をした後に、必ず企業ごとのホームページで詳しい情報を確認しますし、合同説明会・単独説明会に参加する前後でも、必ず企業ごとのホームページをチェックしています。
にもかかわらず、「お客様向けホームページ」はお持ちでも、「採用専用ホームページ」をお持ちの企業様は少ないのが現状です。「お客様向けホームページ」と「採用専用ホームページ」は、上図のようにターゲットが違うため、「お客様向けホームページ」では、学生に対してのブランディング効果は薄くなってしまいます。
「採用専用ホームページ」では、前出の学生の企業選びの基準に対して、「自分のやりたいことができるか」に対しては、自社の職務内容を詳細に伝えるコンテンツを、「雰囲気、社風」については、社員間交流(社員旅行やBBQイベントなど)やクラブ活動などのコンテンツを、そして、「成長できるか」については、教育制度、1年目社員のブログ、1年目社員の一日などを伝えるコンテンツを盛り込むことにより、自社をアピールすることができるのです。
大手企業は必ず、「採用専用ホームページ」を持っていますが、採用人数が多いため万人受けするコンテンツにせざるを得ませんし、地域の特色に合わせた内容にはできません。
中小企業で採用に成功している会社は、「採用専用ホームページ」により具体的なコンテンツを用意し、入社した後、会社で働くイメージが湧きやすくなっています。
「採用専用ホームページ」作成の三つのポイント
成果の出る「採用専用ホームページ」を作成するポイントは以下の通りです。
❶求める人財(ターゲット)の明確化
❷自社の強みの棚卸し
❸求職者目線でのコンテンツ
❶求める人財(ターゲット)の明確化、❷自社の強みの棚卸しについては、マーケティングのパートで後述させていただきますので、ここでは❸求職者目線でのコンテンツについてお話しさせていただきます。
「お客様向けホームページ」と「採用専用ホームページ」で共通で必要になるコンテンツとして社長のあいさつがありますが、内容は大きく異なります。
「お客様向けホームページ」ではお客様目線でのコンテンツとなるため、「お客様を第一に考えて…」「お引き渡し後も家族のように…」などの内容が求められます。一方で、「採用専用ホームページ」では求職者目線でのコンテンツとなるため、「仕事を楽しく!…」「日々、エネルギーを持って…」などの内容とする方が効果的なのです。
実際に社長自身があいさつ文を書こうとすると、「学生の気持ちがわからない」など「求職者目線」でコンテンツを揃えることが難しいことに気付くと思います。ですから、就職して間もない、学生の気持ちがよく分かる若手社員をプロジェクトメンバーに加えて「採用専用ホームページ」を作成することをオススメしています。
■ 採用活動のポイント ~マーケティング編~
母集団の量を確保する
優秀な学生を採用するためには、母集団の量を確保し、自社に合った学生を選べる立場になることが重要です。
一方で、リクナビ・マイナビなどの採用ポータルに登録するだけでは、住宅会社に限らず全業種と競合してしまい、決して人気業種といえない住宅会社が母集団の量を確保することは難しいのが現実です。
「そもそも自社を知ってもらえない」「知ってはいるがエントリーする候補に入れてもらえない」という状況では母集団を形成することはできません。
まずは認知ルートを増やし、一人でも多くの学生に知ってもらうことが重要となります。さまざまな認知ルートが考えられますが、自社のターゲットが定まっており、設計・工務などの理系学生を採用したい場合は、大学の研究室に直接訪問し、教授との関係性を作ることによって学生を直接紹介してもらうなどの方法は高い効果が期待できます。
質の高い母集団を形成する
いくらエントリーの数が多くても、自社が欲しい人財がいない母集団では意味がありません。
質の高い母集団を形成するには、まず、①求める人財(ターゲット)を明確にし、そのターゲットに響く②自社の強みの棚卸しを行い、ターゲットを狙った母集団形成をすることが重要です。
①求める人財(ターゲット)を明確にするためには、自分がつくりたい組織や自社で活躍しているメンバーを思い浮かべながら、理想とする社員が持つべき能力を細分化することが必要です。
ただし、学生時代に求める能力を全て持つ人財(スーパーマン)と出会い、自社に入社してくれる可能性は極めて低いといわざるを得ません。
ですから、能力の中でも「自社が最も大事にしている能力」+「変わりづらく、自社で教育できない能力」を持っている人財を明確なターゲットとし、採用活動を進めることが重要です。その上で、そのターゲットに響く採用方針を打ち出すには、インターンが大変効果的です。
3年生の夏休み・冬休みに開催するインターンシップ(以下インターン)で他社に差を付ける
インターンとは、1日~1ヵ月間にわたり、会社で短期職業体験をする仕組みです。現在の就職活動は4年生になってから行うのが一般的ですが、優秀な学生ほど就職活動を始める時期が早く、3年生の夏休み・冬休みにインターンに参加する学生も多くいます。
また、ここ最近ではインターンを単位として認める大学も増えてきました。
3年生の夏休みの段階では、就職する業種を絞っていない学生も多く、通常の採用活動では出会えない、幅広い学生に会うことができます。学生は「就職活動に役に立つか」でインターンの参加を決めるため、「プレゼンテーション力強化」「ロジカルシンキング」「自己分析」など欲しい人財との相性も良く、普遍性のあるスキルをテーマとしたインターンをすることにより、質×量両面で高いレベルの母集団形成が可能となります。
また、3年生の冬休みの段階で、就職する業種を絞る学生が増えます。
①夏のインターンで出会った学生向けのフォローインターン
②住宅会社を志望している学生向けのインターン
と、ターゲットごとに別開催で営業&プランニング体験、OB宅訪問など、自社の強みを訴求できるテーマのインターンをすることにより、早期競合排除しながらインターンをすることが可能になります。
■ 採用活動のポイント~営業編~
自社への内定受諾を勝ち取るのは住宅営業活動と同じ
優秀な母集団を形成し採用したい人財に内定を出したとしても、内定辞退をされてしまっては社内に優秀な人財を増やすことができません。
一般的に優秀な人財ほど多くの会社から内定を獲得しますし、他社から給与面でも自社より良い条件提示を受けているケースも多くなるでしょう。
そんな優秀な人財に自社へ入社してもらうためには、住宅営業活動と同様なセールスステップや営業設計が重要になります。
営業設計事例~採用説明会~
住宅営業において、売れる営業マンと売れない営業マンの一番の違いは、顧客心理を考え、購買心理のステップを一つずつ上っているかどうかです。特に、初回接客の初期に「プロとしてのポジション」(心頼形成)を取ったうえで、「住宅会社を選ぶ基準」(アンカリング)を伝えられるかに大きな差が出ます。
※詳細は、「住宅経営 特別号 2016年5月 お客様から選ばれる 住宅営業のあり方」を参照
例えば、採用における説明会においても、学生の心理(気持ち)を考えながら、説明会の流れを考えることが重要です(採用では、魅力心理という言葉で説明)。
特に、アンカリングとして会社の選定軸を伝えることで、複数社内定をもらった場合でも、「初任給の金額」や「会社の知名度」に惑わされず、正しい選定基準で自社を選んでもらうことができるのです。
現在行っている採用説明会に上記の視点が欠けている場合は、せっかく内定を出しても優秀な人財を競合他社に取られている可能性が高くなってしまいます。来年の採用活動から、ぜひ取り入れてみてください。