膨らみ続ける固定費
下図をご覧いただければ分かる通り、材料費が1割以上上がってきていると感じている経営者は約6割いらっしゃいますが、そのうち、材料費の上昇分を販売価格に転嫁できていないという経営者も約6割いらっしゃるというアンケート結果が出ております。
「アベノミクス」、円安による緊急影響調査
※2013年6月1日~25日
もう一つ、ゾッとするデータがあります。2005年から2010年にかけて大工さんの人口が3分の2、そのうち若年労働者(15歳~19歳)は1995年に比べて2005年では4分の1まで減っているというデータです。
つまり、相対的に大工さんの人件費は高騰していくことになり、ややもすると大工さんが手配できないために、契約しても着工できないという事態が増大するかもしれないということです。
そうなれば、例えば業者会の運営などが今後はとても重要なテーマになってくると思われます。いずれにしても、材料費、大工さんの人件費の高騰による固定費が今後どんどん上がっていくことは確定的な現実であるということを、しっかりと認識しておかなければなりません。
おそらく、固定費は今後最大10%以上アップすることを想定した住宅販売価格の見直しに各社迫られることは否めません。
■ 保証が延長できない現実…
さて、このような固定費増大リスクへの対処は新築事業を継続する上で避けて通れない現実となっているわけですが、今回はそれよりも怖いメンテナンスリスクについて考えてみたいと思います。
最近、大手ハウスメーカーでは躯体の延長保証を行うために、10年目に約150万円ほどのメンテナンスを受けていただくことを薦めています。※しかし、この約150万円をお施主様が支払えないという事態が急増しているというのです。
つまり、せっかく大手ハウスメーカーにお願いして高い資産価値を維持できるであろうと思って建てたにもかかわらず、保証延長ができないということが多発しているようです。
しかし、これを放置しておくわけにもいけませんので、ハウスメーカー側でも契約時点でお施主様に修繕積立保険という、生命保険等を活用した10年満期の金融商品を提供し、10年目にそれを活用してもらうように推奨しているというわけです。
当然、営業担当者からすれば契約時にさらに10年間で150万円、つまり月当たり1万2千円程度を積み立てて欲しいという話をしなければならないのであまり受けがいい対策ではありません。ただ背に腹は代えられないため、徹底して推奨するように方針が出されています。
したがって、最近の大手ハウスメーカーではアフターメンテナンスを差別化ポイントにした新築営業が徹底されてきています。地域密着を強みにしているビルダーにとっては、たまったものではありません。
では、皆様のところではいかがでしょうか。仮に引渡し10年目を迎えられたお施主様に必要なメンテナンスやリフォームの需要は、いったいどれくらいあるでしょうか。
例えば、今から10年前のお施主様であれば、外壁の塗り替え(あるいは張り替え)で約300万程度は必要になるでしょう。ではその費用をお施主様は出していただけそうでしょうか。そもそもそういった需要に対応するためのメンテナンス対応やリフォーム提案ができているでしょうか。
上図は「リフォームを依頼した会社は?」はというアンケートデータですが、ご覧のように「現在の住宅を施工した工務店やメーカー」に依頼をした方は、たったの23%に過ぎないという結果です。
これらを整理しますと、「地域密着対応」「お客様の一生涯のサポート」などを経営理念に謳う多くのビルダーの実態は、長期にわたるメンテナンスを十分にできていないどころか、お施主様に対してきちんと修繕積立の提案やサポートさえ不十分なので、結局がんがん営業してく格安のリフォーム専業業者などに修繕機会を奪われ、その後は建物の資産価値をさらに向上していくためのリフォーム提案の機会事態を失ってしまい、お施主様からのお問い合わせ先はどこか別の業者に移り変わってしまっているということになります。
大変失礼な表現かもしれませんが、新規新築需要のこと以外の対応は全くできていないというのが現実であって、本当の意味で地域密着対応、お客様の一生涯のサポートといったことはほとんどできていないということを改めて認識すべきではないかと思います。
※大手ハウスメーカーや地域ビルダーの中にも、20年以上の継続保証をしているところもあります。