成長に耐えられず崩れ落ちる組織
住宅市場が縮小しているといわれてから久しいですが、市場の縮小関係なく業績を伸ばし続けている企業はどのエリアにも存在します。
コンサルティングの仕事に携わっていると、日本全国のトップビルダーの経営者と接する機会も多く、その中で二つの傾向があることが見えてきました。それは、トップビルダーの中でも業績拡大に耐えられる組織づくりに早くから手を付けて万全の体制をとる経営者と、今までと同じように売上づくりにばかり目が行きがちな経営者の二つに分かれるということです。
ただ、どちらの経営者も共通して感じていることがあり、それが以下の内容です。
「どうやら最近、なんかクレームが多い気がする。」
「決まったことがやれていない。」
「もっと部門間で相談してくれたら解決できるように感じるが、なんか部門間のコミュニケーションもスムーズじゃない」
しかし、上記のような現場からの同じ情報を踏まえて、手を打てる経営者とそうでない経営者では大きな違いが出てきます。
組織の生産性を考えない会社は、どのようになっていくのでしょうか?
- 設計や工務が夜遅くまで働いて休日出勤が増える
- 3年目~5年目といったこれからが活躍時期の社員が辞めてしまう
- 以前より会議や報告資料が増えてマネージャーや社員の負担が増す一方だ
- 社内のルールが固まらず若手が成長できていない
これらは、多くの企業でみられる現象ですが、じわじわと他社と比べて負け組に至る道を進んでいる事を示す重要な症状なのです。
たとえば、同じ棟数をやっている他社より、1時間~2時間業務時間が長いという会社があったとしましょう。
これを軽視する会社は多いですが、実は「1日2時間」の残業が続くだけで、20~30名の組織だと年間10,000時間を超える時間コストが余計にかかっている状態と言えます。それだけの違いが競合他社との間に生じているという事に、危機感を持たないといけないのです。
現場からは問題が上がってこない
実際に自社が競合他社に比べて負けているかどうかを確認いただくために、ぜひ現場にインタビューをしてみてください。
現場から[図①]のような声が出てくる会社が要注意の会社です。
残念ながらこの点は、社長やマネージャーがしっかりと状況をヒアリングしにいかないと出てきません。なぜなら、責任感のある社員であればあるほど、不満があっても「最後は自分がなんとかしなければいけない」と何も言わずに頑張るケースが多いからです。
しかし、その状態は、ベテラン社員は適応できるかもしれませんが、組織の拡大に伴い入社してきた中途社員や新入社員が適応するには厳しく、彼らが成長するうえで大きな壁になります。
結果として、棟数が伸びても、対応できる組織が育たないという結果につながってしまいます。
組織が育たないと棟数の拡大によりクレームが多発したり、契約後の未着工案件が増えたりして、社長が資金繰りに奔走することになったり、ひどい場合には倒産といった状態になったりすることがあります。
では、どのような現場の声があると危機感を持つ必要があるのでしょうか?
いくつか実際の現場の声をあげてみます。
[図①]
いかがでしょうか?
「うちはまだ早い」「大丈夫だ」と手を打たずに放置すればするほど、すでに手を打った会社とますます格差が拡大してしまっているということになりかねません。このタイミングでぜひ確認してみることをおすすめします。
経験に頼った脆弱なルール
上記のような事態を招いてしまうのはなぜでしょうか。
それは「経験に頼って共通のルールがないこと」が原因です。
今まではベテラン社員の経験と勘で業務をまわしていたところに中途社員や若手社員が入ると、案件ごとにルールが決まっていないため、すべての案件できちんとした確認(個別対応)が必要になり、明らかに無駄な会議や打ち合わせの時間が増えてしまうのです。
明確な共通ルールがあれば、70%~80%の案件は共通ルール通りに進んでいき、残り20%~30%の案件だけに個別対応すればよいものが、共通ルールがないと全案件で個別対応を行わなければならなくなるのです。
新たな人員が増えても従来のやり方を続けていれば、棟数の拡大によって組織が崩壊するのは目に見えているでしょう。
即戦力を雇えばよいと思われるかもしれませんが、設計や工務の即戦力を持った人材は全国レベルで採用できない状況が続いています続いています。
いつまでも即戦力持った人材を探し続けるのは、勝率の低い賭けを続けている状況に過ぎず、正しい経営判断とは言えません。
即戦力以外の中途社員や新入社員が入ってきたときに、彼らが業務をスピーディーに覚えて戦力として活用できる共通ルールを作り上げられているかが大切です。
共通ルールにより、生産性向上を実現した企業事例
自社の成長に応じて業務フローを見直し、実際に共通のルールを作り上げる事で組織の生産性が大幅に改善した企業事例があります。
地方都市で展開するD社は、設立10年で100棟という順調な成長を遂げており、ミドルコストではエリアナンバーワンの実績を誇る会社です。同社の社長は、中途の即戦力の採用に困った事がないと言います。それほどこの会社で働きたいとエリアで思われる会社になっています。
実際に業務の生産性向上の取り組みをしたところ、同社では1人当たりの社員が働いている時間が2時間ほど短縮し、週に1回実施していた案件会議が月に1回実施するだけでも、問題が発生せずに回るようになりました。
自社の成長に応じて業務フローを見直し、実際に共通のルールを作り上げる事で組織の生産性が大幅に改善した企業事例があります。
地方都市で展開するD社は、設立10年で100棟という順調な成長を遂げており、ミドルコストではエリアナンバーワンの実績を誇る会社です。同社の社長は、中途の即戦力の採用に困った事がないと言います。それほどこの会社で働きたいとエリアで思われる会社になっています。
実際に業務の生産性向上の取り組みをしたところ、同社では1人当たりの社員が働いている時間が2時間ほど短縮し、週に1回実施していた案件会議が月に1回実施するだけでも、問題が発生せずに回るようになりました。
同社の生産性の改善を見ると以下の数値です。
① 2時間×30名×260日=15,600時間(日々の業務時間の短縮)
② 3時間×30名×36回=3,240時間(無駄な会議がなくなった事による短縮)
(①+②=18,840時間…おおよそ8人工生産性があがった状態)
D社は8人工浮いた工数を紹介活動など、新たな投資に振り向けて、次の成長を描いています。事業の生産性が高まっているという理想の状態…これはやるべき事をやっていれば、他の会社も同じように作り出す事ができます。
では、どういったポイントをおさえればD社のように問題を起こさずに業績を拡大し続け、事業の生産性を上げられるのでしょうか。次ページでそのポイントについて解説します。