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アフターサービスをアフタービジネスに変えて不透明な時代を生き抜く ーvol.3ー

クレーム対応に終始しがちなアフターサービスが、実は新たな事業を生み出します。
その理由と事業化に向けた戦略を解説します。


■組織化、情報化、仕組み化

 アフターサービスの有償化は、組織化、情報化、仕組み化の3点を押さえることが大事です。
 組織化は、適切なアフターサービスを提供できる体制を作り、担当者を動機付けするということです。中堅、中小企業では人手不足でアフターサービスに手が回らないという課題がありますが、組織化の視点で考えていけば、例えば、高齢で現場に立つのが厳しくなったスタッフをアフターサービス部門にコンバートしたり、働き方改革の流れに乗り、シニアや女性スタッフを登用することもできるでしょう。
 また、アフターサービスの業務内容を整理し、どの業務に、どれだけのリソースが必要で、どのくらいの収益性があるのかを把握することも重要です。現時点で発生している補修工事などの内容、件数、金額、スタッフ数、工数を分析することで、リソース配分を適正化でき、アフターサービスを組織的に展開していくことができます。
 情報化は、顧客と建物の情報をデータベース化することが重要です。
 また、情報はただインプットして蓄積するだけでなく、どうやって活用するか、活用しやすい形で収集できているかといったアウトプットの視点を持つことが大事です。
 顧客情報を定期的に更新していけば、子どもが遠くの大学に入学したり、結婚して家を出たタイミングなどをつかみ、引っ越し、住み替え、売却などを提案できます。建物情報は外壁の塗り替え提案などに役立つでしょう。
 重要なのはそのような提案に生かすことですので、何でもできる高度で高額な自社システムを作る必要はありません。高額のシステムは維持費がかかりますし、より良いシステムが登場したときの入れ替えも負担になります。
 まずはデータを使って実現したいことと、基本のシステムで実現できないことを明らかにします。その上で、対応しない、システムをカスタマイズして対応する、機能を追加する、他社のシステムとAPI連携するといった方法を考えるのが良いでしょう(図4)。


 仕組み化は、アフターサービスを通じて収益を生む仕組みを作ることです。
 長期保証や有償メンテナンスの提案は、それ自体が収益を生みますし、そのようなサービスを通じてOBと接点を持つことがOBの囲い込みにつながります。OBのニーズはさまざまですから、中古市場への売却、住み替え、リフォームなどが収益化できるビジネスの一例になるでしょう。
 また、顧客とのやりとりは、顧客からの相談を待つだけでなく、データベース化した顧客情報などを生かしながら提案していくことが大事です。
 例えば、リフォームのセミナーなどを企画し、築10年のOBを呼ぶことができるかもしれません。そのような新たな接点づくりもOBとのつながりを強くする施策の一つです。

 

■上流にあるクレームの火種を対処

 アフターサービスの収益化でもう一つ重要なのは、収益性低下の原因となるクレーム対応や無償の補修工事などを減らすことです。
 そもそもアフターサービスはクレーム対応といった認識が生まれるのは、住宅産業がクレーム産業の側面を持っているとしても、アフターサービスよりも前の段階で何かしらのミスが起きているからです。
 その部分を明確にして対処しない限り、アフターサービスはコストがかかりますし、収益化も難しくなります。
 逆に言えば、上流工程を見直すことがアフターサービスの収益化につながるということです。
 住宅事業のバリューチェーンを見ると、作業工程は商品開発から始まり、集客、営業、設計、施工、アフターサービスへと流れていきます。
 商品開発は仕様上の品質が良いかどうか確認することが重要ですし、そのためには自社の品質基準を明確に定義できている必要があります。
 集客と営業は顧客にどのようなメッセージを発信しているか確認することが大事です。例えば、完全自由設計の住宅などは、営業プロセスの中で風呂敷を広げすぎてしまい、それが後々のクレームの火種になることがあります。
 設計は設計図面の引き継ぎ不備に注意が必要ですし、施工は低品質の工事をしたり、工期の遅れなどがクレームにつながります。
 このような点をあらかじめ対策しておけば、クレーム対応や無償の補修工事などで収益が減る可能性は抑えられます。
 また、新築事業は契約を取るところがいったんのゴールと認識されるため、営業スタッフが契約獲得のために「何でもやります」「できます」と伝えてしまうこともあります。「建ててからもお付き合いを大事にします」「丁寧にフォローします」といった約束もその一部といえるでしょう。
 しかし、実態は放ったらかしになることが多く、それもクレームにつながります。「面倒見てくれると言ったから契約したのに連絡がない」という顧客の不満は多いものなのです。
 営業は契約までのプロセスに関心を持ちますが、顧客が関心を持っているのは、契約以降にある、設計、仕様決め、着工、上棟、完工、アフターサービスです(図5)。

 このズレを認識しておくことが大事ですし、できないことを約束しているとしたら、今後は民放改正に引っかかる可能性があるため、やめなければなりません。
 民放改正対策として、契約に向けた打ち合わせ内容の議事録を取ったり、議事録内容を顧客に確認してもらい、署名をもらうといった取り組みも重要です。
 また、契約までが仕事と考えるのではなく、自社のアフターメンテナンスの内容を理解し、自社の強みとして顧客に訴求していくことも重要なポイントになるでしょう。
 せっかくアフターサービスを作っても、提案せず、顧客に認知されなければ収益になりません。宝の持ち腐れにしないためにも、営業スタッフがアフターサービスに目を向け、自社の強み、他社との差別化要素として活用していくことが求められます。
 顧客が住宅会社を選ぶ基準として、ブランドとしての認知力や規模も大事ですが、最も重要なのは安心感です。「長く付き合える」「安心して住める」といった安心感を得るために、顧客はアフターサービスの充実度を見ています。
 すでに大手メーカーはアフターサービスの充実に取り組み、成果を出し始めています。中堅、中小企業も、アフターサービスを充実させ、アフタービジネスを創出していくことで不透明な時代を生き抜く新たな事業モデルに変わっていけるはずです。

 

※本稿は、2020年1月に開催した「アフタービジネス構築セミナー」にて登壇いただいた株式会社住宅アカデメイア、中井喜之氏の講演内容と、同セミナーで登壇した当社コンサルタントの講演内容を編集したものです。

 

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