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フランチャイズビジネスの実態と課題 ーvol.2ー

前回は、思いつきでFC(フランチャイズ)展開を始めたものの、加盟店からクレームが頻発し早々に疲弊してしまったA社のケースを例に、FC事業において押さえるべきポイントを解説させていただいた。
今回も同様に、実際にあったFC事業展開の失敗事例を取り上げながら、新たなポイントをお伝えしたいと思う。


■CASE2|パイロット加盟店での検証をせず一気に加盟開発を促進した結果、加盟店の成果につながらず悪評になった事例

パイロット店、という考え方をご存じだろうか。多くは小売り店舗で導入されているものだが、新しい店舗戦略などを本格的に全店展開する前に、試験的に運用・効果検証を行う実店舗をパイロット店という。FCVC事業においても、このパイロット加盟店でのトライアル検証が非常に重要となる。

自社開発したローコストの企画住宅がヒットし、販売棟数を一気に伸ばしたE社は、自社商品に自信を深め、これをFC展開しようと思い立った。自社ではこの企画住宅を、20代半ばの若手社員が平均年10棟ほどを販売しており、若手でも売り易い商品として、きっと他社でも欲しがるだろうと考えたのだ。そこで、ブランドロゴやコンセプト、外観デザイン、プラン集といった商品に関する意匠やノウハウだけでなく、販売のための営業ツールやホームページのコンテンツなども加盟店向けに提供できるように、ソリューションパッケージとして取りまとめた。

その後、E社はすぐに加盟開発をスタートさせた。業界メディアに広告を出したり、加盟開発を目的としたセミナーなどを開催した。また、以前から付き合いのあった建材商社やシステム会社にも紹介を依頼し、加盟店を募った。すると、若手でも売れるローコスト企画住宅が欲しいと考えていた住宅会社は沢山いることが分かり、まずまずの反響を得ることができた。そしてその中の4社が早々に加盟を決めてくれた。

「なんだ、FC展開も思っていたより簡単だな。この調子なら一気に50社ぐらいは集められるかもしれないな…」そう考えたE社の社長は、意気揚々と加盟開発の活動に力を入れていた。

そうこうしているうちに、初期の加盟店が稼働し始めたころから、ポツポツと問題が勃発することとなった。ある加盟店F社は、「立上げ時に何が必要で、どのようにスタートするのか、何も決まってないじゃないか。営業研修はいつ実施してくれるのか。ホームページのコンテンツも渡されたが、これをどうやって掲載すればいいんだ、本部のサイトには、うちのことは掲載してくれないのか。そういう細かいこともちゃんと本部がリードしてくれないと困る」とクレームを言ってきた。確かに、加盟後のフローなど細かいところが詰め切れておらず、とりあえず加盟店ごとに都度質問に答えるような形で対応していた。結果として、本部の対応は後手後手になっていた。

またある加盟店G社からは、「今のプラン集では自分たちのエリアの土地には上手くはまらないことが多いので、もう少し小さい坪数のブランと、できれば3階建てのプランも作ってくれないか」といった要望を受けることとなった。そうした要望に応えたい気持ちは山々だったが、社内の設計人員の手が回らず、新しいプランをつくるのに数か月を要することとなった。その間、G社の販売活動はほぼ停滞してしまっていた。

さらに別の加盟店H社では、営業人員の数も限られており、H社の既存商品である注文住宅の営業を行っているメンバーが兼任で、企画住宅も営業することとなった。つまり、これまで通りの集客ルートで来店されたお客様の中で、予算の合わないお客様がいた場合に提案する商品、と位置づけられた。すると、予算の合わないお客様も拾えるようになったのは良かったものの、企画住宅を売り慣れていない営業メンバーが提案したため、元々注文住宅希望のお客様からのプラン変更希望を断ることができず、企画なのに勝手にプランを変えてしまう売り方が横行することになった。これでは単に販売単価が下がっただけで、業務の手間は注文住宅とは何ら変わらず、営業利益率が下がる結果となってしまった。棟数そのものも大きな上乗せとはならなかったため、H社は早々に企画住宅の販売を断念した。

このように、いざ加盟店が立ち上がると、想定していなかった様々な問題が噴出し、本部はその対応に追われるものの、加盟店の実績は一向に伸び悩み続けた。結果として、加盟店を増やすどころか今の加盟店を何とか上手く稼働させるために時間と労力ばかり割くこととなった…。


■こうした事態は防げなかったのか?

今回のケースの大きな失敗要因は、パイロット加盟店によって本部が提供するサービスやノウハウが十分効果の出るものなのかを検証しなかったことにある。本来、FCVCを展開する際は、いきなり本加盟を募るようなことはせず、元々付き合いのある会社にパイロット加盟店として加盟してもらい、そこで効果の検証や問題点の洗い出しを行った上で、サービスパッケージの完成度を高めるプロセスをとる。このパイロット加盟店での検証を怠ると、蓋を開けた途端に予期せぬ問題が多発し、その火消しに追われるといったことが生じるからだ。結果として、その後の加盟開発に悪影響を与え、ネットワーウ拡大の足かせとなる。

したがって、ネットワーク展開の初期の段階で、必ずパイロット加盟店の協力のもと、サービスパッケージの効果検証を行うことが重要である。自社(直営)で上手くいったからといって、他社でも同じように成果が出せるとは限らない。きちんと自社以外で成果が出ると検証されたノウハウやサービスこそ、本物のソリューションと言えるのであって、そうではないパッケージは、単に1つの成功事例をマニュアル化して売っているに過ぎない。それは決してFCのあるべき姿とは言えない。

反対に、パイロット加盟店によるトライアルで問題点が改善され、ノウハウやサービスがブラッシュアップされて加盟店でも成果を出すことができれば、その後の加盟開発は非常に円滑に進むことだろう。他社で成果が出ることが実証されているわけなので、きちんと取り組めば成果は出せますよ、と説得力を持って提案することができるからだ。

初期の段階できちんと成果を検証し、その後の好循環を生み出すか、あるいはいきなり加盟開発に走って問題やクレームを噴出させ悪循環に陥るか。長い目で見たときにどちらが望ましいか、賢明なご判断をぜひしていただきたい。

次回はまた新たな失敗ケースを例に、FCVC事業のあるべき姿について考察を深めることとする。

 

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