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フランチャイズビジネスの実態と課題 ーvol.1ー

FC(フランチャイズチェーン)というビジネスモデルが日本で広がったのは、1950年代と言われている。当時は小売り業態や外食業態における多店舗展開の手法として大きな広がりを見せた。その後、戸建て住宅や不動産業態でもフランチャイズシステムが導入され、今では住宅業界だけでも数百を超えるFCVC(ボランタリーチェーン)が存在している。

既にありとあらゆるネットワークビジネスが存在するにも拘わらず、今でも毎年毎年、FCVCを新たに立ち上げようという住宅会社は後を絶たない。目新しい商品を開発したから、集客や販売に独自のノウハウを持っているから、他にはない工法を生み出したから…そんな強みをもった会社が、ややもすれば安易にFCVCを立ち上げる傾向があるため、次から次へと新しいネットワークが誕生している。

しかしその一方で、2、3年のうちに姿を消してしまうFCVCも枚挙にいとまがない。弊社リブ・コンサルティングは1年間で1,000社近くの住宅会社と接点を持っており、FCVCを展開している会社やこれから立ち上げようという会社とも数多く接しているが、感覚的には5社に4社、すなわち8割程度のFCVCは、3年程度でいつのまにか自然消滅していると推測される。そういった短期間で消えていくFCVCに見られる共通点は、明確なビジョンや具体的計画もないまま、ただ親しい仲間うちの社長から「そのノウハウ使わせてくれないか」と言われて、「だったらFC展開してみようか」と安易に始めてしまうことにあるように思う。

もちろんそうしたきっかけでFCVCを考えること自体は悪いことではない。新築事業だけでの成長が難しくなる中で、自社の強みを生かした横展開としてFCVCのようなネットワークビジネスをやることは、住宅会社の成長戦略の1つの選択肢となり得るだろう。しかしながら、どのような新規ビジネスもそうであるように、ビジョンや戦略、計画性に乏しい新規ビジネスの成功確率は極めて低い。ましてやFCのようなネットワークビジネスは、自社のみならず加盟店を成功させるという、ある意味で直営展開よりも難易度の高いビジネスモデルなのだ。その分、上手くいけば少ない経営リソースで大きなリターンを得られるビジネスではあるが、やるからには相応の覚悟を持って取り組む必要がある。

そこで本コラムでは、5回に亘って「よくあるフランチャイズビジネスの失敗パターン」を例に、どうすればFCVCの展開を成功させることができるのかを、分かりやすくひも解いていきたいと思う。


■CASE1|思いつきでFC展開を始めたものの、加盟店からクレームが頻発し早々に疲弊してしまったA社の事例

A社は中部エリアで事業展開をする住宅会社で、高いデザイン性と、一定水準の性能を満たしたコスパのよい注文住宅がお客様から支持され、地元ではナンバーワンのシェアを有していた。一時期は強みの商品力を生かして積極的に多拠点展開をしていくことも考えたが、人の採用や育成がそこまで追いつかず、同県内での出店に留まっていた。

そんな折、親しくしている東海エリアの住宅会社B社の社長から、「自社でもその商品を売らせてもらえないか」との申し出を受ける。B社は年間30棟程度を販売する住宅会社で、こだわりの家づくりで高い顧客満足を誇るものの、デザイン性などに課題があり、集客が伸び悩んでいるという。自前で商品開発をする力はなく、A社のような商品が欲しいと思っていたというのだ。

A社社長は、自社の商品をそんな風に評価してくれたことを嬉しく思う反面、B社に商品を提供するといっても、どういう方法がよいのか考えあぐねていた。そこで、別の親しい住宅会社C社の社長に相談してみたところ、「それならうちもぜひA社の商品を売らせて欲しい。ちょうどその価格帯の商品が欲しいと思っていたんだよ。どうせならFC展開すればいいんじゃないか」と勧められた。

「なるほど、FCか…。それなら自社に人的リソースがなくても、この商品でエリアを広げていくことができるかもしれないな」。

そう思い立ったA社社長は、とりあえず自社の顧問弁護士にFCの加盟契約書を作成してもらい、B社、C社と加盟契約を結ぶことにした。


■加盟店のフォローに追われる日々の到来

とりあえずやってみよう、という勢いではじめたものの、A社はフランチャイズビジネスに関しては、ほぼ無知な状態であった。自身もどこかのFCに加盟したことはなく、本部が果たすべき役割と、加盟店に担ってもらうべき機能との明確な区分もないままFCをスタートさせたことが、その後どのような事態を招くか全く想像できていなかった。

最初の加盟店であるB社の社長からの紹介もあって、初期の段階でB社、C社、D社という3社の加盟店が立ち上がることになったのだが、当然ながらそれぞれの会社で得意不得意は全く異なっていた。施工品質にこだわりの強いB社からは、「この部分の収まりはどうなっているのか?」「この施工マニュアルでは不十分なので、もっと細かい部分まで作りこんで欲しい」などの相談や要望が多く寄せられることとなった。

かたや営業力を強みとするC社からは、「もっと分かりやすい営業ツールが欲しい」「ホームページからの問い合わせのお客様を本部ではどのようにランクアップさせているのか?」、さらには「誰でも同じように売れる必要があるので営業マニュアルが必要」など、受注につなげるための仕組みに関する相談や要望が次々と寄せられた。

さらにD社は、自社の仕入れ力が乏しく、本部が試算した原価と同じようなコストでは建てられないから、本部から部材を供給してもらえないか、といった相談も受ける始末…。やむを得ずプレカットメーカーや設備メーカーと交渉し、本部と同じ条件(掛け率)で卸してもらうことの了承を得たが、そのために独自の発注システムを大急ぎで整えなくてはならなくなった。

次から次へと出てくる加盟店からの相談や要望への対応に追われ、A社の直営部門の業績は低迷することとなった。加盟店のサポートに奔走し、自社の販売や施工に注力しきれなかったからだ。それでも加盟店からは満足されるどころか、サポートが後手後手すぎるとクレームのように言われ、A社の社長は思わず心の中で「そっちが売りたいと言ってきたのだろう」とぼやきたい気持ちを必死で抑え込んだ。たった3社の加盟店を持っただけなのに、FCなんて手間がかかるばかりで何も旨味がない…と既に嫌気がさしていた。

■なぜこのようなことが起きたのか?

このケースの失敗の要因はどこにあったのだろうか?それは大きく3つのポイントに整理ができる。

1点目は、提供するFCサービスが、どのような経営課題を解決するためのソリューションパッケージなのか、を明確にしなかったことである。一口にFCといっても、様々なソリューションパッケージが存在する。高い性能水準を実現する独自の工法や仕様といったハード的なソリューションもあれば、集客や営業といった売るための仕組みを磨き上げ、高い集客力と契約率を実現するためのソリューションもある。あるいは、共同購買のようなシステムでコストを抑えた家づくりを実現するローコスト住宅のソリューションも存在する。いずれも、事業者が抱える何かしらの課題の解決につながるノウハウや仕組みを本部が提供する形だが、「このFCに加盟すれば全て解決しますよ」などといった全能型のFCなど存在しない。従って、FC本部は加盟店を募る際に、できるだけ分かりやすく「何の課題を解決するために、こういうノウハウを提供しますよ」と伝える必要がある。そしてそのソリューションを必要とする住宅会社にのみ加盟を意思決定させるべきである。

2点目は、本部が提供するサービスとその対価を具体的に示していなかったことである。どのような課題を解決するためのソリューションかを明確にしたら、それに基づいて本部は、どこまでの、どのようなサービスやノウハウを提供するのか、それに対してどれだけのフィーを払ってもらうのか、を定めることが重要だ。そこが曖昧だと加盟店は何に対して本部にフィーを払っているのかわからず、何でもかんでも本部に相談すれば解決やサポートをしてくれるだろう、と思い込む。携帯電話の利用料のように多少分かりづらさはあったとしても、基本料金に含まれるサービスは何で、それ以外のサービスを受ける場合は、別途フィーをいただきますよ、ときちんと説明し、示すことがその後のトラブルを防ぐことにつながる。

そして3点目は、そもそもの仕組み化・標準化レベルの低さの問題である。フランチャイズ展開と直営展開の一番の違いは、自社が直接マネジメントできない他人がそのビジネスを担うことだ。つまり、自社内であれば全てを仕組み化・マニュアル化せずとも、ある程度、共通の考え方ややり方が土壌にあり、一定の教育とマネジメントをすることで、やるべきことを徹底させることができるだろう。しかしながらFCの場合、異なる価値観や手法で事業を行っている他社が販売・施工することとなるので、一つひとつ細かなところまでルールや基準、手法を定め、明文化して示すことが不可欠となる。そうすることで初めて、本部と同等レベルで販売や施工ができるようになるのだ。これを「成果の再生産」という。この「成果の再生産」ができるソリューションパッケージになっているか否かが、FCの成否を左右すると言っても過言ではない。

これからFCVCを立ち上げようかと考えている住宅会社・不動産会社の方は、ぜひこれらのポイントをしっかり熟慮した上で、FC化の準備をされることをお勧めする。

次回コラムでは、失敗から学ぶFCビジネスのポイントとして「パイロット加盟店での検証なしに加盟開発に走って崩壊してしまったケース」について取り上げたい。

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