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フランチャイズビジネスの実態と課題 ーvol.4ー

今回は、多くのフランチャイズが立ち上がるものの数年後にはその大半が事業のピークアウトを向かえてしまう要因について考えたい。その主たる要因は「商品・サービス・ノウハウの陳腐化」にあると思われる。

例えば外食のFCの場合、本部は常に新業態の開発を研究している。外食チェーンは、1つの業態寿命が5年程度と言われているからだ。従って、5年後には撤退を余儀なくされる店舗も増えてくるため、それに代わる新たな業態を開発し続けなければ、事業の成長どころか存続すら危うい。

一方で住宅のFCを見てみると、5年サイクルで新しい商品やサービスを生み出しているFCというのは非常に少ない。エンドユーザーの志向性や他社との競争といった外部環境は刻々と変化しており、本来であれば外食チェーンと同様に、一つの商品・サービスが持つ競争力は、何もしなければ衰えていくはずである。にもかかわらず、ノウハウのブラッシュアップや新たな商品・サービスを生み出すための研究開発に注力できている本部は、少ないように見受けられる。それゆえ、多くのフランチャイズが、4年目ぐらいにピークアウトし、そこから徐々に加盟店数が減り続けるという状況に追い込まれている。

対して加盟店側の要因としては、本部から得たノウハウをもとに自社でより優れた商品や工法、集客、営業のノウハウを開発することができれば、高いロイヤリティを払い続ける必要はなくなる。したがってこのケースも、加盟店の退会につながる。


■CASE4|3年で100社近い加盟店を集めたものの、すぐにピークアウトしてしまった不動産系ネットワーク

売買仲介や中古再販事業を展開する不動産会社向けに、ニッチな領域の営業ノウハウをパッケージ化し、ネットワーク展開を進めたA社。専用ポータルサイトも立上げ、本部主導により一定の反響獲得もできていたことから、加盟店は順調に増え続け、3年間で100社近いネットワークへと成長した。

当初の魅力は、本部からの反響リストの提供と、ニッチ領域における細やかなノウハウが営業マニュアルやツールとして提供されることだった。社内に知見がなくても、加盟するだけでそうしたノウハウが得られるため、小規模の不動産会社や、新築事業を主体としながらも不動産事業も展開する住宅会社などが多く加盟した。

しかし、当初はニッチな領域と思われたマーケットにも、徐々に参入プレーヤーが増加していった。同じようなポータルサイトも多数立ち上がり、営業手法も似たり寄ったりなやり方をする会社が増えた。結果として競合との差別化が図れず、反響そのものが伸び悩むとともに、反響があっても専任媒介が取れないケースが増えることとなった。

当初はお客様を惹きつけた営業ツールも、他社と代わり映えしないものとなり、お客様の反応も乏しくなっていった。にもかからず、新たなツール開発や営業シナリオの見直しはなされないままだった。加えて、デジタル主流の流れに乗り遅れたことも致命的だった。以前の成功パターンだったチラシやDM中心のプロモーションに費用の多くを費やし、デジタル広告へのシフトが遅れてしまったのだ。反響数が低迷していった要因はここにある。

その結果、FC展開の4年目ぐらいから徐々に加盟店の退会が増えはじめ、同じようなサービスを提供する他のFCに乗りかえる加盟店や、もう一通りのノウハウは学んだからと、自社で独自に取り組む道を選ぶ加盟店が続出した。一時期100社近かった加盟店数は、5年が終わるころには半減してしまっていた。


■FC本部の本来の役割は「研究開発」にあり

いかなる商品やサービスも、永遠に競争力を持ち続けることなどありえない。それが魅力的な市場であればあるほど、参入プレーヤーは増え、やがて競争環境は厳しくなる。あるいは、一時期トレンドを捉えていた商品やサービスであったとしても、お客様のニーズや関心は変化するので、そうした変化に適応できなければ、お客様の支持は得られなくなる。

例えば戸建て住宅のトレンドの変遷を見ても、輸入住宅、「子育て」などのコンセプト住宅、デザインローコスト住宅、省エネ住宅、平屋等々、ブームとなった商品は数多くあるが、いずれも一時期大きく棟数を伸ばしたに過ぎない。したがって、事業成長を続けるためには、フランチャイズであろうと自社商品であろうと、次なるトレンドを見据えて継続的な研究開発が欠かせない。

しかしながら、一住宅会社が独自に研究開発を行うには限界がある。投資コストの面もそうだが、そもそも商品開発ができる人財がいないことも多いからだ。それに対してフランチャイズの場合、本部は元々商品やノウハウ開発ができたからこそ本部をやっているわけであり、また、加盟店から得たロイヤリティという原資もあるので、それを研究開発投資に回すことも可能である。ネットワーク展開のメリットでもある「規模の経済」から、同じ水準の住宅であればより安い原価で実現できる優位性もあるだろう。

不動産系ネットワークのようにカンバンやサービス・ノウハウを提供するFCにおいても、新サービスを開発した際に、共同広告として一気にプロモーションを掛けることで、市場の認知度を高めることも可能である。新サービスのトライアンドエラーがスピーディに進むことで、サービスのブラッシュアップが早いことも強みだ。

こうしたネットワークサービスが本来持つ強みを生かしつつ、研究開発投資をしっかり行うことが、FC事業を持続可能なものにする。裏を返せば、研究開発を怠ったFC本部は、やがてお客様も加盟店が離れていくこととなり、「一時の成功」に終わってしまいかねない。直営展開との最大の違いとして、加盟店はメリットがないと判断すればすぐに離れていってしまう、ということを肝に銘じておかなければならない。

次回は、高いロイヤリティが加盟店の収益を圧迫し、Win-Winにならなかったフランチャイズのケースをお伝えしたい。

 

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