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「この会社で働き続けたい」そう思わせる人事評価制度に作りかえる ーvol.2ー

社員の定着率が高く、生産性も高い組織を作るためには
納得度が高く、やる気になれる制度が必要です。


■既存の評価制度にはそれぞれ欠点があった

もう少し踏み込んで考えてみましょう。
評価制度は、情熱や意欲、能力、成果などを評価するものです。
制度の歴史を遡ってみると、高度経済成長時代からバブル経済の頃までは、終身雇用、年功序列、企業内組合という三種の神器があり、年齢とともに給料と役職が上がっていく仕組みとなっていました。

その後、社内でどれくらいの役職の業務を遂行しているかを判断するために、協調性、積極性、責任感、理解力、実行力などの能力が評価に含まれる職能評価が導入されるようになりました。
この制度は長期で能力を高めていく動機付けになっていきます。
しかしこの制度の問題点は、年功的で年長者が有利な運用になってしまうことと、部署間で共通の評価基準を設けるため、どの部署でも通用するゼネラリストは育ちますが、特定の分野に優れたスペシャリストの育成には向かないことです。
住宅業界は設計、施工、営業など担当業務の内容が異なるため、このタイプの評価制度にはあまり向いていないと思います。

バブル経済の崩壊後は成果主義が導入され、個々がそれぞれの目標を持ち、達成することによって評価され、報酬などが上がっていく仕組みへと変わっていきました。
住宅業界は、以前から営業部門で歩合制を導入してきた経緯があるため、前述した年功序列型の制度よりも成果主義型の制度の方が馴染みが良かったといえます。
また、年功や成果ではなく、個々が保有し、発揮する能力を評価するコンピテンシー評価制度が広がり始めたのもこの頃からです。

コンピテンシーは、業績が良い人の行動特性や、成果や業績に結びつく行動と能力のことを指します。
また、そ のような能力を持っているだけでなく、発揮しているかどうかを評価するのがコンピテンシー評価制度です。
これも住宅業界には馴染みやすく、制度を再構築する際のベースにもなるだろうと思います。
なぜなら、職能が多岐にわたる住宅業界では、営業、工事、設計など全ての専門職に関する能力を並行して高めていくことは難しく、計画的なジョブローテーションは現実的とは言えないためです。

業界特性上に長年同じ職種に従事して能力を向上させ続けることが多いので、スペシャリストとしての職能を評価する上で自社のコンピテンシーを見つけることが重要です。
専門性に注目して評価することにより、年功による評価の歪みを制限しつつ、発揮する能力に応じた安定的な処遇を与えることもできます。

しかし、これら新しい制度にもいくつか問題点があります。
まず、成果主義型は成果が数値化できない職種で評 価の正当性が低下します。
成果を評価するまでの期間が半年、あるいは一年と短くなるため、長期的な取り組みや成長も評価されにくくなります。

また、個人の努力が個人に返ってくる仕組みになりやすく、個人主義に陥るためにチームワークが悪化し、組織づくりや運営が難しくなります。
上司が自分の成果を追い求める結果、部下や新人の指導と育成が後回しになってしまうのもこの制度のデメリットです。

コンピテンシー評価は、成果に結びつく行動特性を 特定するまでの過程が大変で、労力とコストがかかります。
時代や市場環境によって成果に結びつく能力が変 わることがあるため、その都度、変化に対応し修正していく必要もあります。
新型コロナの影響を受けている現在のように、職能を発揮しても成果につながりにくいときも、評価の信頼性が 不安視されることがあります(図3)。

※本稿は、2020年4月に開催した「地域密着ビルダー成長戦略フォーラム」で登壇した当社コンサルタントの講演内容を編集したものです。

 

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