■ 紹介営業がなかなか成功しない理由
ハードル① 紹介活動に協力頂く動機付けが出来ない
このように書くと、簡単だ・・・と思われるかもしれませんが、実は、近年のお客様において、口コミに協力頂くのは非常にハードルが高くなっています。ある会社で、お客様に取ったアンケートの結果をご覧下さい。
アンケート結果をご覧頂くと、家作りのことを伝えたいと思っている方は、8割以上存在する中で、他人の家づくりのアドバイスをするかというと、約半数近くの方がNoと答えるようになり、さらにそれが最近の引き渡しのお客様になると(アンケートでは、直近2年間の引き渡し先に限って集計)、その割合が高くなっていることがわかります。昔と違い、今のお客様は、良いものだと思ってもそれを他人に推奨することを躊躇う傾向があるので、しっかりと後押ししてあげられるよう、アプローチしてくことが求められるのです。
このように紹介営業を成功させるためには、まずはお客様に紹介活動について前向きに協力しても良いという動機を持って頂くこと、これが最初の関門となります。このためのステップを「紹介依頼」と言いますが、他業種と違い、我々住宅業界においては、「住宅」という一生の中で最も高価な買い物となる商品を口コミ頂く必要があるので、それ相応の依頼をする必要があります。お客様の不安心理等も踏まえた上で、20分~30分ほどしっかりと時間を取って、協力頂ける状態を作っていくことがポイントとなるのです。
20分~30分と言っても、何を話すのか?それにはいくつかポイントがあるのですが、ここではそのポイントのうちの一つをご紹介させて頂きます。それは、お客様の特性によって、どのようにして紹介活動に協力頂く動機を訴求していくかというポイントです。
例えば、以下は紹介依頼を行うスタッフ向けのロールプレイングの際の題材となるのですが、皆様であれば、どのような話をされますか。
例えば、②のケースであれば、紹介で建てられた方とそうでない方の違いを説明し、紹介で建てることがいかに良かったかということを訴求することがポイントとなります。例えば、以下のようなトークをします。
今のトークは一例ですが、まずはこのようにして、お客様に紹介活動に協力頂く動機を持って頂くことが必要です。この際、注意しなくてはならない点は2点。1点目は、お客様の特性によって、紹介に協力頂くための動機付けのポイントは変わってくるので、それに合わせた話をすることです。
先の①の世話好き特性の高い人であれば、友人・知人にとって、口コミを頂くことがいかに喜ばれるか、ということを訴求する形となりますし、③の中でも、新築に対する満足度が高い方であれば、満足頂いた内容をそのまま、口コミして頂くよう依頼することが有効です。
例えば、屋上庭園を気に入って頂いたお客様であれば、新築に友達を呼んで、屋上庭園でパーティーをした際などに、自社のことを口コミして頂くよう依頼すれば、喜んで協力をして頂けるはずです。お客様が紹介活動に協力頂く動機は、人によって違うので、それを見極めることが大切となります。
注意しなくてはならない2点目は、金銭的なメリットと精神的なメリットのバランスです。精神的なメリットとは、今までお話してきたような内容ですが、これがないままに、金銭的なメリットばかりを訴求しすぎてしまうと、友達をお金で売っているような感覚になってしまうので注意が必要です。
ただし一方で、精神的なメリットだけでも動いて頂きにくいのも事実。それゆえ、きちんと金銭的なメリットがつく理由を明示した上で、キャンペーンのご紹介をすることがポイントとなります。
ハードル② 何を話したら良いかわからない
紹介活動に協力頂くことが出来たら、次のステップは、お客様とコミュニケーションをとる中で、把握してきた相手の人脈の中から、口コミ頂く相手を特定した上で、その方に向けて口コミを頂く依頼をすることがポイントとなります。協力頂けたとしても、このステップを正しく行えないと、お客様としても「何を話したら良いかわからない・・・」として活動が止まってしまいます。口コミ依頼とは、以下のようなトークを指します。
こういった依頼が出来るようになれば、まずは紹介営業体制構築に向けた第一歩が完成したと言えるでしょう。上記トークは一例ですが、このような口コミ依頼トークを顧客特性に合わせて依頼出来るよう、8~10パターン程度作っておくと良いでしょう。
ただし、これだけで安心してはいけません。実は、ここまでの依頼をしたからといって、すぐに紹介が出るわけではありません。ここまで話をしても、お客様が10人いたら、すぐに口コミ頂けるのは1~2人程度でしょう。お客様からしたらその程度の重要性しかないのです。
■ 全社員紹介営業体制構築の重要性
では、どうのようにすれば良いのか。これは、実際に様々な企業様において紹介活動を行われている住宅企業様のデータですが、例えば1年間に紹介頂いたお客様が70人いるとすると、1回目の紹介依頼で紹介を頂けたのがそのうちの10人。一方残りの60人は、2回、3回以上の依頼をすることで紹介頂けている、といったデータがあります。
つまり、一度お願いするだけでは、お客様も口コミすることを忘れてしまうことが多いのですが、3回とも「紹介を忘れていた」となると、申し訳ないという感情が芽生えるのか、お客様がより積極的に紹介先を探し出そうと動いてくれるのです。1回の依頼で終わらず、何度もフォロー出来る協力体制を築く。これを全メンバーが実践出来れば、紹介発掘数は7倍になるのです。
なお、この複数の依頼を、営業担当者が引き渡しまでに何度も何度も行うことが出来れば良いのですが、分業化をしている会社にとっては、契約後はそこまでお客様と接点を持たないケースもあるかと存じます。かつ、営業マンはどうしても契約前のお客様への業務に集中したいため、何度も何度も依頼をかけるという活動がおろそかになりがちです。さらには、同じ方から何度も何度も依頼するというのは、引け目を感じてしまうこともあります。
そのような問題を解決するために登場するのが、設計、工務担当です。この方々は、契約後から引き渡しまで、メインでお客様と接点を持ちますので、この方々が紹介営業業務を行っていくことが出来れば、組織としてより効果的に紹介依頼を実施出来るようになっていくのです。
このように組織的な紹介営業が出来るようになると、単にいち営業スタッフが年間に5件紹介を頂いた!というレベルの体制ではなく、会社全体として、紹介受注比率60%を超える体制を作っていくことが出来るのです。かつては、紹介受注比率は30%あれば良いとされてきましたが、近年、100棟クラスのビルダーにおいても、紹介受注比率を60%以上実現しているケースも多数出てきています。そこには、今のお客様は、企業から発信される情報よりも、友人・知人からの口コミをより重視されるようになってきているという背景もあるのです(下図参照)。
なお、この全社員紹介営業体制を構築するためには、ここまでご紹介させて頂いた内容以外にも、いくつもの外せないポイントがあります。
① お客様に自然と口コミ頂くネタの設計
お客様から口コミを頂くためには、それ相応のインパクトに残る経験をして頂くことが求められます。初回来場から引き渡しまでに、いかにして感動満足頂ける仕掛けを用意出来るか。これがないことには口コミは発生しません。
② 紹介情報の管理体制構築
各社員が同じ顧客に連携して紹介活動を行うために、紹介営業に関する顧客情報(紹介特性、人脈、過去の紹介活動履歴等)の管理体制作りは必須となります。
③全社員が紹介営業へ継続して取り組める環境作り
紹介営業自体、取り組んだことはある企業様がほとんどですが、長続きしない企業様がその大半を占めます。いかにして全社員のモチベーションを紹介営業に持って頂き、かつ継続出来る組織環境を構築出来るかがポイントです。
④通常業務の生産性向上
③にも関わってきますが、そもそもの通常業務で手一杯である場合、各スタッフがなかなかプラスアルファの活動である紹介営業にまで時間を使うことが出来ません。通常業務に支障がある場合は、まずはその点から改善することが求められます。
⑤自社オリジナルの紹介パターン構築
今回紹介させて頂いたものは、一般的な紹介営業の成功パターンですが、自社で取り入れて頂くには、最終的には、自社のオリジナルの紹介パターンを見出す必要があります。顧客特性、商品特性等によって、成功するパターンは若干違ってくるので注意が必要です。
■ おわりに
全社員営業体制を構築するためのポイントをご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。もし、より詳しい内容をお知りになられたい場合は、お問い合わせ頂けますと幸いです。