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中国・ASEAN現地法人のこえ vol.2 海外コンサルタントの事件簿①

今回と次回で、海外コンサルタントが現地で直面した様々な事件・トラブルをご紹介します。

 

1.とまらない!賃金アップ要求

製造拠点として現地法人工場を立ち上げました。
数年間現地の幹部と従業員とともに頑張った結果、やっと会社を軌道にのせました。
嬉しいと思う一方、従業員は毎年賃金アップを要求してきます。

労働力と人材確保のため、なるべく要求に応じたいと思いますが、年々上昇する人件費は悩ましいものです。
加えて、今まで戦友だった信頼できる現地スタッフの幹部は従業員代表になり、今回は労使交渉に反対側に立ってしまいました…。


近年、中国をはじめアジア各国は経済急成長によって、人々の生活水準とコストが日々高まってきます。
まずこの背景を十分に認識、理解しておく必要があります。

そのうえで、労使関係も「人間関係」の一種であり、「お金」が全てではないという原点に返り、普段から多面的な工夫をすることが必要です。

職場は日常の中で長く居られる場所です。
従業員にとって給与や処遇はもちろん大切ですが、就業環境、帰属感、キャリアアップ等も重視しています。
そのため、会社は普段から慰労会、食事会、家族を含む社員旅行、スポーツイベント、祝日や誕生日のギフト等の心遣いを忘れないことが重要です。

日本人の総経理(社長)もなるべく従業員との日常コミュニケーションをはかりましょう。
従業員は現地語で名前が呼ばれることだけでも存在感を感じ、さらに家族の名前や出来事について雑談してくれると大喜びします。
信頼関係と愛社精神は小さい積み重ねからうまれ、いざという時に良い効果を出してくれます。

また、労働組合や従業員代表等を、交渉の「敵」と位置づけると、うまくいきません。
彼らを従業員の間の調整役やイベント等の受け皿として位置づけ、上手に活用したほうが良いのです。
現地スタッフの幹部は普段の戦友であるからこそ、会社の経営理念や状況を理解しており、人事や昇給方針に共感できれば、逆に従業員への説明や説得に役立ってくれます。

日本人に比べ、上述した手法はとても重要ですが、一方で外国人は非常にロジック的な一面が強いので、論理的な対策も欠かせません。
社内の人事制度(等級制度、報酬制度、評価制度など)をきちんと整備したうえ、従業員への説明、目標設定・面談・フードバックのプロセスを果たせば、賃金交渉はやりやすくなります。

 











2.パートナーに「だまされた?」

海外でのビジネス展開において、いかに信頼できる事業パートナーに出会えるかは、「事半功倍(少しの努力で大きな結果を生む)」の肝心な要素です。


一方で、日本企業が本格的な海外進出を開始してからもはや20年近くたっているにもかかわらず、いまだに「だまされた」「裏切られた」という話を聞くことがあります。
ビジネスの失敗を相手のせいにするのは、とても簡単ですが、それでは失敗だけで終わってしまいます。
「だまされた方が悪い」というくらいの覚悟で「異文化」に対する理解を深めていくことこそが、真のパートナーを見分けてWin-Winの関係を築いていくポイントです。

中国の場合、中国人の実利や、メンツ(面子)を重要視するという、特有の文化への理解が必要です。
たとえば、実利・メンツを重要視する中国人従業員に、日本人の上司が「頑張ったら現地法人の重役に昇級させる」と激励のつもりで言ったとします。
しかし、それをすぐに実現しない場合には、従業員は未練なく辞めてしまいます。
日本側は「よくしてあげたのに!」、中国側は「うそをつかれた(メンツが傷つけられた)!」ということになります。

また、ビジネスパートナーとの会食にお偉いさんが出席して、「親友」、「親戚」だと仲の良さをアピールする場合があります。
しかし、多くの場合、「お偉いさん」はただビジネスパートナーの面子を立てるために接待に出席しただけであって、実際のビジネスには関わらない場合がほとんどです。
そのため、過度に人脈を標榜する人には気をつけるべきです。

同じく「没問題」(問題ない、大丈夫)を本気に聞き入れることは、トラブルにつながります。「この前の打合せで問題ないと言ったのに」、「何故駄目になったんだ! 信用できない」と怒っている日本人をよく目にしますが、これも中国人のメンツを理解できていないことによるものです。

日本人の物事に関する考え方が「規則に準拠しているか」➡「合理的か」➡「気持ちが通じるか」であるなら、中国人のビジネスに対する認識は「気持ちが通じるか」➡「合理的か」➡「規則に準拠しているか」である場合が多いです。
これを理解することは、パートナーの見極めに役に立ちます。

 

 

 











注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。

 

※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです


【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、
ASEANにジャパンデスク9拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる
「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を
経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、
企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で
多数の支援実績がある。

国際ビジネス支援サービス紹介(みらいコンサルティンググループWEBサイト)

第○条 (定義《例》)

この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。