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中国・ASEAN現地法人のこえ vol.7 海外現地法人管理のポイント

海外でビジネスを展開する場合、最初に気になるのは「十分な売上があがるか?」「想定したコストで満足いく品質の製品が作れるか?」という点ではないでしょうか?
もちろん、売上の獲得や想定どおり生産を行うことは大前提であり、これができなければ海外進出をする意味はありません。
しかし一方で見落としがちなのが「管理(マネジメント)」です。一般的には管理活動はお金を生まない活動と考えられており、多くの会社では真っ先にコスト削減の対象となります。
ビジネスをゼロから立ち上げることが多い海外においては、その傾向は特に顕著であり、海外に派遣するのも最初は営業や製造系の人員で、管理系の人員が最初から派遣されることはまずありません。
しかし、「海外では成功が約束されていないから」ということを理由に、管理面をおろそかにして良いということにはなりません。管理面をおろそかにすると、せっかく海外で稼いだ売上が余計なコストに消えてしまい、結果グループに利益が残らないことにもつながります。
ここでは、海外現地法人の管理をおろそかにしたことで発生した問題と、そこから教訓として得られる管理上のポイントをご紹介していきたいと思います。


【事例①】
現地法人の管理を現地責任者に丸投げした結果…

現地法人の経営は、現地在住の責任者(日本人)に依頼していました。その責任者は、海外暮らしが長く業界にも精通していたため、その会社が海外に進出するに当たり、外部より招へいした人材です。日本本社は海外の制度や商習慣にも疎く、海外現地法人の管理は事実上その責任者に「丸投げ」の状態となっており、日本本社は現地法人の情報をその責任者からの説明でしか把握することができない状態でした。


その後、現地法人は事業が想定どおり進まず、経常的な赤字が続きましたが、現地責任者に問い合わせてもはぐらかした回答しか得られず、日本本社側では赤字の原因が掴めていない状態が続きます。
結果、外部の専門家に依頼して現地法人の調査を行ったところ、海外現地責任者の「不明朗な支出」が行われていることが判明しました。しかし、調査と前後してその責任者は現地法人を辞めてしまい、詳細は分からないままとなってしまいました。


確かに、現地法人は地理的に離れているため日本本社の監視が届きにくく、制度や商習慣も日本とは違うため、日本本社からは理解できないことも多くあります。しかし、だからと言って日本本社が現地法人に対する監視の目を緩めてしまうと、この事例にあるような不正のモチベーションと機会を与えてしまうことにもなりかねません。


一番有効な予防策は、日本本社の社長自らが現地に定期的に訪問することで、現地法人に「みられている」という緊張感を与えることです。また、これを実務的に裏付ける役割として、現場レベルの「内部監査」を継続的に行うことが望まれます。「現地のことは分からない」と考えることを放棄するのではなく、現地の制度や商習慣に関してしっかりと知識を得た対応をすることがポイントです。


【事例②】
売上は順調に伸びていたのに、利益がまったくあがらない…

現地法人設立当初より、営業や製造に関しては日本本社より人員を派遣していました。しかし、管理に関しては日本本社からは人員を派遣せず、経理業務などは現地採用の担当者(ローカル)に任せていました。

その現地法人は、営業部門の努力もあり売上は順調に伸ばしていましたが、一方で利益は一向に伸びない状態が続いていました。日本本社がこの状況を問題視し原因調査を行ったところ、経理担当者は会計帳簿への記帳のみを行っており、事業部門や顧客・製品ごとの利益の把握といった「業績管理」の視点がまったくないことが判明しました。

冒頭に記載したように、海外事業スタート初期には何よりも売上の獲得が必要なため、営業や製造に優先的にコストをかけることは当然です。一方で、ある程度売上が安定的に確保されるようになったら、管理面にもコストをかけ、獲得した売上から利益をきちんと残すようにすることが必要となります。

日本本社からは、月次試算表の入手だけでなく、製品別・部門別といった業績(利益)管理数値を入手し、現地法人の収益体質を検討することが必要です。これにより、初めて日本本社と海外現地法人の建設的な対話が可能となります。


【事例③】
利益だけを見ていたら、突然お金が回らなくなった…

事例②のとおり、現地法人の利益管理は非常に重要です。日本本社では、毎月の部門別月次試算表を入手して、現地法人の利益体質を管理していました。ここ数年は、毎月経常利益が黒字化できるようになっていました。

しかし突然、現地法人から「資金が足りないので、増資が必要だ」との連絡がはいりました。現地の通帳を見ると、出金が続く一方で、入金はここ数年まったくなかったことが分かりました。

なぜ、利益が上がっていたのに、入金がなかったのか?原因を調査したところ、売上のほぼすべてが「架空」であることが判明しました。

売上先は、ローカル社長の親族会社のペーパーカンパニーで、海外現地法人の業績を良く見せるために使われていました。もちろん、資金がある会社ではないので、売上は上がりますがその回収はまったくできない(つまり、売掛金がたまり続ける)状態となっていました。

月次管理は、利益だけでなく、キャッシュ・フロー(実際のお金のながれ)で行う必要があります。毎年現地法人の決算書でキャッシュ・フロー計算書をみているという会社もあると思いますが、1年間の結果だけをみても、問題の解決にはなりません。毎月のキャッシュ・フローの管理を強化することで、傷口が予定外にひろがる事態をふせぐことができます。

注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。
※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです。


【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、ASEANにジャパンデスク10拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で多数の支援実績がある。

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