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未来の顧客から選ばれる集客戦略~消費税増税後に衰退する会社と未来の顧客から選ばれる会社~(前編)

増税後の次の一手は?

2019年の消費税増税10%への増税に向けて、「駆け込み需要」というキーワードが、前回の8%への増税のときのように、再燃してきています。

本コラムをお読みいただいてる会社様の現場も非常に忙しくなっているのではないでしょうか。全国の住宅会社が今、そのような状況になっています。

これだけ集客・受注が好調だと「新たな取り組みは現場が落ち着いてからにしよう」と思ってしまいたくなりますが、もし経営者がそう思ってしまったら、失礼ながら「悠長な経営者」と言わざるを得ないでしょう。ほとんどの経営者・経営幹部は先行きの不安を抱えており、駆け込み需要前から次の一手を仕込み始めています。

設立7年で年間200棟を実現した住宅会社の経営者の言葉をお借りすると

まれに現時点での集客の少なさを嘆き、チラシを改善したり、なぜかショールームを建てようとする社長がいるが、はっきり言って無意味。現時点での集客が少ないのは、1年前の意思決定が失敗だったからだ。 逆に言うと、現時点での意思決定が、1年後、2年後の集客をつくる。しかも集めるだけでなく、その後の売る流れも新しく作り上げる必要がある。特に今のような状況だと、3年後を見据えて新しい集客構造を作らなくてはいけないし、その意思決定が、3年後に自社が勝ち残っているかを決めると言っても過言ではない

ちなみに同社はWebだけでも4つのホームページを自社で展開するなど、さまざまな集客構造づくりに取り組んできています。その同社がさらに新たな集客構造づくりを展開しようとしているのです。御社のエリアにも、同社のようにスピード感を持って新たな施策を展開している成長企業はあるかと思います。もしも現時点の集客増・受注増に安心していたら、同社のような住宅会社にあっという間に差をつけられてしまうことになります。

未来の需要減・集客減に向けて、どのような対策を「今」打つのか…。
駆け込み需要の好調な状態に惑わされ、次の一手を展開するタイミングが遅くなれば、あっという間に競合と差がつき、市場から置いていかれてしまいます。
需要が好調な今だからこそ、今後どのような集客戦略を描いて先手を打つべきかが、経営者に問われています。

集客戦略の描き方

集客戦略を描くと言っても、どのように意思決定を行い、集客施策を展開していけばよいのでしょうか。
その全体像をまとめたのが図です。

[図①]

 

 

縦軸がお客様の属性で分けたものです。「今すぐ」にすぐに白黒つくお客様、「実は」は来場につながりにくいが会ってしまえばすぐに決められるお客様、「そろそろ」は半年から1年先にと考えているお客様、という分類です。

横軸の「一般」が会社で行う集客施策、「自己開拓」が文字通り営業マンによる自己開拓という分類です。
Aの領域が、どの住宅会社でも行っている「当たり前」の集客施策です。
よくチラシやホームページの工夫だけで集客増加を考えている方もいらっしゃいますが、一昔前ならともかく今ではどの住宅会社でも力を入れているため、そこだけでは差がつきにくくなっているのが現状です。

Bは「自己開拓」の領域であり、会社のマネジメントの影響力が大きいところです。
トップマネジメントの強い会社だと、ポスティングや飛び込みの活動量で集客をカバーしていた会社もありますが、今の時代それだけでは必要な集客数をカバーできません。また、他社と差がつきやい集客施策としては「紹介活動」が挙げられます。たとえば、紹介活動を「正しいやり方」で「継続的」に取り組んでいる会社は、年間100棟を超えても紹介比率70%を維持しています。

もし御社が現時点で棟数を伸ばしているのであれば、同時に紹介受注も増えているかを確認してみてください。1年間で50棟から100棟に伸びたのに、紹介受注件数が前年と同じ20棟のままであれば、それは単に市場の追い風と会社の広告宣伝費に頼って受注を伸ばしているだけです。

社員が自己開拓で集客する意識が薄まっている、つまり足腰が弱くなっている状態ですので、景気が良い時はいいですが景気が悪くなったら、集客効率・投資効率が落ちて一気に事業が瓦解する可能性があります。

C の領域は、数年前から展開する企業が増えている施策です。簡単に言うと、自社の名前のできるだけ目立たせずに「地域の土地情報館」や「ワイワイガヤガヤ楽しめるイベント」という見せ方で集客する方法が C の領域です。

住宅購入を検討し始めたばかりのお客様といち早く接点を持てることがメリットです。また、エリアである程度の認知度が作れると、逆に誰もが知っている住宅会社には行きたくないという層のお客様もいらっしゃるため、そのようなお客様と接点を持ち、より幅広くエリアの市場を侵攻していこうとする際にも有効な施策です。

上記のA・B・Cで、自社が取り組んでいない領域や弱い領域を考慮しながら集客戦略を描き、どのルートからどれくらい集客と受注を見込むかを管理していく必要があります

ちなみに上記のA・B・Cの全てを展開していった際に、注文の住宅会社だとエリアシェア1015%、分譲の住宅会社だとエリアシェア2030%まで高めることができます。今まで限界シェアと思われていたエリアシェアを超え始める企業が出てきたのは、上記の施策を進めてきている住宅会社が増えているからと言えるでしょう。

地域NO.1住宅会社の集客戦略

上記の集客施策を全て実践し、今では年間600棟以上に成長しているF社をご紹介します。

F社は多エリア展開せずに、1県の北部エリアのみで年間600棟以上を受注しています。元々、需要が大きなエリアとはいえ、ローコストメーカーやパワービルダーが侵攻するエリアで圧倒的なNO.1を実現しているのは地域から継続的に支持されている証拠でしょう。

F社は8年前に100棟程でしたが、未来を見据えた集客戦略と強力なトップマネジメントにより、エリアの着工数が右肩下がりの中で、棟数を右肩上がりで成長させてきました。

 

 

同社の成長で特筆すべきは、拠点数を増やさずに集客数を増やし、受注を伸ばしてきたことです。つまり1拠点当たりの集客数と受注を最大限に増やしていることで、単一エリアで限界まで集客効率を高めているのです。

その特徴がよく表れているのが、この2つの数字です。

 

 

この数字は、もし来場したお客様全てがその年に住宅を購入していると仮定した場合、F社は「そのエリアの全ての住宅購入者と接点を持っている」ということを表しています。

たとえば1000棟の市場規模のエリアで、エリアシェア20%であれば200棟の受注になります。200棟の受注に対して契約率20%であれば、1000組のお客様と接していることになります。つまり、その年の市場規模と同じ量の集客数を実現しているということになります。実際には全てのお客様がその年に決めるわけではないので、全てのお客様でなかったとしても相当数のお客様と接していることになります。この状態が、単一エリアで限界まで集客効率を高めている状態と言えるでしょう。

では、F社はどのように圧倒的な顧客接点を作り上げたのでしょうか。

図①に基づいて説明すると、Aの領域だけでなく、B・Cの領域に注力したことが功を奏しています。

Bの領域ですと、年間128件の受注が紹介で決まっています。棟数増加によってお客様と社員が増え、その増加に応じて紹介件数も右肩上がりで伸ばしていきました。紹介活動以外にも、「全社ポスティングDAY」という行事を週1回行い、経理や事務職も含めて全社員で36千枚のポスティングします。会社規模が大きくなっても社員の足腰が弱くならないようなマネジメントを徹底しているのです。

Cの領域ですと、この12年でイベントからの受注が増えています。

イベントと言っても見学会や住宅セミナーではなく、食べ物や景品、遊び場があるワイワイガヤガヤ騒ぐイベントです。イベント集客のポイントは、何か騒いでいるところにお客様を呼び込み、半年間ほど接点を持っていき住宅購入層へとランクアップさせる仕組みにあります。ただ、最初の1年間は契約率が上がりにくいというデメリットはあります。F社も最初の1年はイベント集客からの契約率が5%でしたが、1年以上たった今では契約率10%にまで上がっています。3年前には全くやっていなかったイベント集客から、今では年間60棟を決められる構造に育っています。

また、ホームページに関しては現在9つのホームページを展開しています。
一つが普通の自社ホームページで、残り8つがレスポンス型ホームページになります。
同社のホームページからの反響も右肩上がりで増えています。

まとめると、図①の「A:当たり前の施策」、「B:マネジメント施策」、「C::着眼点による施策」の3つを展開していくことで着実に集客件数は増えていきますし、F社の成長がそれを表す成功事例です。F社の社長も、常に将来の市場を見据えながら、2年後、3年後にどれくらいの集客数が必要かを考えて先手を打ってきました。

その結果が、先ほど挙げたエリアシェア20%、契約率20%という指標に表れています。ちなみに注文住宅会社でもエリアシェア10%、契約率10%を実現している会社様もありますので集客目標の一つの指標として参考にしていただければと存じます。

 

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