Question.
「移転価格税制」とは何ですか?どのように対応すればよいでしょうか。
Answer.
1) 移転価格(Transfer Pricing:TP)とは、企業が海外の関連者と取引する際の価格です。
2)移転価格を意図的に操作することにより、拠点間で利益を操作することが可能となり、結果として各国が徴収する税額に影響を及ぼします。
3)上記のような利益・税金操作を防止するため、「移転価格税制」が存在しています。
1.移転価格税制とは
ある企業が、税率の高い国から低い国に所得を移せば、トータルでは税負担を低減させることができます。
たとえば、日本よりも法人税率の低い海外に子会社を設立して、その子会社へ商品をものすごく安く提供(輸出)することで所得を移したとします。
法人税率が低いので、企業のグループ全体では、税額を削減できます。
しかし、このような取引が行われると日本国内での納税額が減少してしまいます。
そこで 日本税務当局から 「通常の取引価格で輸出した場合の税金を、日本において納めるように」という指摘がなされることがあります。
これが、「移転価格税制」です。
逆のパターンで、海外の税務当局から同じような指摘を受けるケースもあります。
2.対象となる「関連者」
移転価格を意図的に操作するには、お互いにある程度の影響力がなければなりません。
税務上は、これを「国外関連者」とよび、以下のように規定されています。
まず、「独立企業間価格(Arm’s Length Price:ALP)」が計算されます。
これは、イメージとして、「もし国外関連者以外と取引していたら、いくらで取引するか」という価格です(実際の独立企業間価格の計算方法にはいろいろ存在しますが、専門性が高い分野ですのでここでは詳細は割愛します)。
もし、以下のようなケースが存在した場合、税金へのインパクトは下記のとおりとなります。
<前提条件>
年間売上10億円、ALPの方が実際の売上に対し5%高い、更正期間6年、日本の法人税率30%
このように、日々繰り返されている取引が一括かつ比較的長期間において見直されてしまうので、個々の差額が小さくても追徴税額は多額となる傾向にあります。
4.移転価格の「文書化」
移転価格ついて、税務調査があったときから対応を始めると、税務当局への書類提出が遅れて心証が悪くなったり、最悪の場合には「推定課税」によって多額の税金が発生する、という恐れがあります。
移転価格税制のリスクを低減するには、企業はあらかじめ移転価格の内容を「文書」に残して、対応方針を明確化しておくことが望まれます。
移転価格について、企業が作成すべき文書の種類は、以下のとおりです。
5.実務対応上の留意点
まずは、日本本社の税務リスクを低減できるよう、文書化等の対応をしっかりと行うことが不可欠です。
税務当局への対応のため…と考えると受け身になってしまいますが、自社の製品やサービスが、一般的にどれくらいの価格で取引されているかを知ることは、企業グループの海外ビジネス戦略上非常に重要な情報となります。
やるのであれば、積極的に、入手したデータを活用するくらいの気持ちで臨む事が求められます。
加えて、今日、中国・ASEANの各国でも移転価格に関する制度が厳しくなっており、特にインドネシア・ベトナムなどの対応強化が注目されています。
取引額の重要性が高い海外子会社等を中心に、現地国においても、移転価格税制対応を進めることが重要です。
注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。
※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです
【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、
ASEANにジャパンデスク9拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる
「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を
経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、
企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で
多数の支援実績がある。
国際ビジネス支援サービス紹介(みらいコンサルティンググループWEBサイト)
第○条 (定義《例》) この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。 |