Question.
日本では、海外現地法人からの配当金が非課税になると聞きましたが?
Answer.
1) 「外国子会社配当金不算入制度」と言われます。平成21年より制度化されています。
2)一定の条件を満たした場合、日本で受けとった配当金の「95%」が非課税となります。
1. 配当金非課税の背景
海外では、利益に対して課税が行われます。
課税後の利益を元手に日本への配当したとき、さらに日本でも課税されるとなると、海外からの資金回収のモチベーションが低くなり、投資活用意欲が失われてしまうおそれがあります。
そのため、一定の条件をもとに、海外現地法人から受領した配当金の95%を非課税とする制度が、日本において定められました。
2. 非課税の条件
制度が適用される条件は、以下のとおりです。
3. 実務対応上の留意点
この制度は、日本で配当を受け取る際には非常にメリットの大きい制度です。
実務上は、下記の点に留意することが望まれます。
Question.
「外国税額控除」とは何ですか?
Answer.
1)二重課税の発生を防ぐために、海外で支払った税金を、日本で支払う税金から控除する仕組みです。
2)外国税額控除には、3年間の繰越制度があります。
3)外国税額控除が十分に活用できない場合、「損金算入」を選ぶ手段もあります。
1. 海外進出を活性化させるために
せっかく利益を計上しても、日本・海外の両方で税金が発生すると、会社の事業意欲がそがれてしまいます。
そこで、日本の税法では「外国税額控除」という仕組みを設けて、海外で支払った税金を日本で払う税金から控除することにより二重課税を軽減することとしています。
2. 控除限度額の計算方法
外国税額控除には控除限度額があり、海外で支払った税金の全額が日本の税金から控除できるとは限りません。
控除限度額は、以下の数式で計算されます。
つまり、支払った法人税のうち、国外所得の割合のみが控除限度額として認められることとなります。
このため、国外所得の割合が低いケースでは、外国税額控除が十分に活用できないおそれがあります。
外国税額控除には、「3年」の繰越制度が認められています。そのため、外国税額控除を使う際には、今後どれくらいの国外所得が発生するかを検討・シミュレーションする必要があります。
外国税額控除が十分活用できない場合、以下で説明する「損金算入」を採用する方法があります。
3. 「外国税額控除」と「損金算入」の比較
外国税額控除には、前述したとおり「控除限度額」があり、支払った金額が十分控除できない可能性があります。
3年間の繰越は認められますが、それでも控除しきれない可能性も十分にあります。
その場合、単純に税務上「経費」として認めてもらう、という手段があります(以下、「損金算入」といいます)。
外国税額控除と損金算入には、以下のような違いがあります。
まず、根本的な違いとして、外国税額控除は「確定した日本の法人税額から直接控除」されます。
これに対して、損金算入の場合は、「まず売上から経費として控除し、残った利益から日本の法人税を計算する」という手順になります。
両者の効果を比較すると、以下のとおりです。
前提条件:現地国で支払った源泉税10、日本の法人税率30%、日本での売上金額100
上記のとおり、明らかに外国税額控除のほうが、瞬間的な節税効果は高まります。
しかし、外国税額控除の繰越が「3年間であるのに対し、損金算入の場合は繰越欠損金として現行9年(平成29年4月1日以後は10年)が認められます。
そのため、中長期的目線では、損金算入を選ぶ手段も選択肢に入ります。
4. 実務対応上の留意点
「外国税額控除」か「損金算入」かは、年度ごとに選択することが可能です。
ただし、ある年度に「損金算入」を選択した場合で、過去に発生した外国税額控除の繰越額がある場合には、その繰越額は「全額切り捨て(=失効)」となってしまいますので、注意が必要です。
外国税額控除への対応は、企業の「中長期的な海外事業計画」の視点から検討することが求められます。
注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。
※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです
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第○条 (定義《例》) この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。 |