■はじめに
御社のマネージャーは、若手メンバーと目標に至るまでの
「マイルストーン」がきちんと摺り合わせできているだろうか。
例えば、「年間受注目標」を設定している企業は多いが、
「年間受注目標」を達成するためにはそこに至るまでのプロセスのゴール、
すなわちマイルストーンの設定が必要になる。
今回のコラムでは、若手メンバーを育てる
「適切なマイルストーン設定」の方法をお伝えしようと思う。
■業績が悪いA社と業績好調のC社の違い
▽業績が悪いA社のマネージャーと若手メンバーの会話
(所長) 今年度のA君の年間受注目標は年間8棟だね。
(若手メンバーA) 去年の実績が6棟でしたから去年以上に頑張らないと
達成できませんね。
(所長) そうだね。トップセールスのBさんは毎年安定して
15棟を売っているから、君も見習うといいよ。
(若手メンバーA) そうですね。Bさんみたいになれるように頑張ります!
▽業績が良いC社のマネージャーと若手メンバーの会話
(所長) 今年度のC君のノルマは年間8棟だね。
(若手メンバーC) 去年の実績が6棟でしたから去年以上に頑張らないと
達成できませんね。
(所長) そうだね。トップセールスのDさんは毎年安定して
15棟を売っているから、君も見習うといいよ。
DさんとC君の違いはどこにあるのかな?
(若手メンバーC) やはり、Dさんは初回接客における次回アポ率が
私と比べてとても高いです。
私が10%前後なのに対して、Dさんは30%近くありますから。
(所長) それはよい気づきだね。じゃあ目標達成のためにまずは
次回アポ率20%を目指してはどうかな?
(若手メンバーC) 30%は難しいと思いますが・・・20%なら頑張れば
何とかなりそうです。
(所長) では、1つ目のマイルストーンは次回アポ率20%で決定だね。
次回アポ率20%にするためには、どうすればいいのかな?
(若手メンバーC) 着座してからの接客時間を伸ばすことではないでしょうか。
Dさんは、2人に1人は着座してから90分以上接客
していますが、私は60分にも満たないことが多いです。
着座してからお客様にきちんと価値づけ出来てこそ、
また会いたいと思って頂けるのだと思います。
(所長) では、2つ目のマイルストーンは、着座して90分以上お客様と
話す割合20%以上にしてみてはどうかな?
(若手メンバーC) わかりました!
90分間お客様と話せるように、Dさんにアドバイスを
もらいながら今月中にトークスクリプトにまとめて、
ロープレトレーニングを行います!
■A社とC社の違いは何か
皆様の会社でも、A社のような会話がなされてはいないだろうか?
住宅業界では、先輩の姿を見て学ぶということが一般的になっているが、
漠然と「●●さんみたいになる」という目標を与えるだけでは、
短期的に若手メンバーを戦力化することは難しい。
本来はC社のように、成果を上げている社員と若手メンバーの違いを
具体的に洗い出し、同じように成果を上げられるよう
適切なマイルストーン(プロセスゴール)を設定することが重要となる。
そこで、マイルストーンを設定するときの視点として『SMART』という
5つの軸をご紹介したい。
S:Specific=具体的で
M:Measureble=測定できて
A:Achievable=達成可能で
R:Reasonable=組織ミッションに沿っていて
T:Time-bound=納期・スケジュールがある
つまり、マイルストーンは「頑張る」「一生懸命やる」といった
精神論であってはいけない、ということだ。
さらに特筆すべきは、「Achievable=達成可能で」という軸が含まれている
ことであり、これは「達成可能性」がモチベーションに大きく影響すると
考えられているためだ。
人は、「頑張れば手が届きそうな目標」が与えられたときに
最もモチベーションが高まり、力を発揮すると言われている。
つまり「簡単すぎる」マイルストーンだと、
一生懸命努力をしようというモチベーションが高まらず、
逆に「どう頑張っても達成が不可能」と感じるようなマイルストーンでは、
最初から諦めてしまいかねない。
従って、「努力次第で達成できるイメージが持てる」ぐらいの目標や
マイルストーンを設定することが何より大事と言える。
若手メンバーの今の実力から、適切なマイルストーンを設定して、
達成へのモチベーションを存分に高めていくことが望ましい。
■将来の夢や目標から逆算したマイルストーン設定の重要性
ここまでは、短期的な目標を達成するための
マイルストーン設定の重要性をお伝えしてきたが、
同時に必要なことは、一人ひとりの将来の夢や目標から逆算した
マイルストーンを一緒にすり合わせておくこともまた重要である。
まずは、「レンガ積みの話」という有名なビジネス寓話を一つご紹介する
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ある人が道を歩いていると、レンガ積みをしている職人が3人いた。
それを見て、「何をしているのですか?」と1人ずつに聞くと、
それぞれ次のように答えた。
1人目は、「見てのとおり、レンガを積んでいるのさ」と。
2人目は、「レンガを積んで教会を作っているのさ」と。
3人目は、「教会を作って、皆を幸せにしたいんだ」と。
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この話に出てくる3人のレンガ積みの中で、
最もモチベーションを高く働いているのは
3人目のレンガ積みであることは疑う余地はないだろう。
1人目のレンガ積みは、仕事をする「行動」について答えている。
2人目のレンガ積みは、仕事をする「目的」について答えている。
3人目のレンガ積みは、仕事をする「意義」について答えている。
短期的なマイルストーンにとらわれ過ぎると、
目先の「行動」にばかり目がいってしまい、
自分自身が仕事をしている「目的」や「意義」を忘れがちになる。
そうなると、いつしかモチベーションは下がり、
仕事に対する主体性が失われていく。
だからこそ、今の仕事がそれぞれのメンバーにとって
どのようにキャリアアップに繋がっているのか、
将来の目標に対してどう近づいていくのかを
明確にしておくことが必要なのだ。
従って、マネージャーは若手メンバーと定期的に
仕事をする「目的」や「意義」について確認をする機会を持ち、
中長期的なキャリアプランを一緒に描くこともまた、
重要な役割と言える。
■中長期的なキャリアプランを描く仕組み『CDP』
LiB社では、中長期的なキャリアプランを摺り合わせる仕組みとして
『CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)』を採用している。
『CDP』とは、若手メンバーに「自身が大切にしている価値観」や
「将来の目標・夢」を聞いた上で、そのマイルストーンとして
「1年後、3年後にありたい姿」を描いていくことと、
その人が持つ強みや弱みを知り、組織の中で
どのような活躍・貢献ができるかを一緒に考えるプログラムだ。
マネージャーにとっては、部下への理解が深まり、
「将来の目標や夢」に繋がるような業務を与えるきっかけにもなる。
部下にとっては、自分が今担っている仕事が、
「将来の目標や夢」の達成とどのように繋がっているのか、
自分の仕事の「意義」を確認する機会となる。
当然「意義」が感じられれば、よりモチベーション高く
仕事と向き合えるようになる。
ぜひ皆さまの会社でも、「短期的な目標」と「将来の夢」それぞれの
マイルストーンについて、若手メンバーと考える機会を作っていただきたい。