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アフターサービスをアフタービジネスに変えて不透明な時代を生き抜く ーvol.1ー

クレーム対応に終始しがちなアフターサービスが実は新たな事業を生み出します。
その理由と事業化に向けた戦略を解説します。


■アフターサービスが新たな事業の軸になる

 アフターサービスの重要性が増しています。
 その背景としては、2020年4月の民法改正によって瑕疵担保責任が契約不適合に変更となることや、19年の消費税増税の影響といった外部要因が挙げられるでしょう。
 民法改正に関しては、従来は契約内容と販売した物件との間で何かしらの相違や不都合があったときに、販売側が修理や補修を行うことで対応できました。しかし、改正後は減額請求が可能になります。契約に至るまでの打ち合わせ内容を記録していない場合、損害賠償請求を受ける可能性もあります(図1)。

 

 これらは全て販売後に起きる対応で、アフターサービスに直結します。
 消費税増税は消費力の低下につながり、新築販売のみに頼る事業モデルを危うくします。
 増税によって消費が冷え込むことは過去の歴史からもわかります。最初に消費税が増税されたときは、増税前の駆け込み需要が増税後の反動減を上回りました。差し引きで見ると増税しても消費に悪影響は出なかったということです。しかし、それは当時がバブル経済だったためです。3%から5%に上がったときは、駆け込み需要による増加が1.1%、反動減が2.6%で、結果としてマイナスになりました。5%から8%に上がったときも同様に、増加が3.9%、反動減が7.3%でマイナスになっています。 
 8%から10%に上がった今回の増税も、すでにさまざまな業界で売上が低下しています。住宅不動産業界においても、売上が3~4割落ち込んでいる大手メーカーもあります。人口減少などのマクロ要因も含めれば、新築一点張りの事業モデルは今後も厳しくなっていくことが予想できます。
 業界内の企業は新築事業に代わる新たな軸足を持つ必要があり、その点から見てもやはりアフターサービスが重要になっていくのです。

 

■思い込みを排除して考える

 「アフターサービスはもうからない」と考える業界関係者はたくさんいます。
 「クレーム対応が嫌だからやりたくない」「コストがかかるからやりたくない」と考える人も多いことでしょう。
 まずはそのような思い込みをいったん脇に置くことが重要です。
 住宅産業を取り巻く今の不透明な時代を生き抜いていくために、ポラスグループの中内代表は「批判的思考(クリティカルシンキング)が必要」と語っています。
 クリティカルシンキングは、思い込みや決めつけを排除して「本当にそうなのか」「根拠は何か」と疑問を持つ思考のことです。
 アフターサービスについても、本当にもうからないのか、根拠は何かといった視点で見ていくと、今まで見えていなかった新しい価値が見えてきます。
 例えば、アフターサービスの充実は、新築住宅を販売したOB層を囲み込むことにつながり、将来的なリフォーム需要の獲得につながります。
 リフォーム産業新聞を見ると、大手ハウスメーカーが新築事業で苦戦する一方、各社のリフォーム事業の売上は対前年比で増収となっています(図2)。

 

 

 

 

 

 

 

 また、リフォーム事業の業績が良い企業ほどOB層からの受注率が高く、ハウスメーカーは常に新築物件を売っていますので、OB層は着実に増えていきます。この層を厚くするとともに、アフターサービスによって囲い込んでいけば、一般住宅向けの新規開拓の営業をしなくてもリフォームが受注できるようになるでしょう。OBの需要をストックし、循環させることによって、新築のみに頼らない安定的な事業モデルを作っていくことができるのです。
 リフォーム事業が伸びている企業を見ると、新築の営業スタッフ数の半分くらいの数をアフターサービス関連に配置している企業もあります。
 中堅、中小の企業は人員不足や採用難の問題などもあり、アフターサービスの担当者がいなかったり、誰かが兼務しているケースが多いかもしれません。しかし、大手の例を踏まえるなら、「アフターサービスはもうからない」と考えて担当者を置かないと判断することは、新たな需要獲得のチャンスを逃す誤った判断といえるかもしれません。

 

■成長モデルを見直すときがきた

 大手メーカーはアフターサービスに力を入れ、OB層向けに定期点検を行い、OBの顧客情報を管理し、アフターサービス関連の営業スタッフ数も増やしています。その後を追って各エリアのパワービルダーもアフターサービスに目を向けるようになっています。
 ただし、この取り組みは直近5年から10年くらいの間にスタートしたもので、それ以前はアフターサービスはおざなりにされていました。
 なぜかというと、かつての事業環境の中では、アフターサービスを後回しにしても、住宅メーカーやビルダーが企業として成長していくことができたからです。
 住宅メーカーやビルダーの成長モデルは、認知度向上、拠点拡大、価格競争の三つのステップで見ることができます。
 まずは認知です。企業の認知度を高めることで、販促費負担などが減り、効率的に販売・集客できるようになります。
 次に、拠点を広げ、人員を増やします。ただし、営業スキルが低くても売れるようにする必要がありますので、商品を単純化します。
 三つ目のステップとして、エリア内の競合他社を排除するため価格を下げます。一定の品質がある住宅が安価に買えるという良い口コミを広げるために、再び認知度向上のステップに戻ります。
 このサイクルを回していくことにより、住宅は売れるようになり企業は成長できました。成長性を重視するほど、認知度向上や拠点や人を増やすことに力が入り、アフターサービスや商品の改良といったことが後回しになってきたのです。
 しかし、現在は事業環境が変わっています。情報の透明性が高いとき代では、いくら認知度を高めても「購入後のフォローがない」「品質がいまいち」といった情報が即座に広がり、共有されます。
 また、認知、拡大、価格競争のサイクルを回していくためにはたくさん売る必要があり、そのために営業スタッフが「これがすごい」「ここが素晴らしい」などとオーバートークすることもありました。しかし今後は前述した民法改正によって営業の説明責任が厳しく問われるようになります。契約不適合と判断されることもあります。
 このようなリスクを避けるためには、アフターサービスを通じて顧客を丁寧にフォローしていくことが求められます。
 アフターサービスは後回しにされ、アフターサービスの取り組みも先延ばしになっていました。しかし、機は熟しました。時代はすでに取り組むかどうかではなく、取り組まざるを得ない分野になっているのです。

 

※本稿は、2020年1月に開催した「アフタービジネス構築セミナー」にて登壇いただいた株式会社住宅アカデメイア、中井喜之氏の講演内容と、同セミナーで登壇した当社コンサルタントの講演内容を編集したものです。

 

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