戸建分譲の集客戦略──データで読み解く住宅購入者の行動変容と最新マーケティングトレンド
■市況概況:新築着工数の推移と分譲市場の構造変化
全国の新築着工数の推移を見ると、戸建分譲の着工数は2021年以降、ほぼ横ばいの状態が続いています。エリアによっては着工数が前年比80%を下回るなど、厳しい状況に直面している地域も少なくありません。
ここ数年、戸建分譲業界では地価上昇や資材価格の高騰が続き、原価が上昇しています。本来であれば販売価格に転嫁したいところですが、インフレの影響により住宅購入需要そのものが縮小傾向にあるため、価格転嫁が難しい状況です。その結果、販売不振が続き、在庫増加・回転率悪化といった課題に直面しています。
さらに、分譲市場では寡占化が進行しており、「土地仕入れ力の差」がそのまま「販売価格の差」となって表れる構造になっています。このような市場環境下では、企業ごとに異なる“付加価値創出=購買魅力度の最大化”が今まで以上に求められています。
■購入者500名に聞いた!購買行動の最新トレンド調査
そこで今回は、直近2年以内に戸建分譲住宅を購入した全国の男女500名(20〜49歳)を対象に、住宅購入時の情報収集方法、見学棟数、購入タイミング、相談先などについて調査を実施しました。
全体データだけでなく、男女別の行動傾向も分析しており、旧来モデルからの脱却に向けたヒントとしてご活用いただけます。
【調査概要】
調査方法: インターネット調査
調査対象: 戸建分譲住宅を過去2年以内に購入した全国の男女500名(20〜49歳)
調査期間: 2024年6月
■情報収集媒体:Webとリアルの二極化傾向
Q. 情報収集に活用した媒体は?(複数回答可)
まず、住宅購入者がどの媒体を使って情報収集・検討を行ったのかを調査しました。Web媒体だけでなく、現地看板やポスティングなどリアル媒体の影響も分析しています。また、購入価格帯による媒体選好の違いも確認しました。
主な結果:
最も利用されたのは「住宅会社の自社HP」。次いで「SUUMO」が僅差で続きます。
Web媒体が主流となる中、ポスティングチラシや現地看板などのリアル媒体も一定の効果を維持しています。
特にポスティングチラシはInstagramと同等の活用率。Web広告に偏重している企業は、媒体戦略の再考が必要です。
■購入価格:平均帯は3,000万円~4,000万円、商圏成熟度で大きな差
Q. 購入した住宅の価格帯は?
本調査では、商圏を以下の5つのパターンに区分し、価格帯との相関を分析しました。
・群雄割拠エリア
・分譲有力大名台頭エリア
・注文有力大名確立エリア
・分譲有力大名確立エリア
・分譲寡占エリア
主な結果:
最多価格帯は3,000万円~4,000万円。
商圏の成熟度によって価格水準に大きな差が見られました。
特に「分譲有力大名確立期」の沖縄・滋賀・山口・佐賀・奈良などでは、大手ビルダーの在庫処分傾向が顕著です。
■見学棟数:即決率は約25%、営業アプローチの再構築が鍵
Q. 見学した棟数は何棟?
全体の25.3%が「1棟だけ見て即決」という結果になりました。これは近隣在住で土地勘のある顧客に多く見られる傾向です。
また、ネット上の情報取得能力の向上により、複数現場を比較せずに購入を決断するケースが増加しています。
建物完成タイミング別の傾向:
即決率が高いのは、①「販売開始直後(未完成物件)」と⑤「完成から1年以上経過した新古物件」。
一方で、④「完成から100日以上経過」の物件は、見学数が多くなる傾向。
営業提案のトークや資料は、物件の完成ステージに応じた戦略が不可欠です。
購入タイミング:販売開始直後が最多
Q. 購入を決断したタイミングは?
以下4つの段階で購入決定のタイミングを調査しました:
販売開始すぐ(建物未完成)
建物完成から100日以内
完成から100日以上経過
完成から1年以上経過(新古物件)
主な結果:
最も多かったのは「販売開始すぐ」で36.2%。
長期在庫化(100日以上)物件の購入比率は約33%。
△3,001~4,000万円帯で未完成状態の購入比率が最も高い(42.9%)。
△商圏別では、分譲寡占エリアの未完成物件購入率が43.2%と最も高い結果に。
これらの結果から、販売初期のスタートダッシュ戦略が鍵を握ることが分かります。
デジタルツールや完成予想パースなどの活用で、未完成物件の魅力をいかに伝えられるかが重要です。
■購入相談先:住宅メーカーと自社販売が主流
Q. 購入時に相談した先は?
72%が住宅メーカーに相談
44%が不動産仲介会社に相談
両方に相談した割合は約16%
価格帯別の傾向:
4,000万円以上の高価格帯では住宅メーカー相談率が60%以上。
販売タイミング別:
早期(販売開始~完成100日以内)に購入した層では住宅メーカー相談率が高い。
この結果からも、早期販売戦略と自社販売体制の強化が重要であることが読み取れます。
仲介併用の場合は、「面談同席」「提案資料」「営業トークの強化」が即決率向上の鍵となります。
【まとめ】
・広告媒体は「自社HP」「SUUMO」が主流。SNSでは「Instagram」が最多。
・リアル媒体ではポスティングチラシが健在。Web偏重の戦略は見直しが必要です。
・1棟のみの見学で即決する顧客は25.3%と高水準。
・未完成状態での購入は36.2%にのぼり、販売初期の資料やツール整備が必須。
・販売チャネルとしては「住宅メーカー:仲介=7:3」が理想的な構成。
次回は、今回の調査をさらに深掘りし、男女別の購買行動の違いや重視ポイント、満足度の傾向などをご紹介します。
<住宅不動産フォーラム2025盛夏のご案内>
リブ・コンサルティングでは、半年に一回、住宅不動産業界の有識者を集めた大規模なフォーラムを開催しております。
参加無料・オンラインでご視聴いただけますので、ぜひこの機会にお申込みください。
ご参加のお申込みはこちら