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フランチャイズビジネスの実態と課題 ーvol.3ー

今回は、いかに加盟店に長く継続的にフランチャイズに加盟しつづけてもらうか、について考えてみることとする。

フランチャイズシステムは、加盟店にとって、自社にないノウハウやサービスを手軽に取り入れることのできる仕組みとして活用されている。しかし、そうして得たノウハウは必ずしも持続可能なものとは限らない。それは、本部と加盟店、双方に要因がある。

例えば本部側の要因としてありがちなのは、本部が提供するノウハウやサービスが進化せず、やがて陳腐化してしまうケースだ。加盟当初は価値があったものの、徐々に住宅購買者のニーズにそぐわないものとなってしまい、加盟し続ける価値を失ってしまうと、加盟店は退会する。

対して加盟店側の要因としては、本部から得たノウハウをもとに自社でより優れた商品や工法、集客、営業のノウハウを開発することができれば、高いロイヤリティを払い続ける必要はなくなる。したがってこのケースも、加盟店の退会につながる。

ではどのようなFCであれば、加盟店は継続して活動してくれるのだろうか。
あるFCの失敗ケースをもとに大切なポイントを紐解いていきたい。


■CASE3|簡単に模倣できてしまうノウハウで、3年目に加盟店が半減したフランチャイズチェーン

昨今では、注文住宅より営業効率がよく、後ろ工程の手間も少ないため事業回転率が高まることから、企画住宅商品を販売する住宅会社は少なくない。K社もいち早く企画住宅を開発し、3つのコンセプト企画商品と、それぞれのプランを数パターン作成した。またできるだけコストを抑えるために、仕様も単一メーカーのもので標準化して展開することにした。コストを積算したところ、おおよそ原価は1,000万円と算出された。そこで、粗利率を35%見込み、販売価格を1,350万円で売り出すことになった。

分かりやすいコンセプトと魅力的なプランがお客様から評価を得て、初年度から目標を上回る棟数を販売することができた。これは良い商品ができた、と自信を募らせた社長は、同業の友人経営者の勧めもあって、この企画住宅をFC展開することとした。工法などの特異性もなく部材も本部から供給はしない、あくまでも商品企画と集客・営業ノウハウの提供パッケージであるため、加盟金は低く抑えて100万円、月々のロイヤリティは共同広告費として10万円と設定した。また、モデルハウス建設を条件としなかったこともあり、加盟ハードルが低いことが功を奏して、1年ほどの間に10社以上の加盟につながった。

しかし、加盟契約の初期契約期間である2年を過ぎたタイミングで、加盟店の退会が相次ぐことになった。理由を詳しく聞いてみると、多くの加盟店が自社で似たような企画住宅を開発し、そちらを販売することにした、といった事情があることが分かった。K社の社長はノウハウを真似されたと憤りを感じたが、とはいえ特許や商標などの縛りがあるわけでなく、全く同じものではない以上、加盟店の商品開発をやめさせる権利を持ち合わせていないため、諦めざるを得なかった。そうして徐々に加盟店の数は減り、K社はFCを維持していくことを断念することとなった。


■加盟店との契約を継続的にするためには「模倣困難性」と「縛り」が不可欠

フランチャイズシステムは、ノウハウの売り切りパッケージとはことなり、加盟し続けることのメリットがない限り、継続性は担保できない。そのため、加盟店が簡単には真似できない「模倣困難性」や、退会してしまうと大きなデメリットにつながる「縛り」が不可欠なのだ。

「模倣困難性」の代表例が「特許」である。本部が独自に開発した特許工法やビジネスモデル特許がこれに該当する。加盟店は、加盟することでこうした特許ノウハウを活用する権利が与えられるため、加盟のメリットが感じやすく、また特許法により模倣も困難なため、そのノウハウを使い続けたい場合は、必然的に加盟し続けるしかなくなる。

特許とは異なる形の模倣困難性の例は、そのFCの「カンバン」に高いブランド力を有しているケースだろう。既に全国的に知名度があるような商品ブランドの場合、いくら似たような商品を自社で開発したとしても、同様の集客力を持てるとは限らない。住宅購買者はブランドそのものに信頼を寄せ、安心感を感じているため、商品に興味を持つ。そうした全国規模のブランド力は、1社単独ではとても形成できないものだ。

一方、「縛り」がある代表的なケースは、本部が集客ルートを握っている場合である。例えば、本部が運営するブランドサイトが高い集客力を有しており、加盟店はそのサイトを通じて毎月一定数の新規リードを得ることができる。こうしたサイト集客を核としたFCの場合、退会すると当然ながら集客ルートを失うことになるので、簡単には退会できなくなる。不動産系のフランチャイズの多くは、このパターンと言えるだろう。

あるいは、本部に部材を安く仕入れられる購買力があり、加盟店は本部を通してそれらの部材を仕入れることができるため、建築コストを低く抑えることができるケースもある。ネットワークビジネスは規模の経済効果が得られやすいため、共同購買で仕入れコストを下げることができれば、加盟し続けるメリットにつながる。また、退会すると仕入れコストが上がってしまうため、退会そのものが大きなデメリットとなってしまう。

このように、FCを展開する場合は最初の段階で、何が「模倣困難性」もしくは「縛り」になり得るか、そしてそれらがしっかりとビジネスモデルに組み込まれているかを考えておく必要がある。もし既に展開されているFCで、これらが十分ではないと思われる場合には、あとからでも付加していくことが望ましい。例えば、革新的な販売システムを構築しビジネスモデルの特許やグッドデザイン賞を獲得するのも一つである。もしくは、既に加盟店が数十社以上のネットワークになっているのであれば、そのネットワーク力を生かし、規模の経済性を働かせて共同購買・共同仕入れのような仕組みでコスト競争力を高めたり、加盟店が必要とする新たなサービスを次々と展開するなど、本部が研究開発力を発揮することができれば、加盟店はそのネットワークに加盟し続けるメリットが生じる。裏を返せば、そのような進化なくして、FCを長く継続的に発展させることはできないだろう。

フランチャイズビジネスを一過性のものとせず、常に進化し続けるネットワークとするための努力を、ぜひ続けていただきたい。

 

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