新型コロナウイルスの影響を受けて、市場を取り巻く環境が大きく変わりました。
何が変わり、どんな影響があり、これから何が求められるのかを考えます。
■消費者の購買力は戦後最低のレベルまで低下する
新型コロナウイルスが広がっていく中で、住宅業界の集客はどのように対応していくのがよいのでしょうか。
先に結論を言うなら、2カ月以上前に立てた戦略を、全て白紙に戻す意思決定ができるかが重要です。
なぜなら、新型コロナウイルスがもたらした変化は非常に大きく、以前とでは市場を取り巻く環境が全く違うからです。
住宅の工事現場を例にすると、緊急事態宣言が発令されたばかりの頃は、現場は3密を満たさないという判断から、工事を継続するケースがありました。しかし、緊急事態宣言の範囲が全国に拡大されるのとほぼ同じタイミングで、清水建設が全国500カ所の現場を止め、大和ハウスも全ての現場作業をストップしています。
また、集客の場として機能してきた住宅展示場は3密を満たします。そのため、地域によって多少の差はありますが、緊急事態宣言の発令後はほぼ全地域で休業要請の対象となっています。
結果、住宅展示場でのイベントなどはできなくなり、展示場での集客やモデルハウス案内を組み込む従来型のマーケティング&セールス戦略が機能しなくなったのです。
一方の消費者側では、企業の自粛によって世帯所得の減少が起き始めています。
年代別で世帯所得の減少度合いを聞いた調査によると、「とても減った」「やや減った」と答えている割合が多いのは、男女ともに30代です(図1)。
この層は、言わずもがな住宅業界にとって重要な層で、出産や子育てをきっかけに住宅購入を考える世代であり、一次取得者層でもあります。
また、外出自粛と購買力の低下により、半年後の消費動向の目安となる消費者態度指数も大きく落ち込んでいます。
新型コロナウイルスが深刻化し始めた2020年3月の段階で、消費者態度指数は30.9まで落ち込みました。
直近で大きく落ち込んだのは東日本大震災が発生した2011年(33.2)や、消費税増税が決まった2019年(35.9)です。すでにこれらの数値を割り込む水準になり、戦後最大の落ち込みだったリーマンショック時(27.5)にも近づいています(図2)。
さらに、緊急事態宣言の発令は4月ですので、その影響は前述した30.9という数字には反映されていません。
つまり、指数はさらに下がる可能性が大きく、新型コロナウイルスによって消費はおそらく戦後最低の水準まで落ちると予想できるのです。
※本稿は、2020年4月に開催した「地域密着ビルダー成長戦略フォーラム」で登壇した当社コンサルタントの講演内容を編集したものです。
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