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勝ち残りのための新・集客戦略~「砂一の時代」×「透明性の時代」における新たな集客戦略の3ポイント〜(前編)

■ 「砂一の時代」×「透明性の時代」における新たな集客戦略の三つのポイント

成長されている住宅会社様ほど、今後の集客戦略について先手を打たれています。なぜなら、「現時点での集客戦略の意思決定が、1年後、2年後の集客(契約)をつくる」と考えられているからです。未来を見据えて今から新しい集客構造をつくることが、将来、自社が勝ち残っているかを決めるといっても過言ではありません。

今後の集客戦略を考える際は、「砂一の時代」と「透明性の時代」に注目する必要があります。

「砂一の時代」とは、情報量の爆発的な増加により、顧客へ情報が届かない時代ということです。1年間で、世界中の砂浜の砂の数と同じくらいの情報が流れているとされ、自社が発信している情報は、受け手にとってたった「一粒の砂」のようなものといわれています。つまり、ITの普及により、多くの人に発信しやすくなった一方で、自社の情報が届きにくくなっているのです。

二つ目の「透明性の時代」とは、インターネット検索が容易になっているため、企業の実態が見透かされるということです。

自社のHPやパンフレット上に、張りぼてで良いことを記載しても、口コミサイトの書き込みなどによって、顧客に実態を見抜かれてしまいます。

昨今のような、「砂一の時代」や「透明性の時代」で、どのように生き残っていくかを考える際には、以下の三つのポイントを押さえられるかが、鍵になります。

【ポイント①】
最適な情報を、最適なタイミングで、届くメディアを選択する。
・・・ ITを活用したランディングページやマーケティングオートメーションなど

【ポイント②】
単一企業の限界を悟り、信頼できるパートナーと成果を出す。
・・・ 他社とのコラボレーションなど

【ポイント③】
最も信頼形成の高い情報の広がりを設計する。
・・・ 口コミや紹介営業活動など

以降で、三つのポイントの詳細についてお伝えします。

ポイント① WEB集客戦略

- なぜ、『砂一の時代』にWEBが有効なのか -

住宅業界では、長きにわたり新聞折り込みチラシがマーケティング媒体の中心でした。近年の新聞折り込みチラシの反響率低下により、新たなマーケティング媒体が模索されています。新聞折り込みチラシの反響率低下は、「若者の新聞離れ」による一次取得者へのリーチ率の低下が原因だともいわれていますが、『砂一の時代』の影響が大きいことも見逃せません。

 

一方通行かつマスを対象とした新聞折り込みチラシは、情報があふれた『砂一の時代』には信頼度が薄いのです。『砂一の時代』には、顧客ごとに、欲しい情報を欲しいタイミングで届けることのできるマーケティング媒体が求められています。

 

Amazonなどのネットショップを利用されたことはありますか? 商品をクリックすると、あなたにオススメの商品としていくつかの商品が自動的に表示されます。これは、膨大なデータから特定の商品に関心を持った人が追加で購入しそうなものを表示する仕組みです。ついつい気になって購入してしまったという方もいるのではないでしょうか。

 

こうしたAmazonのレコメンド機能などに代表されるように、WEB媒体は「顧客ごとに、欲しい情報を欲しいタイミングで届けることができる」ことから、『砂一の時代』に有効な集客媒体の一つと見なされています。ここからは、住宅会社様で集客成果を上げているWEB活用事例をお伝えします。

- 成果を上げている住宅会社のWEB戦略とは? -

WEBが大事といわれて、去年500万円かけてHPを作ったけど、反響がない」「SEMに毎月10万円以上かけているが、資料請求がたまにあるだけ」。多くの住宅会社様が、すでにWEB媒体への投資をしているにもかかわらず、投資金額に見合った成果を上げられていないのが現状です。

「集客の成果はないが、WEBによってブランドが上がる成果が出ているはず」。最近の顧客は自社に訪問するまでに必ずHPを見てから来場しますので、しっかりしたHPを作ることは重要です。しかし、現在『集客成果』を上げている住宅会社様は、HPに加えて集客用のランディングページ(以下「LP」)を持っています。

LPとは、最近、楽天市場の売れ筋商品やWEB広告などに利用されているWEB広告ページです。広告をクリックすると縦に長いページを見たことがある方も多いのではないでしょうか。LP1枚のページで、関心を引き、興味を持っていただき、資料請求や予約の必要性を感じていただき、予約や資料請求を促します。

HPは自社を知っている方をターゲットに、自社をさらに知ってもらうことをゴールにしている一方で、LPは自社を知らない方をターゲットに、自社に来場してもらうことをゴールに構成されています。従って、コンバージョン率(ページを見た方が来場予約か資料請求をする確率)を比較すると、HP3,000人に1人程度であるのに対し、LP100人に1人程度と、LPは、HPと比べて30倍以上の非常に強い集客力を持っています。

LPがHPと比較して集客力が強い理由はいくつもありますが、一例を挙げると、SEM※の仕組みとの連動で、「顧客ごとに、欲しい情報を届けることができる」ことが挙げられます。SEMで重要なのは「最適なキーワード」と「最適なテーマ」をいかに見つけていくかが重要になってきます。
SEMとは、WEB上に広告掲載をする手法の一種。

インターネットで検索をする人は、自身の興味関心事に合わせたキーワードで住宅会社の情報を探します。自身の興味関心事と合ったページが見つかれば、そのページにとどまり、情報を精査した上で、行動(来場予約や資料請求)を起こしますが、自身の興味関心事と合っていない場合は、たったの3秒で判断し、立ち去ってしまいます。砂一の時代では、分かりやすく相手の関心のある情報を提供することが重要になるのです。

LPとSEMを連動させることにより、下記に示したように「○○市 工務店」と検索した方には、自社の情報を、「○○市 見学会」と検索した方には、直近の見学会の情報を、「○○市 資金」と検索した方には、資金セミナーの情報を表示します。検索キーワードごとにお客様の興味関心事に合った情報を提供することにより、来場予約や資料請求の確率を高めるのです。

- 折り込みチラシからWEB集客に完全シフトし、「広告費を圧縮しつつ業績を伸ばしたA社」 -

全地域の人に対して画一的な情報を伝える新聞折り込みチラシとは異なり、お客様ごとに、欲しい情報を欲しいタイミングで届けることが可能になっています。A社は固定の展示場を持たず、月に1回開催する完成見学会の折り込みチラシによる集客で、毎年年間20棟ほどの安定受注を積み重ねてきました。

しかしながら、消費税8%への増税後、折り込みチラシの反響が極端に落ち込みました。ポスティングなども試してみたものの集客数が戻ることはなく、年間の受注棟数10棟と大きく受注を落としてしまいました。「このまま集客がなければ、倒産してしまう!」とマーケティング戦略を見直し、今まで力を入れていなかったWEB集客をマーケティングの柱とすることを決意しました。

地域のお客様が欲しい情報ごとに、自社の強みを検討した上で伝えるべき情報を整理し、社長自ら毎月一つのペースでLPを増やしつづけた結果、地域のお客様の志向性を熟知することができました。

今では、折り込みチラシを完全に廃止したにもかかわらず、毎月20組以上の安定集客を達成しています。1組集客するために掛かる広告費を1万円以下に半減させることもできました。結果として、WEB集客への取り組み開始から2年で、受注棟数30棟と大きな成長を遂げました。

■ ポイント② コラボレーション集客戦略

ここまで、砂一×透明性の時代における、新たな集客戦略に関して述べてきましたが、今では違った角度から、この時代に対応する戦略が進められようとしています。それは、個社・個人の力に頼った戦略ではなく、外部のリソースを活用し、外部と協働する戦略であり、コラボレーション戦略と呼ばれています。今後、このコラボレーション戦略で成果を生み出す企業が多く出てくると考えられます。

- なぜコラボレーション戦略なのか -

これまで述べたように、砂一時代における集客は、ターゲットへ情報を届けることが難しい状態にならざるを得ません。情報が氾濫しているため、目につきにくくなるからです。その中で、自社を認知してもらい、接点を持つことができる方法がコラボレーション戦略です。

例えば、他業界の事例でいえば、TSUTAYAブランドを展開するカルチャー・コンビニエンス・クラブ株式会社は、スターバックス(カフェ)とコラボレーションを行っています。それによって、購入前の本でもコーヒー片手に読むことができるBOOKCAFÉスタイルというシーンを実現しました。

このコラボレーションは、フランチャイズモデルです。したがって、カフェの飲食代もTSUTAYAの収益になっており、スターバックス側はフランチャイズ料を手に入れることができます。また「本を読める」という価値により集客数が増え、書籍販売数も飲料販売額もどちらも伸ばすことができます。さらに、ブランディングの側面においても、TSUTAYAの「認知度」「好印象度」ともに上昇したと見ることができます。

上記のように、自社単一ではできなかったことであっても、コラボレーションによってできることが増えます。もちろん、どの企業とコラボレーションするかが大事なのはいうまでもないことですが、それによって得られるものはとても大きいのです。

- ②コラボレーション戦略の事例① 地域ビルダーの集合力を生み出すA社 -

今、全国で増えている新集客戦略の中に、「地域ビルダーによる移動式総合展示場」が挙げられます。ハウスメーカーを中心とした総合展示場は、全国津々浦々に存在し、今でも影響力の大きい集客装置として存在しています。一方で、総合展示場の出店コストは高く、地域ビルダーにとって気軽に出店できる場所ではないということがいえます。

 

その結果、個別企業は、単独展示場(モデルハウス)あるいは完成見学会へ集客することが定番となっており、個社のブランド力・集客コストが集客数の上限を決めていました。

 

地域ビルダーの力を集結させることによって、同じコストで、広告投下量を増加させ、住宅会社様を一度に見られる利便性をつくり出すことができました。初回イベントでは1000組以上を集める集客装置になっているところも存在します。

一方で、このコラボレーションの課題としては、総合展示場での販売手法を身につけている企業が少ないことが挙げられます。単独展示場や完成見学会では、自社単一のイベントに来場されるため、自社へのお気に入り度が一定以上を超えているお客様が多いのが特徴です。

反対に、総合展示場においては、数ある住宅会社様の一つにすぎず、自社に対するお気に入り度も高くなければ優位性もありません。

その状態の中では、競合との戦いを制する戦い方が必要ですが、販売手法の仕組みと人財育成体制を備えている企業はまだ少なく、集客はできても、決定率を高められないというジレンマを抱えてしまうことになります。こうした改善を、出店企業WIN-WINという基本原則を守りながら、進めていく必要があります。

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