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中長期管理客の追客・育客のポイント(後編)

■ 中長期客掘り起こし成功事例

- A社 -
毎月1度のイベントを実施し、熱の低いお客様が多いと思われているイベント参加者からの受注歩留まり10%を達成している

食べ物屋台や輪投げなどの一般的なお祭りを毎月開催しているA社ですが、他社とは異なる工夫が随所に盛り込まれています。例えば、会場内でスタンプラリーを実施し、全てのスタンプを集めるとプレゼントがもらえる企画を実施しています。ここまでは他社と同じですがポイントはプレゼントの受け渡し場所をモデルハウス内としていることです。その結果、ほとんどの子連れのお客様はモデルハウス内に入ります。

モデルハウス内では、OB様の住宅購入前の悩みと解決策を書いたボードや、住宅購入検討者の悩みなどが展示されており、特に、お母様が「まずは話を聞いてみようかな?」という気持ちになる仕掛けがしてあります。興味をお持ちになっていただいたお客様に対しては、営業マンが直接お声がけし、次週に予定されているセミナーに誘導する流れが徹底されています。

A社の成功ポイント>
①すべてのイベント参加者が必ずモデルハウスに立ち寄る仕掛けを用意したこと
②住宅購入に興味を持ったお客様に対して、次週に熱感に合わせたセミナーを用意しているセールスステップを持っていたこと

- B社 -
会うことが難しいと言われているホームページの資料請求から、来店誘致率50%を達成している

ホームページからの資料請求のお客様は、そもそも営業マンに会うことに抵抗があるお客様であるケースが増えました。以前は、資料請求があった当日に訪問することが「親切」と思われていた時代もありましたが、現在は、訪問をすると「会いたくなかったから資料請求したのに」などと訪問がマイナスになることがほとんどのようです。

B社では、毎週1回のペースで「買い時」に関するお役立ち情報誌を1ヶ月にわたり送付し、到着翌日に到着確認と内容の説明の為に5分ほどの電話をするようにしてます。4回目の送付物は、ある家族が今住宅を買うと10年後に買うよりも1000万円もお得になるという内容になっており、具体的に自身に当てはめるとどうなるか?と関心を持っていただいた段階で、「まずは、自身の場合はどれくらい得をするのか話だけでも」と来店を促す流れとなっています。

<B社の成功ポイント>
①3回の情報誌送付では情報提供に徹し、お客様の信頼獲得に努めたこと
②4回目の情報誌の内容に来場を促す仕掛けを入れることにより、スムーズなアポイントにつなげたこと

- C社 -
熱の低いお客様をセミナーに誘致し、セミナー参加からの受注歩留まり30%を達成している

C社では、毎月1テーマずつ、全4テーマのセミナーを順番に開催しています。各セミナーの最後には、次のテーマのセミナーを聞きたくなるような仕掛けがされており、毎月セミナーを聞きに来るお客様がほとんどです。4つのセミナーを全て聞くことで、住宅購入の魅力を理解し、自社が検討の土台に乗るように設計されています。

また、毎回のセミナー後半で営業マンとワークを実施することにより、営業マンがお客様のご要望を把握している仕組みとなっており、4つのセミナーが終わった段階では、提案のための準備が整っている状況になっています。

<C社の成功ポイント>
①連続性のあるセミナーを用意し、アポが連鎖する仕組みをつくったこと
4つのセミナーを受講することにより自然と熱が上がり、提案できる仕組みをつくったこと

■ 「中長期客」の掘り起こしに成功している企業の共通点とは?

成功事例に出てきた企業様に共通しているのは、

  1. 顧客の熱感を捉えたイベントを用意していること
  2. 各イベントから上位の熱感のイベントにランクアップする仕掛け(セールスステップ)を用意していること

2つです。

この2つの共通点を詳しく見ていきましょう。

①顧客の熱感を捉えたイベントを用意していること

住宅会社にいらっしゃるお客様は下記のように様々な熱感を持っています。中長期客の熱を高めていくためには、熱感に合わせたイベントを用意しなければ熱感を上げることはできません。

お客様に1人ひとりの熱感や趣向に合わせて個別にアプローチ手法を変える『One to Oneマーケティング』こそが、中長期客を掘り起こす、またはお客様を中長期客化させないために必須です。

「ちょっといってみようかな?」と考えている方用の集客イベントから、「今、建てなきゃ!」と考えている方用のクロージングイベントまでを月間(または数ヶ月間)のマーケティングカレンダー中に順番に並べることにより、取りこぼすことなく、順番に熱を高めていくことが可能となるのです。

②各イベントから上位の熱感のイベントにランクアップする仕掛け(セールスステップ)を用意していること

①でお客様の熱意に合わせた集客施策を用意したとしても、そのつなぎ目となる次回アポの仕掛けがなければランクアップする事はありません。

このように、お客様各個人の熱感に合わせてランクアップの仕掛けをつくり、次のイベントに誘導する仕組みをつくることで中長期客の熱感を高め受注につなげることができるのです。

例えば、小さな子供をお持ちのお母さんに対しては、お客様が自ら「次のイベントに参加したい!」と思う仕掛けを用意することが重要となります。例えば、「お片付けセミナー」で収納のテクニックをお伝えするだけでは、満足はしていただけますが、住宅購入検討には結びつきません。収納のテクニックを伝えることで、お客様に対して「収納の先生」のポジションを取った上で、「先生」という中立的な立場から将来起こるであろう問題指摘として

◎ 子供が生まれると捨てられない物が増えるため、収納率10%以下の賃貸では満足した暮らしを手に入れるのは難しい
子供の事故ランキングの2位が「転倒」、3位が「誤飲」であるが、原因の一つが収納不足である。特に、賃貸では「適材適所」の収納は難しいため常に片付いた状 態を保つのは難しい

などをお伝えすることにより、収納の根本的な解決策に一つとして家作りを考えていただけるようになります。そこに①でお伝えしたように、「お片付けセミナー」よりも少し、具体的に家作りを考えている方向けの「収納を考えた家作りセミナー」を次週に企画しておくことにより、スムーズに「収納を考えた家作りセミナー」へランクアップしていただけるのです。

ここまで、「中長期客」の掘り起こしに成功している企業の共通点として、

①顧客の熱感を捉えたイベントを用意していること
②各イベントから上位の熱感のイベントにランクアップする仕掛け(セールスステップ)を用意していること

2つを上げさせていただきましたが、お気づきの通りの両方が揃ってはじめて中長期客をランクアップさせることができます。企画から営業まで全社一丸となって取り組める企業こそ、集客減の時代に勝ち残るのです。

■ おわりに

本レポートでは、中長期管理客をランクアップさせるための仕組み作りのポイントをご紹介させていただきましたがお役立ていただけましたでしょうか?

消費増税後に住宅不動産業界が縮小していくことは疑う余地はありません。産業が縮小する局面においては競合環境が激化し、本レポートで集点を当てた販促コストが上がり続けることは明白です。消費増税後に生き残る為には、現段階で社内において『1名簿たりともムダにしない』という強い姿勢を示し、そのための仕組みを整えることが重要になります。

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