■ 消費税増税がもたらす影響
消費税8%増税時の駆け込み需要以降、また新たに10%への増税を控えています。前回の増税時同様、現在は多くの企業様が駆け込み需要の恩恵を受ける形となっています。ただ、また前回同様、増税後の反動による集客減に悩まされることも少なくはないでしょう。
特に、モデルハウス来場、見学会来場、店舗来場等、一般的に反響型集客と呼ばれる集客形態は、集客効率が低下してきている企業様が多かった印象です。総合展示場を初め、お客様の足が止まっており、2015年に入っても、なかなか回復していない状況が続きました。
このような中で全国の企業様を見ておりますと、実は、このような不況下でも、集客数を増やしている企業様も一定数いらっしゃいます。そのような企業は何が違うのか?前回の増税後に集客が好調だった企業様とそうでなかった企業様の特徴を比べていくと、決定的に違う点が2点あります。それは、「潜在需要客向けの集客」と「自己開拓型の集客」を行えているかという点です。
~潜在需要客向け集客事例~
「潜在需要客向けの集客活動」というのは、その名の通り、今すぐ家を建てたいという方向けではなく、いつかは家を建てようと思ってはいるけど、今すぐではないかな・・・という方向けの集客です。こういった方は、いきなり店舗にいらしたり、モデルハウスにいらしたりということは難しく、ホームページをゆっくりご覧になったり、気軽なイベントに参加してみたり、まずは土地を探してみようと動かれます。このような方に向けて、御社ではどういった集客施策を打っていますか。
ある会社では、一次取得層の潜在需要客を集めるために、月に1回、モデルハウスを使ってお祭り系のイベントを開催しています。縁日系の出し物や、ちびっ子に大人気のふわふわドーム、ママに人気の子供服つめ放題イベント、パパに人気のビール抽選会など、子育て中のご家族が休日を過ごす場所を提供し、週末に100組以上の来場者を集めます。
もちろん、ただ集めて楽しんで終わり・・・となってしまっては意味がないので、イベントにお越し頂いた方には必ずモデルハウスを見て頂くような動線を設計しています。そのモデルハウス内に、「実は家賃並みで家って建つんですよ」、「今の家賃を払い続けると、3年で○○になります」など、の設えを設置しておき、潜在需要客に、購買意欲を醸成しているのです。このようにイベント集客で成功する会社は、モデルハウスにおける契約率と同程度の契約率で、受注を決めているという企業様もいらっしゃいます。
その他にも、最近取り組みが増加しております、自社専用不動産ポータルサイトにて集客を増やしている企業様もいらっしゃいます。これからゆっくりじっくり土地を探そうという方は、まずはWEBで土地を探すことが多いですが、こういった方を囲い込むためのポータルサイトを自社で持ってしまい、会員登録等して頂いたお客様に、メールや電話でフォローしていきながら、土地探しセミナー等に誘い込むという手法です。契約までのリードタイムは長くはなりますが、土地無し客にいち早く接点を持てますので、自社でそのまま建物も契約頂きやすく、土地をお持ちでないまだ先客の囲い込みとしては有効な手段となります。
~自己開拓型集客事例~
「自己開拓型の集客活動」というのは、チラシやWEBをご覧になったお客様が自然とモデルハウスに来場するという集客手法ではなく、社員が積極的にお客様にアプローチを行っていく集客手法です。具体的には、ポスティングや飛び込み営業、紹介営業等がこれに当たります。
ある会社では社員全員が毎週2時間使ってポスティングを行うことで、集客を増やしています。自社オリジナルで開発している6枚綴りの手紙風DMを配布することで、ポスティングチラシ500件につき1件の反響を得ていますが、手紙の内容も、潜在需要客向けに工夫しており、家賃のもったいなさや、低金利の話で実は今が買い時であることを訴求しています。
そしてこのポスティングチラシを、ポスティング業者に任せてしまうと、あまり効果的ではないので、この会社では、社員が手配りで行っています。ターゲットとする配布先も、家賃○万円程度で、築○年以上で・・・など、自社のターゲットとなりやすい先に集中してポスティングをしているため、非常に高い反響率を得ているのです。
その他にも、ある会社では、若手営業スタッフが1日100件の飛び込み営業を行っているような会社もあります。そんな営業手法は古い!と思われるかもしれませんが、実際にそこから一定数以上の契約を獲得しています。反響型集客の効率が下がってきている今、反響型集客施策にマーケティングコストを今以上に投下していくか、こういった攻めの集客活動を行っていかないと、落ち込み続ける集客を補うことは出来ないのです。
■ 不況の時代こそ求められる紹介営業
これまでご紹介した、「潜在需要客向け集客」と「自己開拓型集客」の事例は、実際に成功している事例ではありますが、実はこれらの施策は、どの企業様でもすぐに真似出来るものではありません。特に、営業スタッフがプランニングに一定数以上の時間を要する場合、ポスティングや飛び込み営業に時間を使うことは難しいでしょうし、営業スタッフもやりたい・・・とは言わないでしょう。また、イベント集客を行うには、運営のためのスタッフを一定数確保する必要がありますし、相応のマーケティングコストも求められます。不動産ポータルサイトにおいても、エリアによって成功する、しないが分かれてきています。
このように、これまでご紹介した手法ではなかなか上手くいくイメージがないという企業様が取り組むべき攻めの集客手法はただ一つ。それは、本コラムのテーマである「紹介営業」です。
「今更、紹介営業?そんなのとっくに取り組んでるよ」・・・と思われる経営者様もいらっしゃるかもしれませんが、御社の紹介営業は、不況下で消費マインドの低下したお客様の心理を捉えた活動になっていますでしょうか。
良くありがちなのが、「紹介キャンペーンやっているので、どなたかご紹介お願いします!」という依頼の仕方です。昔はこれでも良かったのですが、今はこれではなかなか紹介には至りません。というのも、消費マインドが冷え込む今の市況下で、家を今すぐ買いたい人を探そうと周囲を見渡してみても、なかなか見つからず、紹介したくても出来ないのが現実です。
一般の営業においても、「まだ先客」に向けた営業が大事!と言われますが、紹介営業についても、「まだ先客」に対応した依頼方法に進化させていくことが必須となるのです。
そのような「まだ先客」の友人・知人を紹介で受注につなげる手法として、我々はこれまでの研究の中で、「紹介マインド×紹介営業6つのステップ」という手法論を確立しておりますが、例えばその中の一つに、購買動機の口コミ依頼を頂くというポイントがあります。それは、今の市況下で建築を決意されたお客様に、今、建築することの魅力を、周囲の方に口コミして建築したいという動機を持ってもらうという手法です。
例えば、ある営業マンは、お客様の一人に、トラックの運転手さんがいらっしゃいました。トラックの運転手さんは、夜間運転などで事故を起こすリスクを背負いながら、そこまで高くない給与で働かれている方が多いので、その営業マンは以下のようなお話をしました。
…この話がきっかけで、住宅購入を決意頂いたのですが、その後、そのお客様からトラック運転手仲間へ、今と同じ話を話してみて欲しいと依頼をしたところ、多数の紹介者を連れてきて頂けたのです。
このように、不況下であっても住宅購入を決意される方は、一定数いらっしゃいます。家を購入したい人が少ないこの時代には、家を建てる人 を紹介してもらうのではなく、家を建てたくなる話を口コミしてもらうことが、紹介営業において一つのポイントとなるのです。