Column

コラム


企画住宅販売の成功ポイント~成功している企業は何が違うのか~(後編)

■ なぜ今、企画プラン住宅が求められるのか

ここまで、企画プラン住宅の成功企業事例をご覧頂きましたが、ここでは、なぜ今、企画プラン住宅という市場が伸びているのか、その背景をご説明させて頂きたいと思います。

理由① 顧客年収の低下

アベノミクスにより、2014年に大企業を中心に若干の給与の上昇傾向は見られてきてはいますが、依然として地方の中小企業のサラリーマンの平均給与は、厳しい状況が続いています。

過去の賃金の動きを見てみると、ここ約15年の間、賃金は減少を続けています。国民経済計算ベース で一人あたり名目雇用者報酬の動向をみると、1997年の501.6万円が最高となり、2011年には440.8万円と、ピーク時から1割以上減少をしているのです。(図2

ちなみに、男女別の平均年収を見てみると、男性で一番多い給与水準は、年収300万円台、次いで400万台という結果になっています。(図3

どんなに質の高い住宅を購入したいと思っても、ローコスト住宅を選ばざるを得ないような状況となっている方が増えているのです。

理由② 金利上昇のリスク

中長期的なことを考えると、金利上昇のリスクも考えておく必要があります。この15年間、低金利状態が続いているため、家賃並みに住宅を手に入れることができておりますが、今後金利が1%上がってしまった場合、住宅業界には大きな打撃となります。

短期的にはすぐに金利が上昇するということはあまりないと考えられますが、国の債務が拡大を続け、3年後には債務超過となる可能性が高い中で、中長期的には、金利が高まることが懸念されます。そうなったことを考え、低価格商品を持つということは、事業リスクを軽減することにつながるのです。

理由③ 消費者の志向性の変化

このような状況を踏まえ、今、消費者の志向性が大きく変わってきています。

下記は、弊社においてエンドユーザー調査を行った結果ですが、自由設計派、企画プラン派、建売派の3種類の志向性に対する回答として、企画プラン派のお客様が一定数存在することが見て取れます。

そして特に、女性における志向性をご覧頂くと、自由設計派と同程度の志向性があることがわかります。女性は、間取りなども見ても中々空間的なイメージがわきにくいため、男性よりも高い志向性が出ていると考えられますが、今の住宅購入の意思決定に女性が大きな影響を与えることを考慮すると、これを無視することはできません。

住宅購入において意思決定権を持つ女性においては、約45%の方が企画プランを求めているのですから、これに対応していかなければ、今後市場の顧客の約半分にニーズには応えられなくなるのです。

以上、3つの理由をご覧頂きましたが、企画プランが求められる理由として、最後にもう一つだけ付け加えさせて頂きます。それは、建設業の労働生産性です。

5は、建設業、製造業、全産業の労働生産性の推移を示すグラフですが、建設業は他の業種と比較して、非常に低い水準となっていることがお分かり頂けるかと存じます。

つまり、労働者一人が1時間あたりかけて働いて生み出す付加価値が低い、無駄な業務が多い状態になってしまっているのです。このような状況を見据えて、住宅業界で勝てるのではないかと、近年、流通業や家電業界の大手企業がどんどん参入してきているのです。

このような状況を踏まえると、住宅業界は今、大きな転換期を迎えていると言えます。これまで、ゆっくりじっくり時間をかけてお客様の要望を最大限実現することが中心であった注文住宅事業から、一定の合理化が求められる企画住宅事業が主流へとなっていくのです。

■ 企画プラン住宅販売における成功パターン

以上のような背景のもと、企画プラン住宅商品を導入する企業が、ここ最近で急増しております。しかしながら、上手く成功を納めていく企業様がいらっしゃる中で、商品を導入したは良いものの、安かろう悪かろうで売れなかったり、売れてはいるものの、結局は設計変更や仕様変更を繰り返し、フリープラン商品と同じになってしまい、利益率が低下してしまっている企業様が大多数という状況もあります。

そこでここからは、企画プラン住宅販売において一番のネックとなる、固定化された間取りをどのようにして気に入って頂き、間取り変更なしで販売していくのかについて、いくつかの成功パターンをご紹介させて頂きます。                             

その① 土地・価格訴求パターン

住宅購入に当たり、重要なのは土地選びであることや、今後のライフプランを考えると、住宅ローンによる借入は徹底的に抑えた方が良いことを訴求していくパターンです。

このパターンを実践する上では、建物にそれほどこだわりのないお客様をいかにして集めるかがポイントとなります。具体的には、不動産仲介店舗やお祭り系イベント、土地系イベント、ポスティング等によって潜在需要客や土地志向客を集めていくことが成功の要因となります。

そのハード訴求パターン

耐震住宅、健康住宅など、徹底的に自社商品のハード面の魅力を訴求し、自社の圧倒的なファンになって頂いた上で、資金計画に当てはまらないお客様に向けて、企画プランを提案していくパターンです。

このパターンを実践する上では、ハード面への圧倒的な魅力があることが重要です。間取りを差し置いても、この商品を手に入れたいと思って頂ける商品力、営業力を持つことが、成功の要因となります。

その自由度訴求パターン

企画プランではあるが、選択の自由度を多く持たせることで、企画であるデメリットを感じさせずに、販売していくパターンです。

例えば、ある会社では、住宅の間取りを6つのパートに分け、それぞれ、玄関パートから10種類、キッチン&リビングパートから10種類、浴室などの水回りパートから10種類2階も同様)からプランを選べるようにし、自由度を訴求しています。つまり、プランを106通り=100万通りから選べる上、見積もりも即可能で価格も明確です。

このパターンを実践する上では、このように自由度の高さをいかに実現するかが大切です。しかしながら、やみくもに自由度を増やすと自由設計と変わらなくなってしまいます。上手く合理化された商品を、いかにして開発するかが成功の要因となります。

その④ 間取り訴求パターン

固定化された間取りにてモデルハウスを建築し、接客時にその間取りのそれぞれのパートにおいて、なぜこのような間取りとしているのかを徹底的に訴求することで、モデルハウスと同じプランを販売するパターンです。

お客様によって、1割~2割程度細かなプラン修正が発生することもありますが、定められたプランからそれほど大きくはずれないため、効率的に低価格で販売が可能です。

このパターンを実践する上では、例えば、最近流行りの奥様目線のコンセプトをつけた商品を開発することも一つの手です。奥様目線のコンセプトは、奥様の家事効率を最大化するためにこの間取りにしています、と説明をしやすいですし、奥様座談会などを実施すれば、奥様が選んだ最高のプランとして、ブランド化して販売することが可能です。

このパターンを実践する上では、このプランが欲しいと思って頂ける商品企画力と間取り営業力を持つことが、成功の要因となります。

■ 企画住宅のビジネスモデル構築で外せないポイント

企画プラン住宅にて利益の出るビジネス体制を作っていくためには、まだまだ押さえておくべきポイントがございます。ここでは、6つのポイントの1つをご紹介させて頂きます。

ポイント① ブランディング&パッケージング

企画プラン住宅を販売するに当たっては、男性よりも女性がメインターゲットとなりますが、その際、非常に重要なポイントがあります。それは、女性は性能などの細かい数値ではなく、イメージを重視されることです。

つまり、パンフレットを製作する際にも、住宅性能ではなく、イラストや写真ベースで、ちょっとおしゃれなものとしていくことが求められます。

さらには、企画住宅販売において競合となってくるのは、おそらく自社企画商品よりも販売価格の低い商品を展開する、大手ローコストメーカーやローコスト系FCです。これらの企業は、ローコストと言っても、商品ブランドが確立されているため、自社商品においても、それ相応のブランド力を持っていくことが外せないポイントとなります。

つまり、企画プラン商品のブランディングに当たっては、最低限でも以下のような要素を整備しておくことが大切となります。

これらが決まりましたら、商品パンフレットやチラシ、ポスター、のぼり、ホームページなどの販促ツールに落とし込んでいくと、大手並みのブランドイメージを持った商品を完成させることができるのです。

さらに余裕があれば、資料お持ち帰り用の紙袋や封筒、接客する社員が着用するウインドブレーカーやネクタイ、エコバックなどのノベルティグッズなどまで整備していくと、より効果的に自社商品のブランド力を高めることができるのです。

■ 終わりに

本コラムでは、ここまで、企画プラン住宅販売していくためのビジネスモデルの作り方として、そのポイントの一部をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

本来であれば、まだまだお読み頂きたいポイントが多数あるのですが、紙面での都合上、ご紹介することが難しくなっております。もし、より詳しい内容をご覧になりたい方は、是非お問い合わせ頂けますと幸いです。ご希望の企業様には、残りの以下ポイントについて、ご紹介させて頂きます。

今後の勝ち残りに向けて、色々と方向性を探られている経営者様も多数いらっしゃると思いますが、この企画プラン住宅は、今後の戦いにおいて外せない一つの戦略になってくるかと存じます。本コラムが、今後の展開におけるヒントになれば幸いです。

<PREVIOUS