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隠れた成長市場・シニア市場を開拓するポイント~建て替え・減築・リフォーム・住み替えニーズに答える~(後編)

③今取り組むことの動機づけが難しい

土地なしの一次取得者の場合は、いくつものことで、今取り組むことに動機づけをできます。ところがシニア世代に「今、この家の建て替え・リフォーム・住み替えがしたい」と思って頂く動機づけはとても難しいのです。

通常、一時取得者の場合は、「家賃」を払い続けねばならない環境にあるため、家を持たなければお金を失い続けます。また、いざ取り組もうと思ったら、良い土地や良い物件はなかなか出ないので、出たら即押えるよう意思決定を促進できます。

シニアに建て替えやリフォーム、住み替えをするに当たっては、この2つの要因がないため、納期が切りにくくなります。そういう中で、「取り組みたい理由」が「取り組みを躊躇する理由」を超える状態を作るのはなかなか難しいことです。

中には、上手く「今の生活を続けることのリスクを認識させ、一刻も早く、取り組みを進めた方が良いと動機づける」「新たな生活のイメージを強く持たせることにより、早く取り組みたいという気持ちを喚起する」そして、更に「今、躊躇している理由を明確にし、それ以上の取り組むべき理由を用意しブレーキを取り除く」といったことをしっかり行っている会社様もあります。具体的な例で言えば、ターゲットを都心の地価が高いエリアに住む建て替え層に絞り、その相手に対して、「住宅は出費ではなく、現金を建物という資産に等価交換し、相続対象額の圧縮を図る」という視点で建て替えを躊躇する理由を取り除きます。その上で、「孫との暮らしや安全・健康などの生活イメージを訴求すること」により建て替えへの意思決定を促している会社もあります。

ところが、これまで一次取得者の対応に慣れきったメンバーではなかなかこの様に確実にステップを上げていくことが苦手なようです。シニアに対しては、次アポが取れなかったり、途中で途切れてしまうというパターンが多い会社の場合は、今取り組むことの動機づけを見直す必要があったりします。

④取りうる選択肢が多様に存在するため、結論を出せず未決になることが多い

ようやく①~③のシニア層独特のハードルを乗り越えて、見込み客化できたとしても、最後に待ちかまえるこのハードルを乗り越えられず、未決・意思決定の先延ばしで終わるというケースは非常に多くあります。

例えば、シニアがこれからの住生活を考えた場合に取り得る選択肢や考えなければいけないことを列挙すると、最低限でも、下記の図くらい上がります。

皆様ご自身がシニアの方で「そろそろ、家が傷んできたので何とかしないと」という立場に置かれたらどのように考えますか?

顧客にとっては、どれか一つの選択肢を選ぶと、他の選択肢は諦めなければなりません。しかも、一度決めた後で、やっぱりこちらに変えるということは、コストの面からもできません。そう考えると、適切な判断をするために、必要な情報を集めたり、アドバイスをもらおうとしますが、そもそも、各々の選択のメリット・デメリットをトータルで説明してくれる営業や知人はなかなかいません。

そこで、大変な時間をかけて、情報を集め、自分なりの基準を持って考えようとします。しかし、そうなれば、シニアの方は、下記の様な不安心理が働いて、ますます決断をすることが難しくなります。

● これだけの費用を掛けても大丈夫なのだろうか?
● 良いパートナーを見つけられるだろうか?
● もう少し待てば、より有利な状況が出てくるのではないか?
● トラブルになったら困る、更に費用が発生しないか不安
● そこまでして、今の生活を壊す、離れるメリットがないのでは?

その結果、もたらされる結論として最も多いのは、「もう少し様子を見よう」「どうしようもなくなったら考えよう」という意思決定の先延ばしです。こういうリスクを考えて商談をコントロールしないとシニアの商談は圧倒的に「未決」で終わる率が高くなります。

以上のように見てきましたが、これら4つのハードルがあるため、シニア層からの受注が上がりにくいのです。

■シニア市場の開拓に向けて

まず、シニア市場の開拓に向けては、営業の仕方よりも、戦略を考えることが重要です。

◎ そもそも自社が開拓したいエリア(都市部・郊外・田舎)とターゲットによってシニア市場の開拓の取り組み方が変ります。

◎ 次に選んだターゲットの方々のどういうニーズに応えるために、どういう解決策・支援策を用意するのか?今の自社の商品・サービスだけで不足する場合は、いつまでにそのサービスを開発するのか、提携先を作って進めるのか、FCなどに加盟するのか。その選択肢を探すことも必要です。

そして自社の「規模」と「3年後の目標水準」によってどこまでの取り組みが必要になるのかを見える化し、メンバーと共有する必要があります。

これらが決まったら、次は具体的なマーケティング策を決めこむ必要があります。

ターゲットへのアプローチ(集客)は、展示場、現場見学会紹介、イベント、WEB、などをどう組み合わせていくのか?

◎ 前述の「シニアからの受注が難しい理由」をクリアするために営業活動においてどういう工夫をするのか?

◎ それぞれの活動を行なっていくのにどういう営業組織、スケジュール、予算でいくのか?

以上のような戦略から具体的なマーケティング策までを考えつつ取り組まないと、単に今の自社の商品をなんとかシニアに売りたいという形で取り組むとほとんど失敗します。実際の例で見てみましょう。

- あるシニアのAさんご夫婦の事例 -

30年前に、市の中心部から40分ほど離れた郊外の分譲地を買われて今も住まわれているシニアのご夫婦。子供世帯は既に独立しており、戻る予定もないそうです。こういうご夫婦に、実際、皆様ならどういう提案をされますか?

確かに家は古くなって、住みにくいし、今の土地は売れないだろうし、知人もいっぱいいるのでこの場所で建て替えしましょう、という提案をされたとします。しかし、実際にこのAさんご夫妻が、考えられる「建て替え以外の選択肢」としては、

①郊外の家を手放すか貸すかして、娘夫婦のそばの都市部の利便性の良い中古または新築のマンションに移る
②今後や将来夫婦の暮らしに必要なことを考えて大規模リフォーム・減築して住み続ける
③郊外の家を貸す・売ることができなかったら、保有したまま、どこかに移住する(海外・故郷・老後に良いところ) 
④このまま費用を掛けずに応急処置が必要なことだけ対応し、介護が必要になったら専門施設に移る

 

といったことが考えられます。この様な多様な選択肢がある中で、年々寂れていく分譲地の敷地に多額の費用を払って建て替えをすることを一番良い方法として勧めて、説得できるでしょうか?

また、一方で、そのエリア特性から考えると、

● 賃貸併用住宅に建て替え、相続対策も兼ねながら私的年金を受け取る
● この家をリフォームして賃貸にし、子供世帯のそばに近居できる中古のマンション・戸建てに移る

といった選択肢は取れないと思います。この事例の様に、とにかく「シニアから○○を増やしたい」とだけ考えても上手くいかず、狙ったエリアのシニア市場を開拓するには戦略的な取り組みが必要になることはおわかり頂けると思います。

実際、こういう状況にあるシニアの方々は各エリアにおいてもかなりの数おられます。ですので、「シニア層」の開拓に向けて狙ったエリアとターゲットの特性を踏まえて、適切な戦略を採用することが不可欠であることはおわかり頂けると思います。

戦略とは、平たく言えば「何に注力するか、何は捨てるか」を絞ることです。シニア市場の開拓において、自社の「エリア」や「ターゲット」そして「規模」によって、どの様な戦略が選べるのかということ自体が多くの会社で明確になっていません。

そこで、弊社でこれまで、数多くのハウスメーカー様やビルダー様で「シニア層」の開拓に取り組んできた中で実績の上がったものを整理してご紹介させて頂く場として、セミナーを実施したり、シニア開拓の可能性の診断を行っております。お問合せ下さいませ。

幸いなことに、各エリアで「シニアの家のことを相談するなら○○だよね」というブランドを作れる可能性はどの会社にも、まだあります。

是非、この機会に、増加していくことが確実なシニア市場に対して自社がどういう取り組みをすべきかご検討頂き、今後の可能性と方向性を明確にして頂ければと思います。

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