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規模に応じた効果的・効率的な会議のポイント ~ムダな会議を無くしつつ、環境変化に対する適切な意思決定を行うには~(後編)

■ 企業の成長に応じた仕組みのレベル

 

1をご覧下さい。これはグレイナーの企業成長モデルと言い、組織の規模と成長段階に応じて生じる様々な危機について表現されているものです。

グレイナーの企業成長モデルを簡単に説明すると、

○ 企業は5つの顕著な発展段階を経て成長する
○ 組織は危機を乗り切る為に、一定の変革と革命を行わなければならない
○ 危機を乗り越えて新たな成長段階へと進む

という考えがまとめられたものになります。

5段階の成長モデルと危機とは、図に記載のある

1段階:創造性による成長と統率の危機
2段階:指揮による成長と自主性の危機
3段階:委譲による成長と統制の危機
4段階:調整による成長と形式主義の危機
5段階:協働による成長と新たな危機

を指します。

ここでは、第1段階~第3段階を中心に、住宅会社の経営環境とそれに必要な会議という視点で考えてみたいと思います。是非、自社の今後の成長でどういった危機にぶつかるのかを考えながら確認してみて下さい。

会議の進め方について考える際に、切り口として見ていきたいのが組織の規模との関係性です。

創業当時、経営者が全体を見れる第一段階では、一番優秀な経営者が全ての意思決定をスピーディに行える環境が非常に重要です。その為、会議もなるべく全社員を集めて経営者が意思決定をしていくという会議スタイルが合致します。

この段階では、ルール化・仕組み化を行い、その体制を定着させるのは、コストがかかる為、費用対効果が合いません。会議で意思決定をしてしまうのが良いと言えます。

実際に、ある年間30棟の会社では進捗会議に部門全員を集め、その場に情報を集約させた上で社長がスピード感を持って意思決定をしていくことで会議が上手く回っており、効果的な会議を軸に会社を経営されています。

一方で、第二段階、第三段階のように徐々に規模が大きくなると、全社員を集めるのは難しいので、ある程度、ルール化・仕組み化を行い、情報がそのルール通りに集まってきて更新される状態を作る事が、組織の生産性を上げる上で非常に大切になるのです。会議ではなく、他のマネジメントツールで管理する方法を模索する事が大切になります。

その為、第一段階から第二段階に入っていく40棟~50棟を越えてきたあたりで進捗確認のやり方を見直していく事は、その後の会社の在り方を考えていく上で非常に大切です。

情報共有会議は、会社の考え方や経営判断、行動指針を社員に伝える為に、会社の置かれた環境、それに対応する判断等の情報を共有するという会議で、主体的な社員を作りだす上で大切な情報の共有を実現する為のものです。

進捗確認会議とは異なり、情報共有会議になると、第一段階にある会社はそこまで時間を使わなくとも、ある程度日々の働き方や社長とのコミュニケーションで充分情報が共有出来てしまう部分があります。

一方で、第二段階、第三段階くらいになってくると、組織が大きくなり統制が取りにくくなるので、情報共有にある程度時間を割く必要が出てきます。

具体的にどんな場面でこのような会議が必要になるか考えてみます。カリスマ経営者から2代目に事業承継した会社がありました。その会社の経営幹部は、以前は意思決定を創業者がしてくれていた為に、意思決定を自らするのではなく、指示待ちの体質になってしまっていました。情報共有会議は、こういった状況にならないようにする為に、非常に重要な会議です。

創業者がいた時から情報共有会議を行い、会社がどういった場合にどのような経営判断をするのかを伝えていれば、自ら考えて、問題を解決する組織を作っていく事が出来ます。何故、うちの社員は主体的に物事を考えられないだろうと感じられる経営者、経営幹部の方は、この情報共有の会議が不足していたり、効果的な運営が出来ていない可能性があるので、是非、情報の共有のあり方を見直されるのをお勧めします。

このように組織の規模によって会議の必要性は変わってきますので、是非、自社の置かれた状況に応じて、会議体系の見直しを検討されてはと考えています。

次に、より効果的な管理体制を検討する上で、大切な考え方である「マネジメントサイクル」についてご説明します。

■効果的な管理体制を実現する為のマネジメントサイクル

適切な報告が上がってこないと悩まれている方は少なくないのではないでしょうか。そういった時に、「何故報告を上げてこないんだ」と部下を批判するのは筋違いです。何故なら、報告が上がってこない会社においては、マネジメントサイクルを部下と合意していなかったり、そもそも決まっていなかったりすることが多いからです。

マネジメントサイクルとは以下の項目を明確にし、それに基づいた運営をしていく事を指します。図2はマネジメントサイクルのイメージです。

つまり、適切な報告が上がってこないのは、①~④の項目の一部もしくは全部が、明確になっていないからなのです。さらには、明確にするだけではなく、マネジメントサイクルを社員と合意することが非常に大切になります。

マネジメントサイクルの中でも、特にマネジメント指標の設定をされる事をお勧めします。マネジメント指標が決まっていないと、進捗状況が感覚値になってしまい効果的な運営が出来ません。

また、マネジメント指標の設定の際には、受注棟数や売上、粗利等の結果を表す指標だけでは、結果が決まるままで状況が分かりません。その前段階の結果につながる重要な指標である「成果指標」を設定すると高い成果が得られます。

皆様の会社では、活動が上手く進んでいるかを確認する為の基準となる指標が設定出来ているでしょうか。その基準に基づいて報告する仕組み、報告するタイミングが設定出来ているでしょうか。実は基準を設定するだけで、改善が進むケースが多いのです。是非、自社に最適な基準作りを行い、より効果的な管理体制の実現に役立てて頂ければと思います。

基準のイメージがつかない方もいらっしゃると思いますので図35で、マネジメントサイクルの指標をいくつか、ご紹介させて頂きます。

図3には設計の業務工数と生産性について記載しています。設計の生産性に大きく影響を与えるのが、打合せの変更回数です。その打合せの変更回数に影響を与えるのが、初回ヒアリングの精度です。いかに初回ヒアリング時にお客様の要望を引き出せるかで、その後の図面変更による手戻りを減らすことが出来るからです。

また、図面作成を着工前の早いタイミングで完了させることで、監督が図面を基に段取りを行う時間の確保が出来、施工の品質を高めることにもつながります。

次に、図4をご覧下さい。こちらはインテリアコーディネーター(IC)の業務工数と生産性について記載しています。ICの場合は仕様打ち合わせをいかに少ない回数で終えられるか、その仕組みづくりが重要です。

一旦仕組みが出来上がってしまえば、他の部門と違って新人を半年で戦力化する事が出来るので、今まで営業や監督が仕様打ち合わせを担当していた場合は他部門の生産性を一気に上げる事が出来ます。また、外構やオプションの提案によるクロスセルを実現する事で、ICの人員分の人件費以上は賄う事が出来ます。

最後に図5をご覧下さい。こちらは監督の業務工数と生産性について記載しています。監督が1棟にかける工数は50100時間となっておりますが、その中で最も監督が時間を使っており、なおかつ差が生まれやすいのが現場への移動時間です。監督の日常業務の中のおよそ1520%が移動に割かれています。

この移動を極力減らすことが監督の生産性向上につながります。その為に着工前に段取りの時間を確保して現場確認回数を抑えていくこと、1回現場訪問当たりの確認事項を明確化することで施工品質を保ちながらムダな移動をなくしていくことが求められます。

このように、各部門のパフォーマンスを上げる為の指標とその数値を設定することで個人個人の活動がその指標に基づいて集約され、より高い改善効果を得ることが出来ます。是非、会議の中で確認される指標の中に、図3~5でご紹介した指標を参考にして導入してみて下さい。また、関心がある方は、弊社で住宅会社のマネジメントポイント(成果指標)100をまとめておりますので是非、お問合せ下さい。

■おわりに

会議とマネジメント指標についてここまで述べさせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。今回会議の工数を見ていく中で、ある程度、会社間の開きが出ることは予測しておりましたが、棟数換算でここまで差がでてくるものだとは考えておりませんでした。それほどまでに、感覚よりも会議に使っている工数が多い可能性があると考えて頂いて良いのではないかと思います。

今後、消費税10%になるタイミングで2度目の駆け込みが予想され、一方で、増税後は市場が落ち込んでいく事が考えられます。駆け込み需要のチャンスを最大化する為にも、今のうちに組織の見直しを行い、生産性を上げて頂く為の、ヒントになれば幸いです。

今回、レポート内ではお伝え出来なかった効果的な会議の運営方法や会議時間を圧縮する為の他社で効果的に活用され成果につながっているツールなど、レポートをお読みになった方限定でお見せ出来るものがいくつかございます。ご興味をお持ちになられた方は、弊社までお問合せ下さいませ。

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