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紹介営業力強化のポイント ~紹介を理想で終わらせないために~(前編)

■ 求められる紹介営業機能

定期的に来る不況下で、どのように次の見込み客を確保していくのかは、今まさに住宅業界全体の課題となっております。そのような中、各社、集客を改善しようとさまざまな手を打たれていらっしゃるかと思います。

イベント開催、ポータルサイト構築、新モデルハウス建築…などなど。そのような中、改めて注目されているのが、「紹介営業」です。

実際、あるハウスメーカーは以前から紹介受注比率50%を超える紹介営業構造を持っていたため、総展に人が来なくなっても、口コミで集客を行い、受注を確保し続けることができています。

そのようなこともあって、紹介営業は「狙って口コミを流していくこと」ができるため、不況下では反響を取りにくいチラシなどの集客と比較して、有効な集客施策と言われております。

また、スマホなどを利用してWEBで企業情報を容易に手に入れることができるようになっている一方で、企業側が発信する情報も膨大な量になりましたが、各社の膨大な情報量をお客様は処理しきれなくなっています。その結果として、お客様側も知人の体験談や口コミなどのリアルな声を求められるようになっています。

このような背景も踏まえ、紹介・口コミ営業体制を実現できるかどうかは、今後の企業戦略上も非常に需要なウェイトを占めていると言えるのです。

■感動紹介の落とし穴

お客様に紹介依頼をかける理想のタイミングとは?

実際に「紹介営業に取り組んでいこう」と考えた時に、まず間違えてはいけないポイントが1つあります。

紹介営業の中でも一番重要となるのが、お客様からのご紹介ですが、お客様への紹介営業を行う場合、御社の営業マンは以下のうち、どの段階のお客様に声がけをされますでしょうか。

①契約前

②契約後~引渡し前

③引き渡し後

③が多いという企業様は要注意です。

紹介比率が50%を越える企業様では、①②で紹介を頂く比率が高いという特徴があります。というのも、お客様の家づくりの過程を考えた際に、お客様の満足度が最も高くなるのは、契約時と引渡し時だからです。

 

 

1をご覧下さい。こちらは家づくりの各段階と満足度の上下を表したグラフです。

通常紹介依頼が行われがちな③の段階では新築完成時の感動もやや薄れて、満足度は下がってきています。人が口コミをするのは、感動、満足した時なので、③のタイミングでは遅いのです。ゆえに紹介営業で成功するためには、①②の段階での活動が肝となります。

そして①②の段階で紹介を頂けるようにするには、営業~建築段階において、お客様が口コミをしたくなるだけの「感動」、もっというと「感涙」を提供出来るかどうかが肝となります。

例えば、住宅業界でNo1クラスのホスピタリティを持つM社では、各式典において様々な仕掛けをしています。

上棟式で柱に思い出の筆入れをしたり、職人さんと握手をし、終了かと思いきや奥様からサプライズで旦那様に手紙を読んでもらったり。もちろんこのことは旦那様には内緒で進めているので、旦那様はびっくり!さらにその後、実は奥様にもサプライズプレゼントを用意しておくことで、2度びっくりして頂き、感涙を誘うのです。

クライマックスである引渡し式では、レッドカーペットを引いてエスコートしたり、スリッパをプレゼントしたり、最後のサプライズでお子様から手紙を読んでもらって、また涙。

もちろんこれだけでは終わりません。引渡し後に、完成披露パーティをやることもあります。引っ越しが落ち着いた頃に、施主様のご友人を招いて頂き、会社主催でパーティを開催します。担当スタッフがお酒を持参し、乾杯の挨拶した後に、お施主様から家を建てたきっかけ、M社に決めたきっかけ、家のこだわりポイントなどの話を質問形式で進めていきます。

そして極めつけはメモリアルDVDを大きなスクリーンで上映。建築の始めから、地鎮祭、上棟式、お引き渡しと感動ムービー仕立てにスタッフが作ったもので、暗いところで大音量で流すので、お施主様はもちろん、ご友人の皆様、しまいにはM社の社員も感動してしまうというわけです。

感動頂けたからといって紹介にはつながらない!?

M社は、上記のような感動頂く取り組みをしていたため一時期全国でも有名になり、視察に訪れて真似をされる企業も多かったと聞きます。しかし、こういった感動紹介の体制を作るに当たっては、いくつか落とし穴があります。

その代表的な例は、「お客様の感動を突き詰めていけば、お客様の紹介が増える」ということについての誤解です。

実は、「感動=紹介発掘数が増える」という単純な式が成り立つわけではないのです。現に、M社は紹介受注比率そのものは、このような感動体制を構築しているにも拘わらず、紹介受注比率は平均水準より低かったのです。

お施主様に感動頂くことはもちろん大切なのですが、特に今の住宅購入層においては、それだけでは口コミ、他人に紹介する、というところまでは動いて頂けません。紹介頂くための仕組みは、感動創造とは別で考える必要があるのです。

■成果につながる紹介営業6つのステップ

お客様感動満足は紹介の一ステップに過ぎない

2をご覧下さい。これは紹介営業のトップセールスの手法を標準化したものですが、そこには6つのステップがございます。

お客様に感動頂くということは、全ステップにおける「CIS(顧客感動満足度)向上」という一部分でしかないのです。

感動頂いた後には、次に「紹介依頼」が必要となりますし、その後STEP6まで適切な活動をしていけるかどうかが、成果につながるかどうかの差となります。 

8割以上の方に紹介協力頂く紹介依頼手法

 

STEP3において、お客様に口コミ活動に協力を頂ける関係性を作るためには、図3のようなツールを用いて、紹介頂くメリット、特に紹介した方もされた方も自社にも得になるということを訴求していきます。この話を営業マンが心の底から気持ちを込めて話せると、8割方のお客様にそれなら協力しても良いかな、と思って頂けるようになります。            

そして、協力頂ける環境が整ったら紹介活動を依頼していくのですが、ここにも注意点があります。       

例えば、「どなたか家を建てることを検討している方が周りにいらっしゃったら、紹介してくださいね」と依頼をかける営業マンが多いですが、これでは失敗に終わります。というのも、これから家を建てようと思っている方の心理を考えるとよく分かります。         

通常、親族や本当に親しい友人を除いて、「これから家を建てようと思っている」ということを周りには話すということは、中々しないものだからです。それゆえ、「家を建てる人はいないか?」と聞いても、「いない」という答えが返ってくるのです。   

このような失敗をしないためには、例えば「お子様が生まれて間もない方」「ご結婚されたばかりの方」など対象を明確に指定したり、「実は結婚されて賃貸に住まわれていると、トータルでこれだけの家賃が損になるんですよ、家を建てても賃貸の家賃並みで収まることは珍しくないんですと、そのお友達にお話してみて下さい」などと口コミ頂く内容までコントロールしていくことがポイントとなります。        

紹介営業で成果を出すために一番大切なこと

ここまでやれていれば優秀な営業マンと言えますが、実は、その中でも本当に紹介で成果を出している営業マンはここからが違います。

お客様は一度紹介依頼を受けても忘れてしまいますし、すぐに活動できることも限られています。そのような中で、2回、3回と何度も紹介依頼を継続して行えるかどうかがが重要なのです。

紹介活動で成功している企業で統計を取っていくと、1年間に紹介頂いたお客様の数が70人いたとすると、1回目の紹介依頼で動いて頂いた結果の人数は10人のみで、2回目以降、何度も違うネタで紹介依頼をかける中で、残り60人が生まれているという結果が出ています。

すなわち、2回目以降の紹介依頼を数多く実施できるかどうかが重要となるのです。

このように何回も紹介依頼をかけようとすると、お引き渡しまでの流れの中でどのようにして紹介依頼の仕組みを作るかを考える必要があります。

お施主様がショールームに行く時、見学会を参考に見に来られると時などに一緒にご友人様を呼んで頂くような仕組みを作ったり、上棟式の時に親族を呼んで頂いたり、完成時にご友人様向けのプラーベート見学会を開いたり…。こういった仕掛けを1520個考え、その中で選んだいくつかのことを、全社員で徹底して実行することがポイントとなります。     

こういった仕組みができてくると、建築客1組に対し、お引き渡しまでに最低1人、多いと23人を紹介頂けるようになり、紹介発掘数が格段に上がっていくのです。

 

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