■ 異業種にみる成熟市場で急成長している「営業マン不要モデル」
「ライフネット生命」「リブセンス」この2社の名前を聞かれた方も多いのではないでしょうか?
「ライフネット生命」は日本初のインターネットによる保険直販サイトの運営で成功した企業で、2006年の創業から右肩上がりで成長を続け、開業1年で保有契約高は900億円を超え、その後も継続的に成長を実現し現在、約24万件の保有契約件数があります。
一方、「リブセンス」は、求人情報サイト「ジョブセンス」の運営で成功した企業で、営業利益率45%と信じられない位高い収益性を実現しています。しかも、、この会社の社長は、大学時代にこの会社を立ち上げ、創業2年で黒字化し、自社の株式を公開した者として史上最年少経営者(東証マザーズ上場時25歳1ヶ月)となりました。
両社の共通点として挙げられるのは以下の点です。
① 成熟した市場で急激な成長を実現している
② 本来は営業マンが重要なビジネスで営業マン無しの事業展開をしている
③ お客様から選んで頂く分かりやすい形で商品を提供している
① 成熟した市場で急激な成長を実現している
生命保険と採用市場は、以前から存在した市場で、市場の人口の減少に伴い、縮小が予測されています。また、一定規模の強い大手企業が存在しているのも共通点です。
② 本来は営業マンが重要なビジネスで、営業マン無しの事業展開をしている
両社ともに、営業の機能を分解して、一部をインターネットに代替したり他部門の方が担当する事で、営業組織を持たない経営をしています。営業組織を持たないという事は、それだけ人件費が削減出来るので、高い収益性を実現する事が出来ます。
③ お客様から選んで頂く分かりやすい形で商品を提供している
リブセンスは、採用広告が掛け捨てになってしまう事を避けたい企業側の心理をうまく捉えて、「成功報酬型」の採用媒体という分かりやすいサービスを提供しています。ライフネット生命は、生命保険会社で大きなコスト負担になっている営業組織を持たないという事を全面に出して、価格競争力を強くうたっています。営業がお客様を説得しなくても売れる状態を作っているのです。
これらの強みがあって、採用市場や保険市場といった成熟市場の中でも急激な成長を実現し、他社が対策を立てられないスピードで市場シェアを奪う事が出来ました。
今回、ご紹介する新潟県のハーバーハウスは、まさしく住宅版の「ライフネット生命」や「リブセンス」と言っても過言ではないモデルを実現しています。
通常、住宅事業で急激な成長を実現しようとした場合、「土地」を仕入れて販売する分譲事業が戦略オプションとしては選択出来ます。当初は、売建事業から入り、売建事業で発生する設計・施工の負荷を考えて建売事業に転化し、さらには、仕入・施工にだけ特化した飯田グループのような展開に至るというのが、住宅事業として急激な成長を実現する方法です。
しかし、ハーバーハウスは、土地は一切仕入れず、仲介土地だけの提供で、規格住宅や総2階といった住宅ではなく、完全自由設計で住宅を提供し、それを「1拠点」で「営業マン無し」、「モデルハウス無し」という状態で創業7年で完工142棟、来年度の完工200棟(7月決算)もほぼ見えているというこれまでの住宅業界の常識では考えられないモデルで展開をしているのです。
今回は、このハーバーハウスの経営戦略についてご説明する事で皆様の経営に役立てていただきたいと考えています。
■住宅業界における営業の役割
ハーバーハウスの取り組みをより理解する為に、住宅業界の営業マンの役割を考えてみます。そもそも住宅業界でなぜ営業マンが必要になるのか。それは住宅を購入する上で、必要な情報が多すぎるからです。
具体的に見ていくと、資金計画、プラン策定、資材や設備の選定…など考えなければならない項目がいくつもあります。お客様からしてみれば、住宅を購入しようとした時に、どこで、どんな買い方をすれば良いのか分からない状態なのです。お客様の情報ギャップを埋め、意思決定のお手伝いをしてあげる事が営業マンの重要な役割となります。
もちろんその前段階、住宅購入を検討しているお客様を探し出す事も、営業マンの役割の1つです。
ここまでの内容をまとめると、営業マンの活動は以下の2点に集約されます。
しかし、その営業の役割が住宅業界では大きく変わってこようとしています。
① 建物、土地、資金についての説明
② 探客からクロージングまでの営業ステップの推進
インターネットが普及してきた現在、お客様との情報ギャップは少なくなってきました。資金計画はインターネットのサイト上で出来ますし、プランに関してもプラン集を掲載する企業が増えてきています。資材や設備などの詳細もホームページを見れば情報を得る事が出来ます。お客様自身も自ら必要な情報を見つける事が出来るので、住宅購入に関して「ある程度は自分で判断出来る」と考えるようになっていると言えます。
インターネットにより情報収集されるお客様が増えている状況に対して、企業側も従来営業マンに頼っていた部分を、資金計画ソフトの導入、ホームページなどによる集客の構造作り、プラン集の作成、ブランド作りなどによって補い、仕組み作りを進めてきました。結果として、企業における営業マンの重要性が変ってきたのが今の住宅業界という事が出来ます。