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コラム


成長企業のための現場の生産性向上~成長を加速する企業の組織と成長によって崩壊する組織~(後編)

ポイント① プロジェクトマネジメントの徹底

取り組みのポイントの一つ目は、プロジェクトマネジメントにおける重点ポイントをきちんとおさえる事です。住宅会社は案件ごとの違いはあるとは言え、基本的にはプランを描き、仕様を決め、着工してから基礎、木工事をおこなっていくという流れは共通しており、そこにかかわるスタッフも決まっています。プロジェクトマネジメントしやすい事業形態と言えます。

プロジェクトマネジメントを推進する上で必要となってくるのが、以下の2点です。

① 業務の引継ぎルールを明確にすること
② 個々の業務のQCDを明確にすること
※QCD…品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の略称

①に関しては、契約における条件、着工における条件などを明確化し、その条件を満たしていない案件は極端な話、引継ぎをしないという判断を行います。

特に引継ぎが各担当者で判断がずれる所を明確にする事が大切です。
たとえば、間取りを確定し、確認申請の準備をしていく事は、後工程の申請図面の作成などの工数がかかるので早めに実施した方がよいのですが、一方で、設計やインテリアコーディネーターの側からすると、最後までお客様のこだわりを形にしてあげたいと悩む部分でもあります。

こういった、家づくりで担当者ごとに判断の違いがあり、かつ、生産性に大きな影響を与える部分に対して、自社の家づくりの理念に基づいて明確な意思決定をしていく事が大切になります。

②に関しては、設計打ち合わせやインテリアコーディネーターの打合せなどの個々の業務のQCDを明確にします。

たとえば、契約図面の依頼を営業が設計にお願いするときに、何日前までにお願いをするのか、工務が着工準備をする十分な時間をとる為に、インテリアコーディネーターがいつまでに何回で打合わせをを終わらせる必要があるのかを明確にするのです。
当然、お客様にも良い家づくりの為に、納期を一緒になって守ってもらえるような説明の仕方、協力の依頼を行っておく事が大切です。

①や②のような取り組みを進める事で、イレギュラー案件を減らしていき、案件を標準業務フローで流れやすい仕組みを作り上げていきます。

▼ルール事例

 

 

D社も上記のプロジェクトマネジメント体制を整備するまでは、全ての案件ごとに個別対応をしており、無駄な会議や打ち合わせが頻発している状態でした。しかし、業務フローを見直し、共通ルールを作成する事で、ほとんどの案件はルール通りに回す事ができるようになり、イレギュラー案件のみに個別対応が行えるようになった為、業務の生産性は格段に向上しました。

▼整備した業務フロー

 

 

ポイント② 役割分担の再定義

D社がもう一つ取り組んだポイントとして、社員の負荷状況を見ながら柔軟に役割を変更していった事です。

契約後のプラン修正、敷地調査や役所調査、祭事…など、同じ住宅会社といっても、業務の種類によっては担当部署が異なるケースがあります。下手をすると、部門を任されている担当役員や部長の影響力の大きさが、部門の役割分担、業務範囲を決めているという事もよくある話です。


さらには、感動接客により祭事をやる事で紹介を獲得するという活動が流行った事で、全社員営業という名前のもとに、設計や工務が祭事や現場見学会に参加するルールとなり、後工程の部門の社員が休みを取れなくなってしまっている会社も増えています。

こういった事は社員が疲弊するだけではなく、他の部門に対する不満を増加させる要因にもなり、結果として組織風土を著しく悪化させる要因となります。


D社では、各部門が現状の業務を遂行した場合に、どれくらいの工数がかかっているのかを明確にし、今後棟数を伸ばしていく上で、負荷が高い部門から、負荷が低い部門に業務の担当を変えたり、後工程に負荷がかからない契約の取り方に変えたりする事で、公平感がある中で、役割を決めた事が、組織風土の改善、生産性の向上につながったと言えます。

真の「差別化」となる要因とは

これまで述べてきた内容は、D社が取り組んだ内容のほんの一部に過ぎません。紙面の関係でこれ以上は割愛しますが、業績拡大を続ける住宅会社にはどんな問題が起き、どのように乗り越えるべきかを感じて頂けたと思います。
50棟を超えて、100棟、150棟と伸びていく会社は、すべからく組織構造の見直し、強化に力を入れています。そのように事業の生産性を高めていく事によって「生産性の高さ」自体が会社の強みとなっていきます。

先ほどのD社も大幅に工数を削減した事により、空いた社員の時間を紹介活動などの新たな取り組みの為の時間として再投資するなど、次の展開に着手しています。
組織の成長に伴い、「高生産性」を実現していく会社と、単なる「肥大」によって組織が瓦解していく会社の格差がどんどん開きつつある…それが様々な成長企業を見て実感している事です。

消費税増税後の中で、他社との競争がますます激しくなっていく事が予想されます。その対策の一つとして、組織の生産性向上は重要な位置をしめます。集客の仕方、営業の仕方をどうしているのか、どんな商品を販売しているのかは、外からみてもわかる事で、マネができてしまいます。しかし、こういった外からみてマネができない部分こそ、他社との差別化につながる部分と言えるのではないでしょうか?

競合他社との戦いをより有利にしていく為に、弊社では「生産性向上」のセミナーや組織の診断を実施しています。今後も成長を続けていこうとする意欲の高い経営者には有用な内容ですので、是非お問い合わせください。

 

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