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海外進出Q&A vol.14 海外人事制度構築の重要ポイント

Question.

海外拠点での人事制度構築の際に気をつけるべき重要ポイントを教えてください。

Answer.
1) 経営理念の浸透およびビジョンの構築が基礎となります。

2)評価制度の構築にあたっては、実際のマーケットにおける成功法則を見つけるとともに、海外現地社員が「自ら作り上げた」という認識を持たせることが重要となります。

3)運用面では、ES(従業員満足度)のモニタリングが求められます。

 

 

1.人事制度導入の基本姿勢

海外拠点の人事制度を導入する際、日本本社の人事制度をそのまま現地の言語に翻訳し導入するケースが、多くの日系企業に見受けられます。
しかし、日本で機能しているからという理由でそのまま海外に制度を移植しても、上手く機能しない場合がほとんどです。
なぜならば、現地のローカルマネージャーには強いプライドがあるのが通常で、彼らにとっては「外国の制度」という認識が強いからです。
この、「心理障壁」を打破する必要があります。

 

 

2.経営理念の浸透とビジョンの構築

人事制度を構築する前に、やっておくべき事があります。
それは経営理念の浸透とビジョンの構築です。
企業にとっての「経営理念」は、世界中どこであろうと不変で全く問題ありません。

また「ビジョン」は、現地ローカルマネージャー中心に、現地に合った形で策定することが望まれます。
海外マーケットのPEST(政治・経済・社会・技術)分析からスタートし、その市場の中でどの分野で勝負するのか、最適なバリューチェーン(付加価値を生み出す連鎖)はどんな姿になるのか、海外現地社員の想いを「見える化」することが求められます。
ここで設定した現地法人独自のビジョンから、人事制度基本ポリシーを設定していきます。



3.海外マーケットにおける「成功法則」を見つける

海外拠点が利益をあげられず、「撤退」となってしまったら、どんなに素晴らしい人事制度を構築したとしても役に立ちません。
そのため、まずは海外マーケットでどうすれば成功できるかを明確にし、それを実現できる人事制度を構築する、という考え方の順序が必要になります。
撤退を余儀なくされた海外拠点の多くは、進出国の市場シェアを獲得できていません。
市場シェアを獲得できない主な要因は、以下の二つです。

 





逆にいうと、セグメント分析等をしっかりと行い、「どうすれば海外で市場シェアを獲得できるか」という成功要因をまとめておき、その成功要因に対し行動・評価する仕組みを構築すれば、海外拠点が成長するために不可欠な行動=現地社員に求める行動となり、海外拠点の発展を促すことが可能です。

 


4.「自ら作り上げた」という背景構築

多くの日本企業においては、日本製の人事制度をそのまま海外拠点でも適用する、もしくは日本から管理部門長が出張でやって来て、数名のチームで密室にこもり、数日で作成したものを現地ローカルマネージャーに説明して終了、という対応をしています。
そして「この通り運営するように」と言い残し、帰国してしまいます。
これでは、海外拠点で人事制度を運用する機運は高まりません。
現地ローカルマネージャーを初期段階から主力メンバーとして組み入れ、彼らの主体性を引き出しながらまとめ上げていくことが重要です。
彼ら自らが創り上げたという事実が、後々大きな効果をもたらします(実際には70%~80%出来上がっているセミオーダーでもかまいません)。
ページの最後に、本人直筆のサインを入れるのも効果的です。
このように構築した人事制度については、現地ローカルマネージャーが「自分ごと」として受け止め、彼等の部下であるローカルスタッフに熱く制度主旨等を語ってくれるため、組織浸透が想像以上に早まります。



5. ES(従業員満足度)の経過観察が大事

多くの海外拠点では、人事制度が「作りっぱなし」の状況になっています。
そのため、社員の処遇に対する不満が高まり、外資系企業(日系企業と比較して給与水準が高く、昇進スピードが早く、教育制度が充実している)に優秀な人材が流出してしまう、という状況が発生しています。
相当な工夫がないと、優秀な人材の流出には歯止めがききません。
定期的に従業員満足度を評価して、そのポイントが上昇したならば社内PRを徹底的に行い、逆に不満足ポイントについては制度改善策を具体的に提示することが求められます。
この継続的努力が、リテンション(人材確保)に繋がります。

 

6. ポイントのまとめ

上記の主要ポイントをまとめると、以下のとおりです。

7. その他のポイント
また、その他の課題として、以下のような視点も挙げられます。

 

注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。

※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです


【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、
ASEANにジャパンデスク9拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる
「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を
経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、
企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で
多数の支援実績がある。

国際ビジネス支援サービス紹介(みらいコンサルティンググループWEBサイト)

第○条 (定義《例》)

この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。