地場ビルダーの海外展開が急増している状況の中で、前回、前々回と
タイの市場環境および進出企業事例についてお伝えさせていただきました。
今回は、ASEANの中で日本企業の今後の進出検討国ランキング1位の
ベトナムを取り上げます。ベトナムは、国土が日本の約0.9倍、人口9300万人、
平均年齢30歳、1人当たりGDPは2111ドル(2015年)と、ASEAN
各国の中でも開発途上にあるといえます。これからの発展が期待されている国
の一つです。ベトナムは社会主義国でありながら、他のASEAN各国と
比較しても政治は安定しています。
ベトナム戦争などの影響で、外資誘致の取り組みはタイよりも約30年
遅れましたが、1986年にスタートしたドイモイ政策により、海外からの援助や
投資の受け入れを積極的に行い、近年では高度経済成長を続けています。2020年
までに1人当たりGDPを3000ドルに引き上げ、工業国入りを目指しています。
1. 増える新築戸建て購入層
ベトナムの首都ハノイにおける世帯所得は(図1)のとおりです。
世帯所得の上位20%と下位20%で10倍近い差があることは、タイと同様の特徴
ですが、もう一点注目すべきは、世帯所得の伸び率です。2010年〜2014年の
4年間で平均世帯所得が180%以上の伸び率を示しています。世帯所得の伸びと
同じく内需も拡大しており、新築戸建て住宅を買える層も増えています。
ベトナムの戸建て住宅着工戸数推計を(図2)に載せています。
着工戸数は堅調に推移し、35万戸前後となっています。また、直近では、宅地
の開発が次々に許可(ベトナムは社会主義国であるため土地は国の所有物であり、
宅地造成をするためには許可が必要)され、造成地の売れ行きも好調のようです。
2. 好調な高級分譲地
富裕層の市場も着実に大きくなっています。ベトナム大手デベロッパーの
ビングループは、ハノイ近郊で富裕層向けの高級分譲地ビンホームリバーサイド
を手がけています(図3)。
全戸とも人工の河に面しており、分譲地内には
インターナショナルスクール、映画館、大型スーパー、ゴルフ練習場、テニス
コート、フットサルコートなどを完備し、平均販売価格1億円の建売住宅ですが、
1800区画中1600区画が販売済みで、第2期の開発も進んでいます。
3. 親日で高いポテンシャル
ベトナムの住宅市場は、人口650万人の首都ハノイ、人口750万人の経済都市の
ホーチミンが中心です。両都市とも、通勤時の渋滞がひどく、郊外の発展は
遅れていますが、地下鉄計画がホーチミン、ハノイともに8路線計画されており、
2020年に完成予定です。(ただし、現時点で大幅に遅れる予定)。
地下鉄計画の進捗とともに、通勤圏内の開発が進む見込みとなっています。
また、BCGの推定では、2012年に約1200万人だった中間層以上(世帯所得
約100万円以上)が、2020年には約3300万人まで増加するなど、他のASEAN
各国と比較しても急速な世帯所得の増加が見込まれ、住宅産業にとっても大きな
ポテンシャルがあるといえます。
ベトナムは親日国であり、技能実習生の受け入れなどでも、日本の住宅産業に
とってなじみのある国の一つです。また、外資系の企業が独立資本で法人の設立が
できることから、住宅会社を含めた多くの日本企業がベトナムに進出しています。
次回は、ベトナムに進出している日本企業の状況をお伝えします。
※「新建ハウジング」弊社コンサルタント寄稿記事より転載
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