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コラム


年間30棟未満の工務店のための生き残り戦略 セミナーレポート ーvol.2ー

大畑建設株式会社 代表取締役 大畑徳晃氏による
自社の成功の秘訣

▼ お客様アンケートの活用

大畑建設がお客様の支持を得るために最も大切にしているのは、お客様アンケートです。お客様起点であることは、支持獲得の最短ルートです。
みなさんは、一人のお客様に何度のアンケートを取りますか?アンケート取り方からその工務店はお客様をどう捉えているかがわかります。
私達は、お客様からアンケートを4回いただきます。

1回目は、初回面談時です。お客様の現在の住まいの問題点や、弊社に何を求めて来社してくださったのかを知ることを目的としています。つまり、営業サポートのためにあります。つまり、初回面談時しかアンケートを取らない会社は、営業にしか興味がないと捉えられても仕方がないです。

2回目は、ご契約時です。どこと競合したのか、なぜ選ばれたのか、逆に選ばれたけれども他社の良かったところはどこか等、いろいろなことが聞くことができます。

3回目は、お引渡し時です。お客様にとって「快適な住まい」となっているのかを把握することが目的です。

工務店様の皆様は良く「一緒に良い家をつくろうね」と言いますが、誰が本当に良い家だったかを評価するのかが不明確です。私たちはだからこそ、4回目の5年目のアンケートを取っています。これを始めるとき私は本当に苦しみました。ですが、これを取ることで見えてくる世界が変わります。この5年目のアンケートを取るからこそ、われわれは性能にこだわります。

 

ここで、そのアンケートの具体的な利用事例を2つお伝えします。

1つ目は、事務所の改装です。6年前に改装しましたが、その前も実は綺麗な事務所がありました。ですが、お客様のアンケートで「他社の良かったところはどこか」を聞いたところ、「キッズルームがあったのがよかった」との記載がありました。そこで、キッズルームや授乳スペース、おむつの交換台を設置するために改装を決断しました。子育て経験のある社員の声も聞き、トイレには使いやすいという据え置き式のおむつ交換台を設置できるように設計しました。

 

2つ目は、トートバックです。
こちらもアンケートで次のような声があったため作成しました。「色々な工務店を回るにあたって資料を紙袋に入れていたら、雨の日だったので紙袋が濡れて破けて、資料が落ちてバラバラになって大変でした」というものです。そこで、社内会議の上で、他社の資料も入るようにマチを大きく、そして小さなお子様連れの方が多いことから、肩掛けをできる持ち手の長さで作りました。
また、うれしかったのは、家づくりが終わったお客様が幼稚園行事にこのトートバックを持っていったところ、他に同じトートバックを持っている方がいて、思わず笑顔でお互いに会釈をしたそうです。大畑建設を通じて人と人が繋がることがうれしいなと思ったエピソードです。

 

このように、アンケートも活用しつつ、私達を信頼して、一生で一番高い買い物を任せて下さったお客様に真摯に応えなければいけないという想いで、常にお客様に向き合い続けてきました。

そんな甲斐もあって、日経ホ―ムビルダーの住宅調査で純利益率全国1位を3度獲得し、常に10位以内を維持することができています。直近の2018年のデータだとわれわれは4位です。2019年だと2位になります。(『TACT202012月号株式会社住宅産業研究所編調べ)

本来、住宅産業は工務店が担うべきと考えています。何十億、何百億の大きな企業も一つの形かもしれませんが、小さな工務店が頑張って利益を出している産業になってほしいです。このホ―ムビルダーの純利益率上位20社のうち売上高10億以下の企業は残念ながらわれわれだけです。だからこそ私はこの利益率にこだわります。もっと、ここに小さな工務店が出てきてほしいと思っています。

▼ 大畑建設の真の目的とは

さて、われわれの真の目的は何でしょうか?
売上も、利益も、結果に過ぎないと考えております。
そこで、「経営の目的は顧客の支持である」というのが、今、われわれが大切にしている言葉になっています。

これはピーター・ドラッカーの「経営の目的は顧客の創造である」という言葉から取ってきています。工務店業界は持続性が大事なので、創造ではなく支持としています。
とはいえ、支持だけでは食えませんから、支持と売上、利益の関係性が必要です。

支持は経営上、具体的な数値化はできません。そこで、売上を「支持量」利益を「支持質」と捉え、このバランスを保つことが経営と考えるようになりました。 

例を挙げてみましょう。

自動車業界で、トヨタとダイムラーを比べてみましょう。どちらも素晴らしい会社です。
トヨタは支持量、ダイムラーは支持質を目指しています。実際、ギアーの11つまで社内で造るという内製化をしているダイムラーの利益率は、トヨタの倍です。
トヨタは、量の最大化を目指していて、その最終形だと思っています。

トヨタは日本に母工場というものを持っており、国内で車の30%を生産しています。そして、母工場に強くこだわっています。
たとえば新しい型の車を作るとします。母工場で生産レーンを作ってみて、工程や資材の発注、ストック等を最適化します。そして、パッケージとして完成させた段階で、海外のトヨタに売ります。
この形は、住宅業界のフランチャイズ方式によく似ていると思います。成功体験をコピーして売っています。
量産型が成り立つ業種もあれば、成り立たない業種もあります。私は、できれば住宅業界は量産型ではなく地場工務店が担ってくれたらよいと思っています。

▼ 大畑建設の成功の理由

ここで、大畑建設がなぜ成功したのかというお話をしたいと思います。

利益は、毎年12%ほどの利益が残っており、悩んでいません。集客も、1年先まで埋まっている状態です。採用も、現在の幹部陣は国立大学出身ですし、3月の会社説明会にも大卒者が8名もエントリーしています。

これらを成し遂げるためのポイントは、共感を得られるかです。
利益が出なかったりお客様が集まらなかったりするのはお客様から、人財が足りていないのは学生やスタッフからの、共感が得られていないからです。共感が得られていないというのは、他社と比較した際に「差別化できていない」ということになります。

では、大畑建設は何をしたのかというと、信念(経営観、会社の意義・目的等)を軸とした小さな差別化を積み重ねることでした。信念ではなく、売上や利益を軸とした場合、ぶれてしまう。それでは人は信頼しません。信念とは、揺るがざる不動のものです。われわれの信念は、「地域密着」と「次の世代」です。

 そして、これを提唱したのが、フレデリック・ランチェスターです。彼は、「小技も大切だが、信念の無い小手先は通用しない」と言っています。自身が思っていることとやっていることが一致して、初めて成果が出るようになります。言行を一致させることが、経営では最も大事なのではないでしょうか。
そうした信念のもとこのような家をつくっています。

 

そして、こんなご家族の笑顔と将来の子ども達のためにわれわれは働いています。

 

そしてこんな仲間たちと働いています。優秀な仲間が増えてくれて、本当に感謝しています。

 

まずは、信念を明確にし、小さな差別化を積み重ねましょう。儲けることを意識しなくても、そうすれば自然と儲けがついてきます。
儲けるという漢字は、信じる者と書きます。信じる者を創ることだと思っています。信念のもとに、少しずつ改善していくことが、会社を成功させる秘訣だと思っています。

最後に大畑建設の教訓のまとめです。
他人からの「共感」がないと、ビジネスは成り立ちません。信念のもとに「共感」を生む、何を生み出せるのかが重要になります。

▼ まとめ

本日の結論としては、信念を軸として「人にフォーカス」した差別化を積み重ねることが大事ということです。
安藤忠雄さんの受け売りです。
彼は、人との出会いを大切にしていました。そして、こんなことを言っていました。
「人との出会いで得ることは何か。それは真似ることではない。影響を受け取るのだ。影響を受け取るから、受け取る側の感じ方・考え方で多様性が生まれる。だからこそいいんだよ。」
いろいろな感じ方の中で新しいものが生み出され、そこから私が学ばせていただけることを本当に楽しみにしています。

工務店同士が学びあい、切磋琢磨しあうというのがこの住宅業界のあるべき姿ではないでしょうか。ぜひこの業界を一緒に少しずつ変えていきたいと思います。皆様の参考になりましたら幸いです。

▼ 質疑応答

Q1.小さな工務店にある、新卒の採用ができてもすぐに辞めてしまうといった失敗について質問です。採用をして共感をしてもらって育てていくためのポイントは何でしょうか?

A1.毎年毎年リクルートはわれわれも悩みながらやっています。大きい会社さんと競合することも多いのですが、大きい会社の人事の方はひたすら会社のことを説明する中で、われわれは経営についてや、なぜ私がこの業界にいるのかといった話をします。
結果、今年度のある大学の採用説明会では、建築学科の83名のうち23名もの就活生がわれわれのブースに来て、就職課の先生にすごいと言われました。なので、やはり想いを伝えることが重要なのだと思います。

就活中の学生も仕事について悩んでいます。やりがいを求めているので、それを明確に出してあげる必要があります。そして、会社に入って本当にそうだと思っていただけるのかということが大事になってきます。

人材育成で重視していることは関係性だと思っています。大畑建設ではブラザー・シスター制を取っています。制度により直属の先輩がみっちりと教え込むということを1年、2年かけてやります。この制度を取ろうとするとある一定の規模がないと難しいかもしれません。そうした場合は、社長が率先して新卒のメンバーを見ないといけないのではないかと思います。それくらい宝物だと思って大事にする必要があります。

Q2.業績が少しずつ落ちている場合、どんなところをチェックして改善しようとされますか?

 A2.自分たちのベースになるものが何かということを再度確認して、それが世の中のニーズ に合っているのかを考えます。その前提はすべての判断基準はユーザーが持っているということです。業績が落ちているとなると、恐らくニーズに合っていないのではないかと考えられます。

そうした中で、何が悪いのだろうということを探ると思います。つまり、集客なのか営業なのか、どの部分が悪いのかを探ります。
これは上手くいっている会社さんでも同じようにチェックする必要があります。

 

本稿は、2021年3月に開催した「年間30棟未満の工務店のための生き残り戦略セミナー」にご登壇いただいたした株式会社大畑建設 代表取締役 大畑徳晃氏の講演内容を編集したものです。
株式会社大畑建設様は、純利益率全国1位※の実績を持ち、紹介受注比率50%以上というお客様に支持されている工務店です。
※日経ホームビルダー調べ

 

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