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コラム


年間30棟未満の工務店のための生き残り戦略 セミナーレポート ーvol.1ー

大畑建設株式会社 代表取締役 大畑徳晃氏による
自社の成功の秘訣

▼ はじめに

本日は多くの工務店の方々にご覧頂きありがとうございます。また、このような機会を頂きました事にも改めて感謝いたします。
私自身は住宅産業とは本来、工務店が担うべき産業だと思っています。本日ご覧の皆様とその思いが共有できるとうれしいです。
ここからは私が何故、大畑建設を今の形にしたのか?何を目指しているのか?についてお話しさせていただきます。
ただ、経営は多様ですから色々な考えがあっていいと思います。その中で我々の経営観が皆さんの経営に少しでも参考になればうれしく思います。

そもそも、経営とはなんでしょうか?
私も正しい答えを持っているわけではありませんが、最近、小さな工務店の経営のご支援をさせて頂く機会がある中で、会社の規模の大小にかかわらず、経営とは「ほんの少しの未来を予測し、判断すること」ではないかと考えています。
そして、本日は皆さまと住宅業界の未来を予測できればと思います。

▼ 会社概要


 

▼ 住宅業界の状況から鑑みた自社の方向性

住宅業界はどう在るべきだと思いますか?
「未来を予測し、判断すること」が経営だとしたらこの質問は非常に重要になってきます。また、大畑建設の採用においては、必ず学生にこの質問の答えを考えてもらいます。
未来のあるべき姿や自分たちの目的や存在価値を探ることは重要です。世の中に支持されなければ、会社は存続できません。支持されようと思ったら、自分たちはこうあるべきだという考え方を持っていなければなりません。

私は住宅業界について考え、市場の問題点を理解することで、それを差別化要素として自社のアイデンティティにできないかと考えました。
業界を観察することで、顧客視点から「これはおかしい、変じゃないか?」と思うことを見つけ、それを打破することで自社の武器にできないかと考えました。つまり、他社とは違う多様性を自社に導入することで、違う切り口から住宅業界に切り込めないかということです。そうした中で、3つのカギを見つけました。

1つ目のカギは、スクラップ&ビルドの否定です。つまり、長寿命型住宅の普及をしていこうと考えました。高度経済成長期の頃は、つくって壊すということが当たり前でした。その結果、欧米と比べると日本の住宅の寿命は短いです。そうした中で、我々が長寿命型住宅を普及していこうと考えました。

2つ目のカギは、量産型の否定です。工場、展示場、営業チームからなる量産型ではなく、プロとして設計や工務がお客様に携わる。そして自分達が持っている価値基準をもとにお客様に提案する。これが我々のやるべきことだと考えました。

そして3つ目のカギは、クレーム産業と呼ばれなくなることです。現在は悲しいことに住宅産業はクレーム産業と呼ばれています。ただ、全てのお客様のからのクレームをなくすことはできないと考えました。そうした中での最短な解決策として考えたのが、地域密着であることです。きちんとお客様と繋がって、お客様にかわいがっていただいて会社を成立させていくことだと考えました。

 

▼ 方向性(3つのカギ)を定めた理由

この3つがなぜ大切かをお話したいと思います。
私が難しい経営判断をしているかのように思われるかもしれませんが、そんなことはございません。

ピーター・ドラッガーはこう言っています。
「成功するための能力は並みの能力で十分である。」
目の前の出来事をきちんと観察して、それをもとに未来を予測することが重要で、未来がきちんと見えれば、目の前の小さなことに一喜一憂しなくなります。
これが経営の安定につながります。

では、私がどんな情報を観察したのかというと、まずは住宅寿命です。添付のとおり、日本の住宅寿命は諸外国と比べると30年とかなり短くなっています。この30年という短さを日本はこのまま続けていくのでしょうか。
私は、答えはNOだと思います。なので、私は長寿命型住宅にこだわることにしました。



さらに、日本の住宅市場の中古比率は14%に留まっています。しかしながら、アメリカ、イギリスは80%を超えており、フランスやドイツは70%を超えています。このデータをみたときに、ゆくゆくは長寿命住宅が増え、中古住宅の比率も増えていくだろうと考えました。



そして、新設住宅着工戸数の推移と予測です。
私が住宅業界に入った当時は167万戸の市場でしたが、今現在(2021年)は7374万戸です。現在の結果はコロナの影響もあり沈んでいるため、今後数年は80万戸前後で推移すると言われています。そして、2030年には63万戸、2040年にはなんと41万戸というピークの四分の一にまで落ち込みます。

また、分譲系ビルダーの規模別市場占有率についてのデータもご覧ください。500棟以上のビルダーが圧倒的に伸ばしています。土地が差別化要因になる分譲においては、資金があることから仕入れ力がある大きな企業が勝てる市場構造になっています。
私達が考えるべきは、このような構造の市場の中でどう戦うのかということではないでしょうか。


住宅会社は、年間6棟くらいはやらないと、経験量の不足で、対応できる幅が減り、ますますシェアが奪われてしまうようになります。
なので、10棟を切るような会社はかなり厳しくなるのではないかと思います。

2004年の持ち家の着工戸数は71万戸、なので200棟超の企業は25万戸建てていました。ですが、2016年は持ち家の着工戸数は54万戸なので200棟超の企業は24万棟ということで、実は200棟超の規模でも微減しているのですね。市場が落ち込む中で、どこを見てどう判断するのかが、最も重要になります。私はこれを理解したからこそ、先ほどお話した3つのカギを自分の中で思い浮かべ、形にしました。


 

▼ 市場が縮小する中での小さな工務店の生き残り方

「住宅市場が縮小して上位プレイヤーの寡占が進む中で、小さな工務店はどのように生き残っていくのか?」という問いについて、私の答えは、「上位のプレイヤーの真似ではなく、自身の価値観や信条をベースに差別化する事が大切!」というものです。

先ほどもお話をしたように、大きなビルダーが市場を食っており、市場規模としても頭打ちの時代がやってきます。量産型の戦略は、経済が右肩上がりの時代に取るべき戦略だと考えています。私も、20年前だったら量産型の戦略をとっていたかもしれません。ですが、今の時代は市場が縮小しているので、その戦い方はそぐわないと判断しています。

▼ 大畑建設の家づくり

ここで、大畑建設が考える家作り、最もコアな部分をご紹介します。
理念は、「私たちは、『地域』と『次の世代』に愛され、『住み継がれる家づくり』を通じて、社会に貢献することを誓います」です。
理念を「地域密着」「次の世代」というキーワードをもとに、2つのビジョンに分けています。
1つ目の「地域密着」は、「『町医者』のように、地域に根ざし、家づくりの小さなことから、気軽に相談できる身近な存在であり続けます」というビジョンです。
2つ目の「次の世代」は、「『快適な住まい』を追求し、大切に引き継がれる家をつくります」というビジョンです。
この2つのビジョンで会社を運営しておりますので、私達にとって最もコアな部分は、「地域密着」と「次の世代」です。



まず、「地域密着」についてご説明します。
1つ目は、「アフター30制度」です。これを始めるのは非常に怖かったです。何かというと、新たな受注を30分圏内だけにしようという決断です。その時に社員に言ったのは「この30分の圏内で1,000件のお客様がいたら、市場が縮小しても自社は生きられる」ということです。
2つ目は、「オーナーアンケート」です。これについては、後述します。
そして3つ目は、「年1回定期点検フォロー制度」です。年に1回は全棟(約880棟)を訪問しています。年に1回の訪問に加えて年に4回のお手紙、計5回の接点を必ず持つことで、お客様と良好な関係を築けます。


続いては、快適な住まいを追及するということです。
1つ目は、「月間限定2棟制」です。有難いことに、現在(2021316日時点)年内の着工は全て埋まっています。工務店は完工ベースで売上を見ますから、来年の5月までの売上が固まっている状況になり、今年度だけではなく来年度の決算の数字分も見えはじめています。ここまでくると経営者は非常に楽になると思います。また、限定2棟といっても、梅雨の時期(520日から720日)については上棟しないというルールを持っています。
2つ目は、「地域一の“性能”を目指した家づくり」です。性能住宅の普及にも尽力しています。この地域で未来の子ども達に「この地域で一番住宅の性能で貢献したのは大畑さん」と言ってもらいたいという価値基準で、高い性能の住宅を普及しています。
3つ目は、「お客様の期待値を越す現場での提案」です。小さなことができるかどうかが私たちの価値を決めると思っているので、現場にこだわり、図面にこだわり、お客様の要望にこだわります。
次の世代に住み継がれる家、よりよい家づくりをしたいという想いが本当に大事だと思っています。



ここでミッションストーリーをご紹介します。




私達の地域では西日本豪雨の被害がありました。その日は大雨で私は一睡もできませんでした。
翌日の朝6時には私は会社に出て、インターネットで浸水地を調べて、どのお客様が被災したかを調べました。そして8時には近くに住む社員が2人出てきてくれて、電話で全てのお客様の安否確認をしました。
おかげさまで床下浸水は3件だけで、その日の午前中に水中ポンプを用意して排水作業を始めました。これが地域工務店のあるべき姿だと私は思います。だから、私達はエリアにこだわっています。

 

本稿は、2021年3月に開催した「年間30棟未満の工務店のための生き残り戦略セミナー」にご登壇いただいたした株式会社大畑建設 代表取締役 大畑徳晃氏の講演内容を編集したものです。
株式会社大畑建設様は、純利益率全国1位※の実績を持ち、紹介受注比率50%以上というお客様に支持されている工務店です。
※日経ホームビルダー調べ

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