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再来する人不足時代は「社員大工育成」か「木造の工業化」で対策 ーvol.3ー

建築現場の閉所が相次ぎ、人不足から人余りに急転しています。
この時期だからこそできる大工の採用・育成戦略を実行しましょう。


■やりがいを感じられる業務フローを作る

二つ目のポイントは、社員大工として若い世代を育成していくことです。

これは主に注文住宅を手掛けている企業に有効な方法だと思います。
というのも、建売住宅と比べて注文住宅は腕が良い大工が求められるため、社員として時間をかけて育成していくのが有効だからです。

社員大工に関しては、一人前になる前に辞めてしまう、給料に不満を持って辞めてしまうといった課題を感じている人が多いと思います。
その点で一つ補足しておくと、若い人が辞めてしまうのは住宅業界に限ったことではありません。
働き手の意識調査を見ても、一つの企業でずっと働きたいと思う人は30年前よりも今の方が少なくなっています(図3)。



つまり、若い大工にやる気がないわけではなく、若い人たち全体として、以前よりもすぐに辞めてしまう人が増えているということです。
ただし、会社選びの条件としては、今も昔もやりたい仕事ができるという点を挙げている人が多くいます。
そのため、仕事にやりがいを感じることができれば、若い社員大工も長く雇用でき、長く育てられる可能性があるのです。

やりがいを感じる場面を聞いた調査では、仕事の成果を認められることと答えた人が最多でした。
住宅業界でいえば、前述したような評価制度を通じ、会社に技術や取り組みを認められたときがあてはまるでしょうし、さらに効果があるのは、施工した家を施主に褒められたり、感謝され、お礼を言われたときだと思います(図4)。


施主は主に営業担当者が接するため、お礼を言われる機会も営業の方が多いはずです。
しかし、大工をはじめとする現場スタッフも接点が作れます。
施工開始前に施主と顔合わせする機会を設けたり、完工時に接する機会を業務フローに入れることで、大工がやりがいを感じ、自分の仕事に誇りが持てる場面を作り出すことができるのです。
育成のポイントとしては、施工スピードが早い、手直しが少ない、近隣からのクレームが少ないといったポイントに絞って教育することができるでしょう。

これらは優秀な社員大工に見られる特徴ですが、決して属人的なスキルではありません。
教える人がいないから身につかないだけで、仕事の段取り方や時間の使い方、目標や計画の立て方などを教えれば、誰もが優秀な社員大工として成長できます。
組織的に育成できる仕組みや環境が整えば、工業学校の生徒などにリクルーティングでPRすることもできます。

きちんとした育成の仕組みを持っていることは企業の特徴になりますし、その点で、採用や育成はマーケティングであり、他社との差別化になるブランディングでもあるのです。

■工業化で大工の負担を軽減

三つ目のポイントは、木造の工業化です。

建売住宅など規格住宅を主軸としている企業は、この方法が有効です。
木造の工業化はすでに複数のレベルで進んでいます。
生産工場を持つ企業では、例えば、工場でユニットを全て生産し、現場でそれらを組み上げているケース、ユニットまではいかないものの、現場ではパネルにサッシをはめる程度の作業に抑えているケースなどがあります。

建て方や土台敷きを外部に委託し、現場負担を減らしている企業もありますし、サイディングを工場でプレカットするだけでも大工の負担は減り、優秀な大工がより多くの現場を見られるようになります。
冒頭では、将来的に年間3万戸から5万戸が大工不足により建てられなくなるという話をしましたが、工業化によって1棟当たりに掛かる人工が減れば、この数値も減らすことができるでしょう。
工業化の大きな目的は大工など施工に関与する人の手間を削減することです。
また、最終的には量産化などによってコストも削減できるのが理想です。

しかし、現状ではまだ手間とコストを両方削減できているケースはありません。
言い換えると、建て売りや規格商品を開発したり、コスト面で優位性がある生産方法を構築するなどしながら、工業化を推し進めることによって先行者利益が獲得できるということです。

工業化は規模の経済が働くため、資本力のある大手が有利です。
現状は大手でも4%くらいのシェアしか持たず、多くの企業が市場に参加していますが、今後は企業の統合などが進み、複数の主要なプレーヤーによって市場が寡占化していくことも考えられます(図5)。

 

そのようなプレーヤーになるために、または主要プレーヤーと組んで市場を勝ち残っていくよう、建売・規格住宅の企業は、工業化に向けて早急に、かつ積極的に取り組んでいくことが大事です。

 

※本稿は、2020年4月に開催した「地域密着ビルダー成長戦略フォーラム」で登壇した当社コンサルタントの講演内容を編集したものです。

 

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