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中国・ASEAN現地法人のこえ vol.4 現地法人の「現地化」の成功事例とそのポイント

「郷に入れば郷に従え」と言いますが、まさしく現地法人運営のポイントそのものを表現しています。

そんななか、日系企業の現地法人の現地化については、成功しているケースはまだまだ少ないように感じます。

現地化推進で成功した事例と、その成功のポイントを見ていきましょう。

 

 

1.現地化の成功例

 

この会社(製造メーカー)は日本で高度な技術を有していますが、長年中国での販売が伸び悩んでいました。
そこで「現地化」を推進した結果、現地法人の中国人開発スタッフによって中国国内向け新製品の開発に成功し、これが中国で一気に販売を拡大させ業績が回復しました。

この現地法人の責任者である総経理には、日本に留学経験のある中国人が抜擢され、現地開発スタッフの人事権も彼に一任しました。

現地法人は総経理を中心に、主要ポストは全て中国人とし、中国市場戦略、中国製品戦略を独自で構築していき、事業計画や年度予算も独自で立案しています。
日本人の駐在員は、技術的なサポートと、日系企業向けの営業に専念することになりました。

現地法人の人事制度・給与制度も、現地中国人スタッフが納得できる制度を構築し、これにより優秀な社員は日本人スタッフより高額な報酬をとる人材も出てきています。

日本親会社は予算の承認権限は有しているものの、承認された予算の範囲内であれば現地法人の裁量で決定できる体制となりました。
中国の業績はリアルタイムで日本本社からもアクセス可能で、最低限の内部監査機能は整備されています。

現在は第二フェーズとして、一部存在する性善説に基づいた業務手順にメスを入れるべく、内部統制制度の構築に励んでいます。



2.現地化成功のポイント

現地化を成功させるための重要ポイントは、以下のとおりです。

 

権限委譲と説明責任

まず重要なポイントは、現地法人トップに日本本社の経営理念や経営方針を理解納得してもらった上で、現地に権限委譲することにあります。

権限委譲されたからには、現地法人には説明責任が生じますから、日本本社が管理・コントロールするというよりは、必要な情報をタイムリーに日本本社へ伝えることが求められるわけです。

権限を委譲して意思決定をスピードアップしてビジネスチャンスに活かす、これを海外で、かつ現地スタッフ人材で実行するのです。
これが、現地マーケットにマッチした製品開発と販売につながります。

 

ローカルの優秀な人材の確保

上記の点から考えると、現地化で最も頭を悩ますのは、「優秀な現地スタッフの確保」ということになります。

日本本社の考え方を理解し、かつ経営者としての資質を持つ人材の確保は、そう簡単ではありません。能力を優先し、日本人の給与とのバランスにこだわらないことが重要です。
場合によっては、一定期間、日本本社の代表自らが陣頭指揮をとり、優秀な現地スタッフの採用・育成にあたることも有効です。

 

海外現地に合った人事制度の構築

現地法人の従業員のモチベーションを向上するために、現地に合う人事制度の構築は必要不可欠です。
日系企業の現地法人の人事制度がうまく機能しない理由のひとつとして、日本本社が現地法人の人事・労務管理を「日本的発想」で行おうとするところにあります。

人事制度の存在意義のひとつに従業員満足の追求がありますが、国が違えば、就業意識やキャリア意識が異なるので、人事制度が就業意識やキャリア意識とミスマッチしていれば従業員満足の向上にはつながりません。

また、人事制度は「組織の成熟度」と「従業員の教育体制の充実度」に合わせて変化します。日本本社の考え方を伝えながら、現地で働く従業員が何を求めているかをくみ取り、現地に合った人事制度を考えていくことが求められます。

 

日本本社の「戦略的」関与

現地化の促進は、現地法人を「ほったらかす」ことではありません。
逆に、現地化が進めばすすむほど、日本本社は現地法人の「肝っ玉」をにぎって、コントロールすることが求められます。

日本本社が常に持つべきなのは、自社グループにおける「現地法人の位置づけ」です。現地法人は日々の運営を主体的に行うことができても、グループ全体における自分の位置づけを検討することは難しい立場にあります。

日本本社は、経営企画・戦略立案といった観点から海外現地法人の位置づけを常に考え、方向付けしていく立場となります。

戦略的関与をする際には、たとえば以下のような要素に目を向ける必要があります。

 

A) 現地法人の「事業計画」の明確化

現地法人のミッションをひとことであらわすと、「グループ全体への貢献度を高めること」です。その方向付けと進捗状況の把握のために、事業計画は大きな意味をもちます。

事業計画では、主に以下のような点を明確化します。

 

● 海外でどのような事業をやりたいのか(どんな製品・サービスを売っていきたいか)?

● 目標をどこにセッティングするか(短期的な目標と中長期的な目標)?

● 上記目標を実現するために何が必要か(アクションプラン。顧客獲得のための価格設定や販促方法、海外現地法人の社内体制、人材採用と育成の方針など)

● 目標実現のためにどのぐらい資金(コスト)と人員が必要なのか?

 

毎年の年度予算だけではなく、事業計画を明確にして、現地法人に自分の「ミッション」を常に意識させることがポイントです。

 

B) 海外での政策リスク

海外での予期しない法律や規制の変更、税制の変更、および急激な政策の変動等により、現地でのビジネス展開は大きな影響をうけます。最も深刻な場合、ビジネス自体が出来なくなることもあります。

日ごろから、自社の事業に関連する規制やその適用状況に関する正確な情報収集を行うことが不可欠です。

 

C) 製品・サービスの市場環境リスク

顧客の需要動向により市場が極端に縮小した場合、現地法人の業績に大きな影響を与えます。

その反面、市場が極端に拡大した場合でも、事前の準備が出来ていない(たとえば、運転資金がたりない)ことにより市場シェアを失うケースもあります。

従って、常に顧客および市場全体の動向をリサーチする必要があります。

 

D) 知的財産権侵害・技術流出リスク

模倣品などにより知的財産権を侵害されるケースは、海外では多発しています。
海外での特許等の出願は重要な対策です。

また、技術流出は日系企業のグループ全体に影響を与える大きな損失となります。
このような点については日本本社から、体制および関連規定の整備を現地法人に働きかけなければいけません。



注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。

 

※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです


【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、
ASEANにジャパンデスク9拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる
「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を
経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、
企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で
多数の支援実績がある。

国際ビジネス支援サービス紹介(みらいコンサルティンググループWEBサイト)

第○条 (定義《例》)

この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。