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住宅・不動産業界に
フランチャイズという選択肢を。

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4つの失敗事例に学ぶ

フランチャイズビジネスの
実態と課題

はじめに

FC(フランチャイズチェーン)というビジネスモデルが日本で広がったのは、1950年代と言われている。当時は小売り業態や外食業態における多店舗展開の手法として大きな広がりを見せた。その後、戸建て住宅や不動産業態でもフランチャイズシステムが導入され、今では住宅業界だけでも数百を超えるFCやVC(ボランタリーチェーン)が存在している。

既にありとあらゆるネットワークビジネスが存在するにも拘わらず、今でも毎年毎年、FCやVCを新たに立ち上げようという住宅会社は後を絶たない。目新しい商品を開発したから、集客や販売に独自のノウハウを持っているから、他にはない工法を生み出したから…そんな強みをもった会社が、ややもすれば安易にFCやVCを立ち上げる傾向があるため、次から次へと新しいネットワークが誕生している。

しかしその一方で、2、3年のうちに姿を消してしまうFC・VCも枚挙にいとまがない。弊社リブ・コンサルティングは1年間で1,000社近くの住宅会社と接点を持っており、FCやVCを展開している会社やこれから立ち上げようという会社とも数多く接しているが、感覚的には5社に4社、すなわち8割程度のFC・VCは、3年程度でいつのまにか自然消滅していると推測される。そういった短期間で消えていくFC・VCに見られる共通点は、明確なビジョンや具体的計画もないまま、ただ親しい仲間うちの社長から「そのノウハウ使わせてくれないか」と言われて、「だったらFC展開してみようか」と安易に始めてしまうことにあるように思う。

もちろんそうしたきっかけでFCやVCを考えること自体は悪いことではない。新築事業だけでの成長が難しくなる中で、自社の強みを生かした横展開としてFCやVCのようなネットワークビジネスをやることは、住宅会社の成長戦略の1つの選択肢となり得るだろう。しかしながら、どのような新規ビジネスもそうであるように、ビジョンや戦略、計画性に乏しい新規ビジネスの成功確率は極めて低い。ましてやFCのようなネットワークビジネスは、自社のみならず加盟店を成功させるという、ある意味で直営展開よりも難易度の高いビジネスモデルなのだ。その分、上手くいけば少ない経営リソースで大きなリターンを得られるビジネスではあるが、やるからには相応の覚悟を持って取り組む必要がある。

そこで本コラムでは、5回に亘って「よくあるフランチャイズビジネスの失敗パターン」を例に、どうすればFC・VCの展開を成功させることができるのかを、分かりやすくひも解いていきたいと思う。

思いつきでFC展開を始めたものの、
加盟店からクレームが頻発し
早々に疲弊してしまったA社の事例

A社は中部エリアで事業展開をする住宅会社で、高いデザイン性と、一定水準の性能を満たしたコスパのよい注文住宅がお客様から支持され、地元ではナンバーワンのシェアを有していた。一時期は強みの商品力を生かして積極的に多拠点展開をしていくことも考えたが、人の採用や育成がそこまで追いつかず、同県内での出店に留まっていた。

そんな折、親しくしている東海エリアの住宅会社B社の社長から、「自社でもその商品を売らせてもらえないか」との申し出を受ける。B社は年間30棟程度を販売する住宅会社で、こだわりの家づくりで高い顧客満足を誇るものの、デザイン性などに課題があり、集客が伸び悩んでいるという。自前で商品開発をする力はなく、A社のような商品が欲しいと思っていたというのだ。

A社社長は、自社の商品をそんな風に評価してくれたことを嬉しく思う反面、B社に商品を提供するといっても、どういう方法がよいのか考えあぐねていた。そこで、別の親しい住宅会社C社の社長に相談してみたところ、「それならうちもぜひA社の商品を売らせて欲しい。ちょうどその価格帯の商品が欲しいと思っていたんだよ。どうせならFC展開すればいいんじゃないか」と勧められた。

「なるほど、FCか…。それなら自社に人的リソースがなくても、この商品でエリアを広げていくことができるかもしれないな」。

そう思い立ったA社社長は、とりあえず自社の顧問弁護士にFCの加盟契約書を作成してもらい、B社、C社と加盟契約を結ぶことにした。

加盟店のフォローに追われる日々の到来

とりあえずやってみよう、という勢いではじめたものの、A社はフランチャイズビジネスに関しては、ほぼ無知な状態であった。自身もどこかのFCに加盟したことはなく、本部が果たすべき役割と、加盟店に担ってもらうべき機能との明確な区分もないままFCをスタートさせたことが、その後どのような事態を招くか全く想像できていなかった。

最初の加盟店であるB社の社長からの紹介もあって、初期の段階でB社、C社、D社という3社の加盟店が立ち上がることになったのだが、当然ながらそれぞれの会社で得意不得意は全く異なっていた。施工品質にこだわりの強いB社からは、「この部分の収まりはどうなっているのか?」「この施工マニュアルでは不十分なので、もっと細かい部分まで作りこんで欲しい」などの相談や要望が多く寄せられることとなった。

かたや営業力を強みとするC社からは、「もっと分かりやすい営業ツールが欲しい」「ホームページからの問い合わせのお客様を本部ではどのようにランクアップさせているのか?」、さらには「誰でも同じように売れる必要があるので営業マニュアルが必要」など、受注につなげるための仕組みに関する相談や要望が次々と寄せられた。

さらにD社は、自社の仕入れ力が乏しく、本部が試算した原価と同じようなコストでは建てられないから、本部から部材を供給してもらえないか、といった相談も受ける始末…。やむを得ずプレカットメーカーや設備メーカーと交渉し、本部と同じ条件(掛け率)で卸してもらうことの了承を得たが、そのために独自の発注システムを大急ぎで整えなくてはならなくなった。

次から次へと出てくる加盟店からの相談や要望への対応に追われ、A社の直営部門の業績は低迷することとなった。加盟店のサポートに奔走し、自社の販売や施工に注力しきれなかったからだ。それでも加盟店からは満足されるどころか、サポートが後手後手すぎるとクレームのように言われ、A社の社長は思わず心の中で「そっちが売りたいと言ってきたのだろう」とぼやきたい気持ちを必死で抑え込んだ。たった3社の加盟店を持っただけなのに、FCなんて手間がかかるばかりで何も旨味がない…と既に嫌気がさしていた。

なぜこのようなことが起きたのか?

このケースの失敗の要因はどこにあったのだろうか?それは大きく3つのポイントに整理ができる。

1点目は、提供するFCサービスが、どのような経営課題を解決するためのソリューションパッケージなのか、を明確にしなかったことである。一口にFCといっても、様々なソリューションパッケージが存在する。高い性能水準を実現する独自の工法や仕様といったハード的なソリューションもあれば、集客や営業といった売るための仕組みを磨き上げ、高い集客力と契約率を実現するためのソリューションもある。あるいは、共同購買のようなシステムでコストを抑えた家づくりを実現するローコスト住宅のソリューションも存在する。いずれも、事業者が抱える何かしらの課題の解決につながるノウハウや仕組みを本部が提供する形だが、「このFCに加盟すれば全て解決しますよ」などといった全能型のFCなど存在しない。従って、FC本部は加盟店を募る際に、できるだけ分かりやすく「何の課題を解決するために、こういうノウハウを提供しますよ」と伝える必要がある。そしてそのソリューションを必要とする住宅会社にのみ加盟を意思決定させるべきである。

2点目は、本部が提供するサービスとその対価を具体的に示していなかったことである。どのような課題を解決するためのソリューションかを明確にしたら、それに基づいて本部は、どこまでの、どのようなサービスやノウハウを提供するのか、それに対してどれだけのフィーを払ってもらうのか、を定めることが重要だ。そこが曖昧だと加盟店は何に対して本部にフィーを払っているのかわからず、何でもかんでも本部に相談すれば解決やサポートをしてくれるだろう、と思い込む。携帯電話の利用料のように多少分かりづらさはあったとしても、基本料金に含まれるサービスは何で、それ以外のサービスを受ける場合は、別途フィーをいただきますよ、ときちんと説明し、示すことがその後のトラブルを防ぐことにつながる。

そして3点目は、そもそもの仕組み化・標準化レベルの低さの問題である。フランチャイズ展開と直営展開の一番の違いは、自社が直接マネジメントできない他人がそのビジネスを担うことだ。つまり、自社内であれば全てを仕組み化・マニュアル化せずとも、ある程度、共通の考え方ややり方が土壌にあり、一定の教育とマネジメントをすることで、やるべきことを徹底させることができるだろう。しかしながらFCの場合、異なる価値観や手法で事業を行っている他社が販売・施工することとなるので、一つひとつ細かなところまでルールや基準、手法を定め、明文化して示すことが不可欠となる。そうすることで初めて、本部と同等レベルで販売や施工ができるようになるのだ。これを「成果の再生産」という。この「成果の再生産」ができるソリューションパッケージになっているか否かが、FCの成否を左右すると言っても過言ではない。

これからFCやVCを立ち上げようかと考えている住宅会社・不動産会社の方は、ぜひこれらのポイントをしっかり熟慮した上で、FC化の準備をされることをお勧めする。

次回コラムでは、失敗から学ぶFCビジネスのポイントとして「パイロット加盟店での検証なしに加盟開発に走って崩壊してしまったケース」について取り上げたい。

パイロット加盟店での検証をせず
一気に加盟開発を促進した結果、
加盟店の成果につながらず
悪評になった事例

前回は、思いつきでFC(フランチャイズ)展開を始めたものの、加盟店からクレームが頻発し早々に疲弊してしまったA社のケースを例に、FC事業において押さえるべきポイントを解説させていただいた。

今回も同様に、実際にあったFC事業展開の失敗事例を取り上げながら、新たなポイントをお伝えしたいと思う。

パイロット店、という考え方をご存じだろうか。多くは小売り店舗で導入されているものだが、新しい店舗戦略などを本格的に全店展開する前に、試験的に運用・効果検証を行う実店舗をパイロット店という。FCやVC事業においても、このパイロット加盟店でのトライアル検証が非常に重要となる。

自社開発したローコストの企画住宅がヒットし、販売棟数を一気に伸ばしたE社は、自社商品に自信を深め、これをFC展開しようと思い立った。自社ではこの企画住宅を、20代半ばの若手社員が平均年10棟ほどを販売しており、若手でも売り易い商品として、きっと他社でも欲しがるだろうと考えたのだ。そこで、ブランドロゴやコンセプト、外観デザイン、プラン集といった商品に関する意匠やノウハウだけでなく、販売のための営業ツールやホームページのコンテンツなども加盟店向けに提供できるように、ソリューションパッケージとして取りまとめた。

その後、E社はすぐに加盟開発をスタートさせた。業界メディアに広告を出したり、加盟開発を目的としたセミナーなどを開催した。また、以前から付き合いのあった建材商社やシステム会社にも紹介を依頼し、加盟店を募った。すると、若手でも売れるローコスト企画住宅が欲しいと考えていた住宅会社は沢山いることが分かり、まずまずの反響を得ることができた。そしてその中の4社が早々に加盟を決めてくれた。

「なんだ、FC展開も思っていたより簡単だな。この調子なら一気に50社ぐらいは集められるかもしれないな…」そう考えたE社の社長は、意気揚々と加盟開発の活動に力を入れていた。

そうこうしているうちに、初期の加盟店が稼働し始めたころから、ポツポツと問題が勃発することとなった。ある加盟店F社は、「立上げ時に何が必要で、どのようにスタートするのか、何も決まってないじゃないか。営業研修はいつ実施してくれるのか。ホームページのコンテンツも渡されたが、これをどうやって掲載すればいいんだ、本部のサイトには、うちのことは掲載してくれないのか。そういう細かいこともちゃんと本部がリードしてくれないと困る」とクレームを言ってきた。確かに、加盟後のフローなど細かいところが詰め切れておらず、とりあえず加盟店ごとに都度質問に答えるような形で対応していた。結果として、本部の対応は後手後手になっていた。

またある加盟店G社からは、「今のプラン集では自分たちのエリアの土地には上手くはまらないことが多いので、もう少し小さい坪数のブランと、できれば3階建てのプランも作ってくれないか」といった要望を受けることとなった。そうした要望に応えたい気持ちは山々だったが、社内の設計人員の手が回らず、新しいプランをつくるのに数か月を要することとなった。その間、G社の販売活動はほぼ停滞してしまっていた。

さらに別の加盟店H社では、営業人員の数も限られており、H社の既存商品である注文住宅の営業を行っているメンバーが兼任で、企画住宅も営業することとなった。つまり、これまで通りの集客ルートで来店されたお客様の中で、予算の合わないお客様がいた場合に提案する商品、と位置づけられた。すると、予算の合わないお客様も拾えるようになったのは良かったものの、企画住宅を売り慣れていない営業メンバーが提案したため、元々注文住宅希望のお客様からのプラン変更希望を断ることができず、企画なのに勝手にプランを変えてしまう売り方が横行することになった。これでは単に販売単価が下がっただけで、業務の手間は注文住宅とは何ら変わらず、営業利益率が下がる結果となってしまった。棟数そのものも大きな上乗せとはならなかったため、H社は早々に企画住宅の販売を断念した。

このように、いざ加盟店が立ち上がると、想定していなかった様々な問題が噴出し、本部はその対応に追われるものの、加盟店の実績は一向に伸び悩み続けた。結果として、加盟店を増やすどころか今の加盟店を何とか上手く稼働させるために時間と労力ばかり割くこととなった…。

こうした事態は防げなかったのか?

今回のケースの大きな失敗要因は、パイロット加盟店によって本部が提供するサービスやノウハウが十分効果の出るものなのかを検証しなかったことにある。本来、FCやVCを展開する際は、いきなり本加盟を募るようなことはせず、元々付き合いのある会社にパイロット加盟店として加盟してもらい、そこで効果の検証や問題点の洗い出しを行った上で、サービスパッケージの完成度を高めるプロセスをとる。このパイロット加盟店での検証を怠ると、蓋を開けた途端に予期せぬ問題が多発し、その火消しに追われるといったことが生じるからだ。結果として、その後の加盟開発に悪影響を与え、ネットワーウ拡大の足かせとなる。

したがって、ネットワーク展開の初期の段階で、必ずパイロット加盟店の協力のもと、サービスパッケージの効果検証を行うことが重要である。自社(直営)で上手くいったからといって、他社でも同じように成果が出せるとは限らない。きちんと自社以外で成果が出ると検証されたノウハウやサービスこそ、本物のソリューションと言えるのであって、そうではないパッケージは、単に1つの成功事例をマニュアル化して売っているに過ぎない。それは決してFCのあるべき姿とは言えない。

反対に、パイロット加盟店によるトライアルで問題点が改善され、ノウハウやサービスがブラッシュアップされて加盟店でも成果を出すことができれば、その後の加盟開発は非常に円滑に進むことだろう。他社で成果が出ることが実証されているわけなので、きちんと取り組めば成果は出せますよ、と説得力を持って提案することができるからだ。

初期の段階できちんと成果を検証し、その後の好循環を生み出すか、あるいはいきなり加盟開発に走って問題やクレームを噴出させ悪循環に陥るか。長い目で見たときにどちらが望ましいか、賢明なご判断をぜひしていただきたい。

次回はまた新たな失敗ケースを例に、FC・VC事業のあるべき姿について考察を深めることとする。

簡単に模倣できてしまうノウハウで
3年目に加盟店が半減した
フランチャイズチェーン

今回は、いかに加盟店に長く継続的にフランチャイズに加盟しつづけてもらうか、について考えてみることとする。
フランチャイズシステムは、加盟店にとって、自社にないノウハウやサービスを手軽に取り入れることのできる仕組みとして活用されている。しかし、そうして得たノウハウは必ずしも持続可能なものとは限らない。それは、本部と加盟店、双方に要因がある。
例えば本部側の要因としてありがちなのは、本部が提供するノウハウやサービスが進化せず、やがて陳腐化してしまうケースだ。加盟当初は価値があったものの、徐々に住宅購買者のニーズにそぐわないものとなってしまい、加盟し続ける価値を失ってしまうと、加盟店は退会する。
対して加盟店側の要因としては、本部から得たノウハウをもとに自社でより優れた商品や工法、集客、営業のノウハウを開発することができれば、高いロイヤリティを払い続ける必要はなくなる。したがってこのケースも、加盟店の退会につながる。
ではどのようなFCであれば、加盟店は継続して活動してくれるのだろうか。あるFCの失敗ケースをもとに大切なポイントを紐解いていきたい。

CASE3|簡単に模倣できてしまうノウハウで、3年目に加盟店が半減したフランチャイズチェーン

昨今では、注文住宅より営業効率がよく、後ろ工程の手間も少ないため事業回転率が高まることから、企画住宅商品を販売する住宅会社は少なくない。K社もいち早く企画住宅を開発し、3つのコンセプト企画商品と、それぞれのプランを数パターン作成した。またできるだけコストを抑えるために、仕様も単一メーカーのもので標準化して展開することにした。コストを積算したところ、おおよそ原価は1,000万円と算出された。そこで、粗利率を35%見込み、販売価格を1,350万円で売り出すことになった。

分かりやすいコンセプトと魅力的なプランがお客様から評価を得て、初年度から目標を上回る棟数を販売することができた。これは良い商品ができた、と自信を募らせた社長は、同業の友人経営者の勧めもあって、この企画住宅をFC展開することとした。工法などの特異性もなく部材も本部から供給はしない、あくまでも商品企画と集客・営業ノウハウの提供パッケージであるため、加盟金は低く抑えて100万円、月々のロイヤリティは共同広告費として10万円と設定した。また、モデルハウス建設を条件としなかったこともあり、加盟ハードルが低いことが功を奏して、1年ほどの間に10社以上の加盟につながった。

しかし、加盟契約の初期契約期間である2年を過ぎたタイミングで、加盟店の退会が相次ぐことになった。理由を詳しく聞いてみると、多くの加盟店が自社で似たような企画住宅を開発し、そちらを販売することにした、といった事情があることが分かった。K社の社長はノウハウを真似されたと憤りを感じたが、とはいえ特許や商標などの縛りがあるわけでなく、全く同じものではない以上、加盟店の商品開発をやめさせる権利を持ち合わせていないため、諦めざるを得なかった。そうして徐々に加盟店の数は減り、K社はFCを維持していくことを断念することとなった。

加盟店との契約を継続的にするためには「模倣困難性」と「縛り」が不可欠

フランチャイズシステムは、ノウハウの売り切りパッケージとはことなり、加盟し続けることのメリットがない限り、継続性は担保できない。そのため、加盟店が簡単には真似できない「模倣困難性」や、退会してしまうと大きなデメリットにつながる「縛り」が不可欠なのだ。

「模倣困難性」の代表例が「特許」である。本部が独自に開発した特許工法やビジネスモデル特許がこれに該当する。加盟店は、加盟することでこうした特許ノウハウを活用する権利が与えられるため、加盟のメリットが感じやすく、また特許法により模倣も困難なため、そのノウハウを使い続けたい場合は、必然的に加盟し続けるしかなくなる。

特許とは異なる形の模倣困難性の例は、そのFCの「カンバン」に高いブランド力を有しているケースだろう。既に全国的に知名度があるような商品ブランドの場合、いくら似たような商品を自社で開発したとしても、同様の集客力を持てるとは限らない。住宅購買者はブランドそのものに信頼を寄せ、安心感を感じているため、商品に興味を持つ。そうした全国規模のブランド力は、1社単独ではとても形成できないものだ。

一方、「縛り」がある代表的なケースは、本部が集客ルートを握っている場合である。例えば、本部が運営するブランドサイトが高い集客力を有しており、加盟店はそのサイトを通じて毎月一定数の新規リードを得ることができる。こうしたサイト集客を核としたFCの場合、退会すると当然ながら集客ルートを失うことになるので、簡単には退会できなくなる。不動産系のフランチャイズの多くは、このパターンと言えるだろう。

あるいは、本部に部材を安く仕入れられる購買力があり、加盟店は本部を通してそれらの部材を仕入れることができるため、建築コストを低く抑えることができるケースもある。ネットワークビジネスは規模の経済効果が得られやすいため、共同購買で仕入れコストを下げることができれば、加盟し続けるメリットにつながる。また、退会すると仕入れコストが上がってしまうため、退会そのものが大きなデメリットとなってしまう。

このように、FCを展開する場合は最初の段階で、何が「模倣困難性」もしくは「縛り」になり得るか、そしてそれらがしっかりとビジネスモデルに組み込まれているかを考えておく必要がある。もし既に展開されているFCで、これらが十分ではないと思われる場合には、あとからでも付加していくことが望ましい。例えば、革新的な販売システムを構築しビジネスモデルの特許やグッドデザイン賞を獲得するのも一つである。もしくは、既に加盟店が数十社以上のネットワークになっているのであれば、そのネットワーク力を生かし、規模の経済性を働かせて共同購買・共同仕入れのような仕組みでコスト競争力を高めたり、加盟店が必要とする新たなサービスを次々と展開するなど、本部が研究開発力を発揮することができれば、加盟店はそのネットワークに加盟し続けるメリットが生じる。裏を返せば、そのような進化なくして、FCを長く継続的に発展させることはできないだろう。

フランチャイズビジネスを一過性のものとせず、常に進化し続けるネットワークとするための努力を、ぜひ続けていただきたい。

3年で100社近い加盟店を集めたものの
すぐにピークアウトしてしまった
不動産系ネットワーク

今回は、多くのフランチャイズが立ち上がるものの数年後にはその大半が事業のピークアウトを向かえてしまう要因について考えたい。その主たる要因は「商品・サービス・ノウハウの陳腐化」にあると思われる。

例えば外食のFCの場合、本部は常に新業態の開発を研究している。外食チェーンは、1つの業態寿命が5年程度と言われているからだ。従って、5年後には撤退を余儀なくされる店舗も増えてくるため、それに代わる新たな業態を開発し続けなければ、事業の成長どころか存続すら危うい。

一方で住宅のFCを見てみると、5年サイクルで新しい商品やサービスを生み出しているFCというのは非常に少ない。エンドユーザーの志向性や他社との競争といった外部環境は刻々と変化しており、本来であれば外食チェーンと同様に、一つの商品・サービスが持つ競争力は、何もしなければ衰えていくはずである。にもかかわらず、ノウハウのブラッシュアップや新たな商品・サービスを生み出すための研究開発に注力できている本部は、少ないように見受けられる。それゆえ、多くのフランチャイズが、4年目ぐらいにピークアウトし、そこから徐々に加盟店数が減り続けるという状況に追い込まれている。

対して加盟店側の要因としては、本部から得たノウハウをもとに自社でより優れた商品や工法、集客、営業のノウハウを開発することができれば、高いロイヤリティを払い続ける必要はなくなる。したがってこのケースも、加盟店の退会につながる。

CASE4|3年で100社近い加盟店を集めたものの、すぐにピークアウトしてしまった不動産系ネットワーク

売買仲介や中古再販事業を展開する不動産会社向けに、ニッチな領域の営業ノウハウをパッケージ化し、ネットワーク展開を進めたA社。専用ポータルサイトも立上げ、本部主導により一定の反響獲得もできていたことから、加盟店は順調に増え続け、3年間で100社近いネットワークへと成長した。

当初の魅力は、本部からの反響リストの提供と、ニッチ領域における細やかなノウハウが営業マニュアルやツールとして提供されることだった。社内に知見がなくても、加盟するだけでそうしたノウハウが得られるため、小規模の不動産会社や、新築事業を主体としながらも不動産事業も展開する住宅会社などが多く加盟した。

しかし、当初はニッチな領域と思われたマーケットにも、徐々に参入プレーヤーが増加していった。同じようなポータルサイトも多数立ち上がり、営業手法も似たり寄ったりなやり方をする会社が増えた。結果として競合との差別化が図れず、反響そのものが伸び悩むとともに、反響があっても専任媒介が取れないケースが増えることとなった。

当初はお客様を惹きつけた営業ツールも、他社と代わり映えしないものとなり、お客様の反応も乏しくなっていった。にもかからず、新たなツール開発や営業シナリオの見直しはなされないままだった。加えて、デジタル主流の流れに乗り遅れたことも致命的だった。以前の成功パターンだったチラシやDM中心のプロモーションに費用の多くを費やし、デジタル広告へのシフトが遅れてしまったのだ。反響数が低迷していった要因はここにある。

その結果、FC展開の4年目ぐらいから徐々に加盟店の退会が増えはじめ、同じようなサービスを提供する他のFCに乗りかえる加盟店や、もう一通りのノウハウは学んだからと、自社で独自に取り組む道を選ぶ加盟店が続出した。一時期100社近かった加盟店数は、5年が終わるころには半減してしまっていた。

FC本部の本来の役割は「研究開発」にあり

いかなる商品やサービスも、永遠に競争力を持ち続けることなどありえない。それが魅力的な市場であればあるほど、参入プレーヤーは増え、やがて競争環境は厳しくなる。あるいは、一時期トレンドを捉えていた商品やサービスであったとしても、お客様のニーズや関心は変化するので、そうした変化に適応できなければ、お客様の支持は得られなくなる。

例えば戸建て住宅のトレンドの変遷を見ても、輸入住宅、「子育て」などのコンセプト住宅、デザインローコスト住宅、省エネ住宅、平屋等々、ブームとなった商品は数多くあるが、いずれも一時期大きく棟数を伸ばしたに過ぎない。したがって、事業成長を続けるためには、フランチャイズであろうと自社商品であろうと、次なるトレンドを見据えて継続的な研究開発が欠かせない。

しかしながら、一住宅会社が独自に研究開発を行うには限界がある。投資コストの面もそうだが、そもそも商品開発ができる人財がいないことも多いからだ。それに対してフランチャイズの場合、本部は元々商品やノウハウ開発ができたからこそ本部をやっているわけであり、また、加盟店から得たロイヤリティという原資もあるので、それを研究開発投資に回すことも可能である。ネットワーク展開のメリットでもある「規模の経済」から、同じ水準の住宅であればより安い原価で実現できる優位性もあるだろう。

不動産系ネットワークのようにカンバンやサービス・ノウハウを提供するFCにおいても、新サービスを開発した際に、共同広告として一気にプロモーションを掛けることで、市場の認知度を高めることも可能である。新サービスのトライアンドエラーがスピーディに進むことで、サービスのブラッシュアップが早いことも強みだ。

こうしたネットワークサービスが本来持つ強みを生かしつつ、研究開発投資をしっかり行うことが、FC事業を持続可能なものにする。裏を返せば、研究開発を怠ったFC本部は、やがてお客様も加盟店が離れていくこととなり、「一時の成功」に終わってしまいかねない。直営展開との最大の違いとして、加盟店はメリットがないと判断すればすぐに離れていってしまう、ということを肝に銘じておかなければならない。

次回は、高いロイヤリティが加盟店の収益を圧迫し、Win-Winにならなかったフランチャイズのケースをお伝えしたい。

Writer

  • 大島奈櫻子
    株式会社リブ・コンサルティング
    住宅・不動産インダストリーグループ
    マネージャー
  • 京都府出身。大学院にて経済学修士取得後、大手経営コンサルティング会社に入社。住宅・建設・不動産業界を中心に50社以上のコンサルティングに従事。自社のネットワーク事業の立ち上げにも携わる。2013年、リブ・コンサルティングに入社。新規事業立ち上げや海外事業進出等のコンサルティングに携わる傍ら、自社のマーケティング企画の責任者としても活動。