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コラム


若手強育Vol.12 「よい指示出し」で成長を促す

●はじめに

時計の針は21時をまわった。

疲れを感じながらも、あなたは、部下のA君が提出した資料に目を通す。

 

 

 

「全然だめだ、こちらが指示した内容の意図をくみ取ってくれてない・・・」

とため息をつく。

 

 

「彼なりに一生懸命やっているのだろうから、怒るのも可哀想だが、

これではお客様にお出しできない・・・」

 

 

 

「なぜ、部下は、自分の指示通りに仕事を仕上げてくれないのだろう」

と思いながら、あなたは夜中まで資料を修正し、

お客様のプレゼンの為の準備に明け暮れることになった・・・。

 

 

 

このように、部下に仕事を指示したものの、

出てきたものが期待値よりもかなり低いレベルだった、

というケースは少なくないことだろう。

 

 

 

だが、実は、その責任の半分以上は自分自身にあるということに

お気づきだろうか。

 

 

 

今回のテーマは、「仕事の指示出し」次第で部下の仕事の質も、

仕事を通じた成長度合も大きく変わることをお伝えしたい。

 

 

 

●仕事の指示の仕方は、「3パターン」

 

 

 

まずは、自分自身の仕事の指示出しについて振り返ってみてほしい。

 

 

 

質問① 仕事の指示をする前に、伝える内容や伝える順番を熟考

してから、部下に指示を出しているか

 

 

 

どうだろう。

多くの方が、「NO」とお答えになったのではないだろうか。

 

 

 

つまり、仕事を思いついたタイミングで、思いつくままに

仕事を振ってしまっている、ということだ。

 

 

 

実は仕事の指示の仕方には、大きく分けて3つのパターンある。

それは、「渡す」「振る」「投げる」の3種類である。(下図参照)

 

 

 

 

 

 

「投げる」というのは、仕事内容や簡単なやり方を伝えるだけの

指示出しの仕方だ。

 

 

 

「〇〇様邸の見積もり、よろしく」

「〇〇様邸の図面を清書化しておいて」等、

日常のほとんどの指示は、実は相手に「投げている」ケースが多い。

 

 

 

「振る」というのは、仕事の内容、詳細なやり方に加え

ゴールまでを伝えるパターンである。

 

 

 

部下自身にゴールを考えさせる振り方もあるが、この場合、

ゴールがずれてしまうことがあるため、

費やす作業時間が長くなりがちで、納期に余裕を持たせる配慮が必要である。

 

 

 

「渡す」というのは、仕事の内容、方法、ゴールに加え、

目的・背景や実行者にとっての意義を伝えるパターンである。

 

 

 

そもそもの業務の目的や背景は、指示を出す側にとっては鮮明であっても、

細部を切り取られた状態で受け取るメンバーには

理解できていないケースが多い。

 

 

仕事の意義についても同様である。

 

 

 

このように、仕事の指示の仕方一つをとってみても、

その方法は様々なのだ。

 

 

 

●「方法」と「ゴール」の伝達が、仕事の品質を決める

 

 

 

このように、指示の出し方について工夫することが、

仕事の質向上や部下の成長には大変重要である。

 

 

 

なぜなら、仕事の出来栄えがばらつく理由は、

「内容」「方法(やり方/手順)」「ゴール」が

上司と部下の間でギャップがあることが殆どだからだ。

 

 

 

例えば、まだ経験の浅い工務メンバーに対して、

造作の収まりについてチェックするよう指示を出したとする。

 

 

この場合、仕事の内容については明確であるが、

「方法」と「ゴール」を明示する必要がある

 

 

 

方法とは、具体的に実施する手順のことで、

料理でいうレシピのことである。

 

 

 

そのメンバーの経験にもよるが、初めての業務であれば、

大工の管理方法や現場のチェックすべきポイント等

なるべく詳細にその手順を教えなければ、部下は実践できないだろう。

 

 

 

またゴールとは、最終的な「収まり完成のイメージ」のことである。

 

 

 

詳細図までを書く必要はないが、簡単に図に書いて示したり、

事例写真を見せたりすることで、ゴールイメージを確認する必要がある。

 

 

合格ラインのイメージが擦り合っていなければ、

当然、仕上がりにばらつきが生まれてしまう。

 

 

 

指示出しの際に伝えるべき「方法」、「ゴール」は、

仕事の難易度(求められる品質の高さ)、担当者の力量、

納期(期間)等によって、大きく変わるものである。

 

 

 

従って、指示を出す前にそれらについて勘案し、

どこまでを伝えるかを検討する時間が必要となる。

 

 

 

それによって、実施担当者の仕事の質が決まるのである。

 

 

 

●「目的(背景)」と「意義」の伝達が、仕事の品質とメンバーの成長を決める

 

 

 

あなたは、指示する仕事を通じて、部下にどのように成長してほしいかを

考えながら仕事を指示しているだろうか。

 

 

 

例えば、引き渡し式の執り行いをしてほしいと、

あるメンバーに指示をしようとしたとする。

 

 

 

ここで部下の成長を引き出そうとすると、

「目的(背景)」と「意義づけ」が重要になる。

 

 

 

目的(背景)とは、その仕事が必要とされる理由のことだ。

 

 

 

例えば、引き渡し式を開催する目的は、

お客様の感動満足を高める為であり、お客様の感動を通じて、

社員に働きがいを持ってもらう為である。

 

 

 

引き渡し式というお客様の満足度に影響する重要な役割を

あなたに任せたいと伝えることで、仕事の意義づけができる。

 

 

 

仕事の意義づけができれば、任された者は

モチベーションを高くもって仕事に取り組む為、

成長に繋がりやすい。

 

 

 

大事なことは、その仕事を通じて成長できるポイントを伝えることである。

 

 

 

今回のケースであれば、引き渡し式の執り行いを通じて、

 

 

・お客様を感動させるための工夫の実践

・営業、設計、工務をとりまとめるリーダシップ

 

 

などを身につけてほしいと伝えることで、

部下が仕事を通じて伸ばすことができる能力も鮮明になり、

それを意識した行動ができるようになる。

 

 

 

ただ漫然と仕事を行っていても人は成長できないが、

仕事の意義を感じ取り、具体的な成長点に気付くことで

成長を遂げることができる。

 

 

 

これまで述べてきたように、同じ仕事であっても、

仕事の指示の仕方ひとつで部下の「仕事の質」と「成長」は

変わるということが感じとっていただけたと思う。

 

 

 

ぜひ、今日から仕事の指示の仕方を変えて、

部下の成長を促していただきたい。