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海外進出Q&A vol.10 海外赴任者の手当と社会保険

Question.

海外赴任者に支払われる「手当」には、どのような種類のものがありますか?

Answer.
1) 「海外勤務手当」が設計されるのが一般的です。

2)その他、下表のような種類の手当があります。

1. 海外赴任者に関する手当

海外赴任者に対して設計される手当には、以下のようなものがあります。

 

2. 実務対応上の留意点

手当は、海外赴任に関する不利益を補てんする目的と、企業の海外事業を活発化させる目的の二つを有しています。

特に、「海外勤務手当」をどのように決定するかは、非常に重要です。
低すぎれば、海外赴任を望む社員が減る可能性がありますし、逆に高すぎると国内勤務社員との不公平感が高まるおそれがあります。

手当の内容は、企業の中長期海外ビジネス戦略を考慮して、「経営」目線から検討・決定する必要があります。



Question.

海外赴任者は、どのように社会保険に加入するのでしょうか?

Answer.
1) 日本国内での給与支給額を残し、健康保険・厚生年金保険等を継続するのが一般的です。

2)労災保険は「喪失」となりますが、特別加入の制度があります。

3)日本と海外での社会保険料二重払いを防ぐための、「社会保障協定」が存在するケースがあります。

 

1. 日本の社会保険の制度体系と海外赴任対応(概要)

日本の社会保険制度は以下のような体系(概要)となっています。

それぞれ、海外赴任に対する基本的な対応方針は、以下のとおりです(下表は対応の基本方針であり、例外等は除きます)。


日本の健康保険や厚生年金保険を喪失しないためには、日本での一定の給与を残すことが望まれます。

また、労災保険については、海外赴任中は原則として適用対象外となりますが「特別加入」の制度があり、一定の条件のもとで海外赴任者も加入することが可能です。

 

 

2. 「社会保障協定」とは

先述のとおり、海外赴任者については、赴任中でも日本の社会保険制度に継続して加入するように給与設計を行うことが多くあります。

一方、赴任先の海外でも独自の社会保険制度があり、加入を求められるケースがあります。
この場合、日本と海外の両方の社会保険に対して、二重に保険料を支払うことになってしまいます。

また、海外の年金制度に加入したとしても、加入期間が短期になるため受給資格を得ることができず、海外で負担した保険料は多くの場合「かけすて」になってしまいます。

これらの問題を解決するために、以下のような「社会保障協定」が、国家間で締結されている場合があります。




 

 

 

 

ただし、対象は欧米企業中心で、中国・東南アジアについては中国のみが交渉中となっているにとどまります。


3. 実務対応上の留意点

日本の社会保障制度が継続できるかどうかは、赴任者自身および家族にとって非常に重要な課題です。
事前対応と赴任者への説明をしっかりと行うことが求められます。

また、赴任に伴い、一部の適用除外や特別加入など、日本で申請すべき内容が多々発生しますので、手続き漏れがないように留意が必要となります。


注:執筆内容はポイントが分かりやすいように原則的制度を中心にご説明したものであり、例外規定などを網羅するものではありません。

※本記事は、弊社の提携パートナーである、みらいコンサルティンググループによるものです


【みらいコンサルティンググループ会社紹介】
1987年創業。従業員数約200名(海外拠点を含む)。
日本国内に9拠点、海外(中国・ASEAN)5拠点に加え、
ASEANにジャパンデスク9拠点を有する。
公認会計士・税理士・社労士・ビジネスコンサルタントが一体となる
「チームコンサルティング」により、中小中堅企業のビジネス展開を
経営者目線から総合的にサポート。
株式上場支援、働き方改革の推進、組織人材開発、
企業を強くする事業承継やM&A、国際ビジネスサポート等で
多数の支援実績がある。

国際ビジネス支援サービス紹介(みらいコンサルティンググループWEBサイト)

第○条 (定義《例》)

この規定において、海外赴任社員とは、1年以上の期間にわたり、海外の現地法人・支店・営業所・駐在員事務所等に勤務する者または出向することを命ぜられた者をいう。