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海外進出コラムvol.6 オーストラリア住宅市場の現状

これまでは、新興国への進出事例をお伝えしてきましたが、今回は、先進国への進出事例としてオーストラリアの住宅市場を取り上げます。


オーストラリアは、国土が日本の約20倍、人口2400万人、1人当たりGDP2万8247ドル(2015年)の先進国です。大きな国土に比べ人口が少ないという特徴から、人口増加施策として1950年代から移民を積極的に受け入れており、現在では全人口の半数以上が移民といわれています。
その結果、過去30年間で、人口が1568万人から2360万人へと、約1.5倍に増えており、人口増加の傾向は今後も継続する見込みです。
このような背景の下、特に都市部では人口流入による住宅供給不足から不動産価格が上昇しており、現在は「不動産バブル」といわれるほど住宅市場が活発です。

 

 

1.オーストラリアの 住宅市場の特徴

 

日本市場との最も大きな違いは、「新築住宅購入についての考え方」です。
日本では、家庭を持った後に新築住宅を買い、30年以上住み続けることが一般的ですが、オーストラリアでは、下記のような理由から『新築住宅を買うこと』が一般的ではありません。


① 中古住宅の価格が下がらない
都市部では、築50年~100年の住宅が1億円することもある。

② 都市部に空き地がない
新築用に土地を探すと、車で1時間以上の場所になることもある。

③ 新築の施工期間が長い
契約から引き渡しまで1年以上かかるのが普通であるため、ビルダーの倒産リスクもある。④ 5年周期で住み替える 所得・家族構成の変化に合わせて、中古購入→リノベーションでバリューアップ→売却→中古購入を繰り返す。


ただし、人口増加を背景に、都市部の空室率が1.5%で慢性的な物件不足という状況であり、中古物件の流通だけでは十分な物件数が確保できなくなっています。
また、中古住宅がある都市部の不動産価格の上昇から購入できる層が限られていることから、郊外にある大型分譲地の売れ行きも好調です。

 

 

 

2. 高い年収が 市場拡大の原動力に

図1は、オーストラリア主要都市の流通価格推移のグラフです。
過去10年間の全国平均の年間価格上昇率が5%、シドニーでは2012年以降の年間価格上昇率が20%と流通価格が大きく上昇しています。
流通価格上昇の背景にあるのは、人口増加による需要増ですが、購買層の年収水準の高さも流通価格上昇の原動力になっています。
オーストラリアはOECDが発表している世界各国の2015年平均年収のランキングで6位(日本は19位)であり、都市部に住んでいる30代以上の会社員であれば年収1000万円超は一般的です。
オーストラリアの所得税が高いこともあり、高所得者が実需に加えて節税及び売却時のキャピタルゲインを目的とした投資物件を複数保有していることが、流通価格上昇の一因となっています。
オーストラリアの住宅市場は、これから国の発展が期待されているタイ・ベトナムとは住宅市場拡大の背景が全く違います。
そのため、日本企業のオーストラリアへの展開方法もASEAN各国とは異なります。
オーストラリアは、資金力があり、不動産バブル崩壊のリスクを取れるビルダーにとっては大きな魅力があるでしょう。


 

 






















※「新建ハウジング」弊社コンサルタント寄稿記事より転載


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