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海外展望vol.4 インドネシア

海外展望vol.4 インドネシア

~東南アジアNO1の潜在需要を秘めた国 650万世帯のインパクト~

 

インドネシアは、ASEAN諸国の中でも急速な経済成長を遂げている国の一つである。

 

過去、1998年のアジア通貨危機、また2004年のスマトラ島沖地震による震災被害など

インドネシアでは「失われた10年」と言われる厳しい状況が続いていたが、

リーマンショックを切り抜け、ユドヨノ政権時代に入り

今日まで安定的な経済成長と遂げている。

 

特に首都ジャカルタ特別州の名目GDPは8,780億ドル(2012年)で世界16位となっており、近隣諸国の水準の2~3倍を誇る。

 

また、日本における一人あたりGDPの時系列推移に照らし合わせてみると、

日本の高度経済成長期とされる1960年代後半~1970年代に概ね相当する。

現状では、一人あたりのGDPではマレーシアがトップであるが、

インドネシアはタイに次ぐ3番目のポジションに位置しており、

2030年には英国を抜いて世界7位の経済大国になるとの見解がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インドネシアの住宅事情 ~市場成長を支える“潤沢な人口ボリューム”~

 

インドネシアは、2012年に約2億4,500万人の人口に達し、中国、インド、

米国に次ぐ世界第4位の人口ボリュームとなっている。

 

今後も人口は増加していくものとみられており、

2030年の推計人口は約2億8,000万人に達する見込みだ。

 

また、インドネシア国内人口約2億4,500万人の内、

ジャカルタ特別州の人口は約999万人(2012年・中央統計局)とされており、

実に、インドネシア全人口の約40%が同地域に集中している。

さらに、ジャカルタ特別州の世帯数は、「2000年= 約220万世帯」「2010年= 約250万世帯」

「2011年= 約250万世帯」「2012年= 約260万世帯」「2013年= 約260万世帯」と推移している。

このように、「生産年齢人口の潤沢なボリューム」を背景に、急速な経済成長を遂げているという点がインドネシアの最大の魅力といえよう。

 

 

次に市場性だが、

インドネシア全体における持家率は80%程度の水準と非常に高い数値ではあるが、

ジャカルタ特別州に限ってみると、

2011年は46.6%と、東京23区内の持家率とほぼ同等の水準だ。

 

住宅の潜在需要という点ではインドネシア全体の借家世帯=約650万世帯、

ジャカルタ特別州の借家世帯=約100万世帯がおおよそのターゲットゾーンと見込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、現地の住宅事情であるが、貧富の差(所得格差)によって傾向が分かれる。

富裕層向け(主に華僑系が中心)であれば、

都心部のマンションを中心に5000万円超の物件も珍しくはない。

中には1億2000万円といった億超えの物件もあるといった状況で、

日本の高級物件市場と変わらない。

投資物件としても、「3年間で倍の価格で売れる」といった投資判断が為されているほど活況に沸いている。

 

 

但し、このようなバブルの状況は既にピークを迎えつつあり、

今後は市場の動きを捉えた慎重な判断が求められるだろう。

 

一方、経済力のある中産階級以上の層、ターゲットイメージで言うと

共働き夫婦30才前後、世帯月収7万~8万円の層では、

(※一般的なインドネシア人の平均月収は2万円)

1階建ての200~300万円相当の戸建を購入するケースが多い。

 

日系企業の進出可能性 ~マーケットと押さえておくべき留意点~

 

インドネシアは「親日国家」として知られる。

 

国内ではジャパンブランドを目にする事ができる。

中でも自動車業界、特に二輪車では実に99.9%が日系企業のブランドである。

 

また近年では、サービス産業の進出が増えており、

大手小売りメーカーがショッピングモールの第一拠点の開設を控えているといった状況だ。

 

このような市場環境をチャンスとみて、日本からも近年たくさんの住宅不動産会社が

ビジネス展開の可能性を模索している。

 

インドネシアに在住する日本人(現地駐在員等)に人気なのはコンドミニアムであり、

特に日系のデベロッパーが建築主の場合で2500~3000ドル/月が相場価格である。

 

また、現地の商慣習で特徴的なのは、

特にコンドミニアムの場合、販売戸数と物件の価格が連動している点であろう。

 

インドネシアのデベロッパーは、高金利の銀行から借入をするのではなく、

毎月の購入者からの支払い金額を工事費にあてる事が一般的だ。

 

したがって、売れ行きの良い物件は、着工時より、

工事が進んだ上棟時の方が価格が上がっていくという現象が起きる。

 

売れ行きの悪いコンドミニアムは、「入金が滞り、工事がストップする」といった

リスクが予想されるからである。

 

そこで、投資家は、今後、コンドミニアムが高価で販売されることを期待して、

主に着工のタイミングで現金で購入する。

金利が無い分、上棟時に転売をした場合利回りが良くなるのだ。

 

一方、一般のエンドユーザー(実際に住む施主)は

上棟ができたタイミングで購入し始めるのが一般的である。

 

実は一般のエンドユーザーで「上棟前にコンドミニアムを購入するケース」は

極めて少ない。

 

コンドミニアム建設には、平均で約3年の工期を要するが、

着工段階においてローンで購入すれば余分な金利を払う事になる。

 

さらに先述の通り、売れ行きが悪いと工事がストップするリスクもあるため、

金利支払いのリスクを極力避けるという選択肢が一般的なのだ。

 

したがって、売買の場合、「上棟を待って、“着工時に投資家が購入した家”を

転売によって購入する」というケースが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、現地でビジネスを行う上で踏まえておくべき事がある。

 

1点目は、「法規制」である。

 

原則、法規制によって外国人、外国法人が現地の土地を所有することは出来ないと

されている。

 

仮に、日本国内法人として建物や土地を取得するには、

「使用権のある土地に建てられた建物を取得(建物だけを買う)」

といった形態を取る必要があるのだ。

但し、これは現地法人を作る事でカバーできる。

現地法人設立の場合は、不動産の取得が可能になり、

その場合は土地を買って分譲する事が可能となる。

 

2点目は、「交通インフラ」である。

 

インドネシアは車社会であり、

車以外のインフラ(鉄道・地下鉄等)の整備はまだまだこれからといった状況だ。

日本では想像しがたいが、「オフィスの立地」がコスト面に大きく左右する。

「移動に掛かる時間コスト」「物流コスト」を踏まえた上で、どこにオフィスを設けるかも

現地進出において外す事のできない要件なのだ。

 

インドネシアは、インフラ・法規制など未整備な点もあるが、

「これからのASEANを牽引していく新興国」として、

底知れぬエネルギーを秘めた国であることは間違いない。